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インフォマートは20年11月高値を目指す、21年12月期は上振れの可能性
- 2021/9/7 08:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。新型コロナ影響で主要取引先の飲食業界が厳しい状況だが、DXの流れも追い風として利用企業数は増加基調である。21年12月期は先行投資で減益予想としているが、上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は戻り高値圏だ。モミ合いから上放れの形となって上げ足を速める可能性もありそうだ。20年11月の高値を目指す展開を期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームとして、受発注(従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム)、規格書(食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール)、請求書(請求書発行・受取業務を電子化したシステム)、商談(全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト)、契約書(契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステム)を運営している。
20年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が76%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が24%、その他が1%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が183%、BtoB-PF ES事業が▲83%、その他が▲0%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。21年6月にはBtoB請求書が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子取引ソフト法的要件認証制度第1号認証を取得した。21年7月には全業界向け受発注のBtoB TRADEをリリースした。
なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資している。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調であり、継続利用率も高い。21年3月末時点の全体の利用企業数は56万6446社、事業所数は110万1158事業所となった。20年1月~12月の流通金額は12兆7295億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
20年12月には、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が、サービス開始(15年1月)から5年で50万社を突破した。23年から導入される適格請求書保存方式(インボイス制度)も背景として電子請求書のニーズが拡大基調である。
■営業利益率30%以上目標
中期業績目標には売上高100億円突破、営業利益30億円超、営業利益率30%以上を掲げている。BtoBプラットフォームの徹底的拡充・価値増大に取り組む。
さらに将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組む方針だ。21年4月にはDX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始した。
■アライアンスを推進
20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始すると発表した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。
20年9月にはGINKANと協業、20年10月には全国の地方銀行21行とのビジネスマッチング契約を拡大、20年12月にはSCSK<9719>と販売代理店契約を締結、ブラザー販売とシステム連携した。21年1月にはダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結、21年2月には食品卸企業向け受発注・販促サービスを提供するタノムと資本業務提携、自治体向けクラウドシステムを手掛けるGcomホールディングスと協業した。
21年3月には、三井物産と共同出資の特別目的会社I&Mを設立して中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、NTT東日本とセールスパートナー契約を締結、三井物産グループの東神倉庫と業務提携した。
21年8月には一般社団法人日本フードサービス協会と連携し、国産ジビエの外食産業向けの販路開拓・拡大を支援すると発表した。BtoBプラットフォーム商談でオンライン商談・展示会の積極活用の場を提供する。
■21年12月期先行投資で減益予想だが上振れの可能性
21年12月期の連結業績予想は、売上高が20年12月期比8.7%増の95億40百万円、営業利益が52.4%減の7億円、経常利益が57.1%減の6億25百万円、親会社株主帰属当期純利益が58.1%減の4億25百万円としている。配当予想は2円77銭減配の94銭(第2四半期末47銭、期末47銭)としている。
売上面は、BtoB-PF ES事業(計画26.7%増収)がDXの流れも背景として大幅伸長見込みだが、BtoB-PF FOOD事業(計画3.2%増収)は新型コロナ影響が当面続くと想定している。利益面は、22年12月期以降の売上成長拡大と利益率再上昇に向けた先行投資で、データセンター費や人件費が増加するため減益予想としている。
第2四半期累計は売上高が前年同期比11.6%増の46億93百万円、営業利益が5.7%減の7億06百万円、経常利益が2.6%減の7億28百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.2%減の4億61百万円だった。
サーバー体制増強に伴うデータセンター費の増加、事業拡大に向けた営業および営業サポートの人員補強に伴う人件費の増加など、先行投資の影響で減益だった。ただし売上高が計画を上回り、コストの期ズレも寄与して各利益の減益幅は従来予想に対して大幅に縮小した。
BtoB-PF FOOD事業は3.3%増収だった。新型コロナ影響で主要取引先の飲食業界が厳しい状況だが、買い手企業の新規契約数の増加に加えて、食材流通金額が前年を上回ったため売り手企業(従量制)からのシステム使用料も増加した。BtoB-PF ES事業は40.0増収と大幅伸長した。業務効率化やテレワーク進展などで新規有料契約企業数が増加した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高22億99百万円で営業利益3億83百万円、第2四半期は売上高23億94百万円で営業利益3億23百万円だった。
通期予想を据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.2%と順調であり、各利益は通期予想を超過達成している。期ズレとなったデータセンター費、人件費、販促費などが下期に発生する見込みとしているが、通期予想も上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株価は20年11月高値を目指す
株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。モミ合いから上放れの形となって上げ足を速める可能性もありそうだ。20年11月の高値を目指す展開を期待したい。9月6日の終値は1025円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円86銭で算出)は約551倍、今期予想配当利回り(会社予想の94銭で算出)は約0.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円41銭で算出)は約21倍、時価総額は約2659億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)