【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは中期成長力を評価して出直り、インバウンド関連や地方創生関連のテーマ性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ワイヤレスゲート<9419>(東マ)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを基盤として事業展開している。株価は4月の年初来高値3765円から利益確定売りで反落したが、下値切り上げの展開に変化はなく中期成長力を評価して出直り展開だろう。インバウンド関連や地方創生関連のテーマ性も注目される。なお8月4日に第2四半期累計(1月~6月)の業績発表を予定している。

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

 中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

 新規事業では14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体(災害時通信インフラ)、観光地(外国人旅行客誘致)、商店街(集客力向上)などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月にLTE領域ソリューション拡充の一環として、訪問看護サービスのNフィールド<6077>と業務提携し、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」を開始した。14年11月にWeb会議システムのブイキューブ<3681>と業務提携した。

 14年11月に世界200カ国以上に1300万ヶ所以上のWi-Fiスポットを保有するスペインのFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年3月に日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルーターを活用したWi-Fiエリアを構築する。

 15年3月には移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社と資本業務提携、およびWi-Fi環境の構築・保守のバディネット社と業務提携した。観光地や商業施設などに構築するWi-Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility-Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi-Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。

 SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月には音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。

 15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコ<2311>と共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールーターを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。

 また15年5月にはベネフィット・ワン<2412>と共同で、訪日旅行者向けに「飲食店の割引サービス」と「Wi-Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始した。訪日旅行客の日本での利便性を高めるサービスで、今後ベネフィット・ワンが展開するアジア各国でも同サービスを展開する。

 6月24日には、安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向けに「Wi-Fiインフラ」の提供を7月から開始すると発表した。両校の自動車教習生の利便性を高めるサービスを提供する。

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)20億45百万円、第2四半期(4月~6月)21億59百万円、第3四半期(7月~9月)23億69百万円、第4四半期(10月~12月)25億32百万円、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円である。

 第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収増益基調だ。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期比37.0%増の124億72百万円、営業利益が同69.9%増の13億50百万円、経常利益が同70.8%増の13億48百万円、そして純利益が同71.6%増の8億56百万円としている。配当予想については同1円増配の年間26円(期末一括)で、予想配当性向は30.8%となる。

 ワイヤレス・ブロードバンド事業では、主力の「Wi-Fi+WiMAX」が好調に推移し、SIMカードの収益寄与が本格化する。ワイヤレス・プラットフォーム事業では、電話リモートサービスが新規会員獲得で好調に推移し、新規事業のWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)も順次収益化が期待される。

 第1四半期(1月~3月)は売上高が前年同期比28.0%増の26億18百万円、営業利益が同0.2%増の2億08百万円、経常利益が同0.5%増の2億08百万円、純利益が同3.6%増の1億31百万円だった。

 販売手数料、販売促進費、採用費、株主数増加に伴う諸経費などが増加したため各利益はほぼ横ばいだったが、主力のワイヤレス・ブロードバンド事業の会員数が順調に増加して大幅増収だった。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が21.0%、営業利益が15.4%、経常利益が15.4%、純利益が15.3%である。低水準の形だが、会員数(14年12月期末50万人)が順調に増加して増収基調だ。またストック型の収益構造であり、前期のSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響も一巡して大幅増益が期待される。

 成長戦略として、主力の個人向けモバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」「Wi-Fi+LTE SIMカード」を安定的に拡大させるとともに、法人向けWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)の収益化を目指している。中期的に収益は拡大基調だろう。

 なお2月に東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを発表したが、企業統治と執行を強化することによって成長スピードを再び加速し、市場変更準備は今後も継続するとしている。

 株価の動きを見ると、4月の年初来高値3765円から利益確定売りで反落したが、3200円近辺で下げ渋り感を強めている。3000円割れ水準で下値固めが完了しており、下値切り上げの展開に変化はないだろう。

 6月24日の終値3250円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円53銭で算出)は38倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS224円48銭で算出)は14倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を割り込んだが、週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が下値を支える形だ。下値切り上げの展開に変化はなく、中期成長力を評価して出直り展開だろう。インバウンド関連や地方創生関連のテーマ性も注目される。

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