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WOW WORLDは反発の動き、22年3月期大幅増収増益予想で収益拡大基調
- 2021/9/8 08:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
WOW WORLD<2352、旧エイジアが21年7月1日付で商号変更>(東1)はメール配信システムの大手である。22年3月期はクラウドサービスの成長やM&A効果で大幅増収増益予想としている。収益拡大基調を期待したい。株価は第1四半期決算発表を機に急落の形となったが、目先的な売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力
旧エイジアが21年7月1日付で商号をWOW WORLD(ワオワールド)に変更した。さらにM&Aを加速させるため22年7月には持株会社(仮称:WOW WORLD GROUP)へ移行予定である。
自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズのアプリケーション事業を主力として企業のCRM運用支援を行い、コンサルティング、システム受託開発、EC事業(子会社ままちゅのベビー服ECサイト「べびちゅ」運営)も展開している。eメールを活用したマーケティングソリューションを強みとしている。20年10月にはCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)をクラウドサービスで提供するコネクティをグループ化した。
メール配信システム「WEBCAS e-mail」は、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。WEBCASシリーズはメール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心とするe-CRMアプリケーションシリーズで、21年3月末時点で導入企業数が7000社を突破した。国内メール配信パッケージ市場シェア1位(ITR発行の市場調査レポート、2019年度ベンダー別売上金額)である。
21年3月期のセグメント別売上高構成比はアプリケーション事業71%、コンサルティング事業21%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業7%、営業利益構成比(調整前)はアプリケーション事業96%、コンサルティング事業6%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業▲2%だった。
22年3月期からセグメント区分をエンタープライズ・ソフトウェア事業(従来のアプリケーション事業)、デジタル・マーケティング運用支援事業(従来のコンサルティング事業)、その他(従来のオーダーメイド開発事業)、EC事業に変更した。また収益認識基準を変更して特定の大型案件の影響を薄め、売上高の平準化を進める。
収益面では下期の構成比が高い特性があり、クラウドサービスの拡大によってストック型構造の特性を強めている。なお経営資源を競争力の高いアプリケーション事業に経営資源を集中する方針のもと、オーダーメイド開発事業は新規受注を積極的に展開せず、既存の利益率の高い案件のみを継続している。EC事業はアプリケーション事業の製品開発を強化するため、ECのマーケティングノウハウを吸収することを目的として、18年9月にベビー服ECサイトを事業買収した。
■クラウドサービスやM&Aで中期成長目指す
中期経営計画の目標値(21年5月11日に上方修正)は、最終年度23年3月期売上高38億円、EBITDA11億円としている。なお23年3月期からIFRS(国際会計基準)適用予定である。
コネクティの連結に加えて、デジタル化需要の拡大でクラウドサービスが想定以上に伸長しているため、初年度の21年3月期が計画に対して上振れた。このため2年度目以降の計画を上方修正した。
顧客のマーケティング活動に対する横断的なソリューションの提供を目指し、M&Aを積極活用して、クラウドサービスを中心とする既存事業の飛躍的成長、グループシナジーの創出、財務戦略の最適化などを推進する。
なお19年11月には、インタートレード<3747>の子会社で暗号資産関連事業を展開するデジタルアセットマーケッツに出資している。また20年5月には、日本成長投資アライアンス(J―GJA)と業務提携し、J-GIA1号投資事業有限責任組合に対して第7回新株予約権を発行している。
21年7月にはベビー服ECサイト「べびちゅ」において、世界125ヶ国に向けて多言語対応の越境ECを開始した。
■22年3月期大幅増収増益・連続増配予想で収益拡大基調
22年3月期連結業績予想は、売上高が21年3月期比33.7%増の31億50百万円、EBITDAが50.3%増の8億50百万円、営業利益が45.8%増の6億円、経常利益が41.1%増の6億円、親会社株主帰属当期純利益が52.3%増の3億39百万円としている。配当予想は5円増配の30円(期末一括)としている。連続増配予想である。
重点施策として、既存顧客のロイヤリティ向上に特化するカスタマーサクセスチームを営業組織内に新設し、SaaSスタンダード解約率低下やSaaSプレミアム顧客単価向上などを推進する。
第1四半期は、売上高が前年同期比50.3%増の6億77百万円で、EBITDAが46.6%増の1億47百万円、営業利益が16.4%増の1億円、経常利益が14.6%増の1億01百万円、親会社株主帰属四半期純利益が12.3%減の55百万円だった。
四半期純利益は法人税等の増加で減益だったが、コネクティの連結(21年3月期第3四半期から連結)も寄与して大幅増収増益だった。コネクティの連結で人件費、仕入・外注加工費、のれん償却費などが増加し、IFRS準備対応コストなども発生したたが、クラウドサービスが大幅伸長して牽引した。
エンタープライズ・ソフトウェア事業は、売上高が27.8%増の4億42百万円で、売上総利益率が1.4ポイント低下して66.7%だった。サブスクリプション型クラウドサービスの売上高が29.9%増の3億76百万円(コネクティ連結影響除くと11.2%増の3億22百万円)と大幅伸長した。CRMクラウドサービスの継続契約数はSaaSプレミアム版が21年3月期末比5社増加の237社、スタンダード版が42社増加の1168社、CMSクラウドサービスの継続契約数は3社増加の33社となった。
デジタル・マーケティング運用支援事業は売上高が3.8倍の2億02百万円で、売上総利益率が1.6ポイント上昇して25.3%だった。コネクティの連結が寄与した。EC事業は売上高が35.2%減の32百万円で、売上総利益率が0.1ポイント低下して42.2%だった。コロナ禍の影響でターゲットとしている「お出掛け需要」が低迷した。
通期予想は据え置いた。カスタマーサクセスの本格稼働効果によってCRMクラウドサービスの成長(25%増収の計画)を見込み、コネクティの通期連結(21年3月期は6ヶ月分)によるCMSの伸長も寄与して大幅増収増益予想としている。EBITDAマージン率は3.0ポイント上昇の27.0%の計画である。
第1四半期の進捗率は売上高が21.5%、EBITDAが17.3%、営業利益が16.7%だが、下期の構成比が高い収益特性があり、クラウドサービスの拡大によってストック型構造の特性を強めていることも勘案すれば順調と言えるだろう。収益拡大基調を期待したい。
■株主優待制度は3月末と9月末の2単元以上保有株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日および9月30日時点の2単元(200株)以上保有株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて株主優待ポイントを進呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は反発の動き
7月30日に自己株式処分を発表した。自己株式7万1100株を9月2日付で株式付与ESOP信託に対して処分し、残りの29万2716株を9月17日付で消却する。また8月26日には自己株式取得を発表した。上限6万株・1億円で取得期間は21年9月3日~21年9月30日である。取得する自己株式は全て消却する予定で、消却時期は決まり次第公表するとしている。
株価は第1四半期決算発表を機に急落の形となったが、目先的な売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。9月7日の終値は1769円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS85円34銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS438円87銭で算出)は約4.0倍、時価総額は約78億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)