【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングサービスは日柄調整一巡感、16年3月期の収益改善基調を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)は製造請負・派遣および製造受託の大手である。株価は5月高値後の日柄調整一巡感を強めている。16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。

 製造請負・派遣のIS(インラインソリューション)事業、修理・検査受託のCS(カスタマーサービス)事業、技術者派遣のGE(グローバルエンジニアリング)事業、子会社の志摩グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)事業を展開している。

 そして15年3月期から、IS、CS、GEを総称してHS(ヒューマンソリューション)事業とし、セグメント区分をHS事業、EMS事業、事業譲り受けたPS事業としている。なおCS事業における電動バイクおよびデザイン・ラッピング業務については、採算ベースに至らないため業務を閉鎖することとした。

 基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。

 13年10月に子会社TKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県)を取得した。そして14年10月にパナソニック<6752>から車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社のパワーサプライテクノロジー(PST)が新たに操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社および国内90社である。

 日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する方針だ。なお14年9月には子会社TKRが検査工程の自動化・省力化装置のカスタマイズ受託生産を本格的に開始している。

 14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。

 中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、14年5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。

 アジアへの展開では14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。14年10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携してベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。14年12月には子会社nmsタイランドがカンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。

 15年3月には兼松<8020>と資本・業務提携し、兼松は当社の第3位株主となった。兼松の部材調達力および販売力、当社の技術・製造ノウハウを相互活用することで、EMS事業拡大、戦略的部材調達、海外事業展開などで大きなシナジー効果が見込まれるとしている。

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円、第4四半期(1月~3月)146億43百万円だった。営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字、第4四半期3億67百万円だった。

 第4四半期はPS事業でパナソニックから譲り受けた一般電源事業の子会社PSTの新規連結が寄与した。また15年3月期の配当性向は8.1%で、ROEは14年3月期比3.3ポイント低下して12.2%、自己資本比率は同6.6ポイント低下して17.1%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月15日公表)は売上高が前期比36.8%増の673億80百万円、営業利益が同2.2倍の11億円、経常利益が同26.8%増の9億30百万円、純利益が同8.2%減の5億25百万円としている。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は9.4%となる。

 パナソニックから譲り受けたPS事業の通期連結で大幅増収、大幅営業増益見込みだ。また国内HS事業では規模の拡大よりも事業の質を追求し、人材定着率向上と利益率改善を図る。海外HS事業ではアセアン諸国における製造派遣・製造請負事業の拡大を推進する。EMS事業ではPS事業との連携、兼松との協業などで売上拡大と利益率改善を目指す。

 セグメント別の計画(連結調整前)は、HS事業の売上高が16.7%増の155億30百万円、営業利益が2億35百万円(前期は17百万円の赤字)、EMS事業の売上高が8.4%増の350億70百万円、営業利益が46.6%増の3億85百万円、そしてPS事業の売上高が171億40百万円(前期は35億73百万円)、営業利益が4億80百万円(前期は2億37百万円)としている。

 中期目標数値として20年3月期の売上高1000億円、売上高営業利益率3.5%を掲げている。利益還元については中期目標として総還元性向20%を目指している。PS事業も寄与して中期的に収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、5月13日高値829円から利益確定売りで反落して日柄調整局面だが、徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。

 6月25日の終値670円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS53円15銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS537円16銭で算出)は1.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。再動意のタイミングのようだ。16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。

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