ミロク情報サービスは戻り試す、22年3月期営業・経常減益予想だが上振れの可能性

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売・サービスを展開し、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指している。22年3月期は営業・経常減益予想としているが保守的だろう。上振れの可能性がありそうだ。株価は8月の安値圏で底打ちして出直りの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。

 クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革を推進するとともに、企業の売上拡大・企業価値向上を支援するため、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月には中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」の販売を開始した。AI機能を拡充し、業務のDX推進をサポートする。

 21年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高が57%(システム導入契約時のハードウェア11%、ソフトウェア33%、システム導入支援サービスなどのユースウェア13%)、サービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料7%、企業向けソフトウェア運用支援サービス16%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他が8%だった。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、21年3月期の新規企業向け売上高比率は5.2ポイント上昇して34.0%となった。

 またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期の売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。既存ERP事業ではデジタルマーケティングを取り込み、サブスクモデル比率を高めて安定収益源確保・継続的成長を実現する。新規事業ではデジタル・非対面時代に誰もが簡単にDXを実現できる統合型DXプラットフォームの国内N.1を目指す。

 基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

■M&A・アライアンスを積極活用

 20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化した。

 21年1月には信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画した。またゼロ知識照明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。次世代ビジネス・プラットフォームの構築を目指す。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月には、税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携した。

 21年7月には、持分法適用関連会社(20年10月に資本業務提携)で送金アプリ「pring(プリン)」を展開するpring社の全株式を譲渡(7月下旬~8月下旬予定)すると発表した。米国Google社からの全株式取得の申し込みに応じた。協業関係は維持する。

 9月2日にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社との資本業務提携を発表した。AIを軸としたDX分野の新製品・サービスの開発を目指す。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

■22年3月期営業・経常減益予想だが上振れの可能性

 22年3月期の連結業績予想(収益認識に関する企業会計基準第29号を適用、7月13日にpring社株式売却に伴う特別利益計上で親会社株主帰属当期純利益を14億30百万円上方修正)は、売上高が21年3月期比9.8%増の374億円、営業利益が11.0%減の40億30百万円、経常利益が11.3%減の40億円、親会社株主帰属当期純利益が43.5%増の38億10百万円としている。配当予想は21年3月期と同額の38円(期末一括)である。

 第1四半期は、売上高が前年同期比10.3%増の87億47百万円、営業利益が5.3%減の9億39百万円、経常利益が6.2%減の9億31百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.3%減の5億76百万円だった。収益認識に関する企業会計基準第29号適用の影響額は売上高が76百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益が1百万円減少だった。

 売上面では、Windows7サポート終了に伴うPC入れ替え特需の反動減の影響が一巡し、新規顧客開拓などで増収と堅調だった。利益面は先行投資の影響で販管費が増加したため減益だった。

 品目別売上高は、システム導入契約売上高が7.7%増の49億23百万円(ハードウェアが6.1%増の8億43百万円、ソフトウェアが4.4%増の28億35百万円、ユースウェアが17.5%増の12億43百万円)で、サービス収入が5.7%増の31億20百万円(会計事務所向けTVS収入が2.0%増の6億24百万円、ソフト使用料収入が10.0%増の5億92百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が7.2%増の13億76百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が4.4%増の3億75百万円、サプライ・オフィス用品が4.5%減の1億50百万円)だった。

 通期予想は、持分法適用関連会社のpring社の保有全株式を譲渡して特別利益が発生するため、第2四半期累計および通期の純利益予想を14億30百万円上方修正したが、営業利益と経常利益は新型コロナ影響の継続、ERP製品のサブスクモデルへの段階的移行の影響、採用増など先行投資による販管費の増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。

 第1四半期の進捗率は売上高23.4%、営業利益23.3%である。ストック型収益構造などを勘案すれば順調であり、通期予想は上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は戻り試す

 8月25日には「JPX日経中小型株指数」2021年度構成銘柄に継続選定されたとリリースしている。また8月26日に自己株式取得を発表した。上限70万株・10億円で取得期間は21年8月27日~22年1月31日としている。

 株価は8月の安値圏で底打ちして出直りの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。9月17日の終値は1725円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS125円17銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS655円66銭で算出)は約2.6倍、時価総額は約600億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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