朝日ラバーは下値固め完了、22年3月期は再上振れの可能性

 朝日ラバー<5162>(JQ)は、自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の拡大も推進している。22年3月期は需要回復して大幅増収増益予想(8月6日に上方修正)としている。さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。なお22年4月予定の新市場区分への移行について、9月14日にスタンダード市場の選択を決議し、東京証券取引所に対して選択申請を行った。株価は反発力の鈍い展開だが一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。

 21年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業82%、医療・衛生用ゴム事業18%、営業利益構成比(調整前)は工業用ゴム事業52%、医療・衛生用ゴム事業48%だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

 2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。

 中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

 そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円としている。

 光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。

 なお21年3月期の中期事業分野別の売上高は、光学事業が15.7%減の28億90百万円、医療・ライフサイエンス事業が1.4%減の12億06百万円、機能事業が15.6%減の17億59百万円、通信事業が16.0%減の6億31百万円だった。主要製品の売上高はASA COLOR LEDが15.8%減の27億12百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が4.3%減の11億38百万円、卓球ラケット用ラバーが27.9%減の3億09百万円、RFID用ゴム製品が18.4%減の4億76百万円だった。新型コロナウイルス影響による需要減少で低調だった。

 技術開発では、RFIDタグ用ゴム製品で培った技術を活用した簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LEDなどの開発を推進している。

 20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。

 20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術を開発したと発表している。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。

 さらに20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。

■22年3月期大幅増収増益予想、さらに再上振れの可能性

 22年3月期の連結業績予想(8月6日に上方修正)は、売上高が21年3月期比11.8%増の72億52百万円、営業利益が3億21百万円の黒字(21年3月期は92百万円の赤字)、経常利益が3億11百万円の黒字(同18百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が2.1倍の2億36百万円としている。配当予想は10円増配の20円(期末一括)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比25.7%増の17億97百万円、営業利益が78百万円の黒字(前年同期は27百万円の赤字)、経常利益が82百万円の黒字(同9百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が61百万円の黒字(同20百万円の赤字)だった。

 ASA COLOR LEDなど自動車向けゴム製品の需要が回復して大幅増収となり、各利益は黒字転換した。工業用ゴム事業は売上高が36.8%増の15億11百万円で営業利益(調整前)が1億34百万円(同4百万円)だった。医療・衛生用ゴム事業は売上高が11.9%減の2億86百万円で営業利益が47.6%減の24百万円だった。新型コロナ影響でプレフィルドシリンジガスケット製品の在庫調整の動きが継続した。

 自動車向けゴム製品の需要が回復し、卓球ラケット用ラバーの受注も増加しているため、第2四半期累計および通期の連結業績予想を上方修正した。第2四半期累計の予想は、売上高が前年同期比25.6%増の35億78百万円、営業利益が1億27百万円の黒字(前年同期は1億79百万円の赤字)、経常利益が1億23百万円の黒字(同1億28百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が90百万円(同7百万円の黒字)としている。

 修正後の通期セグメント別売上高計画は、工業用ゴム事業が14.0%増の60億84百万円、医療・衛生用ゴム事業が1.4%増の11億68百万円、中期事業分野別売上高の計画は、光学事業が11.1%増の32億12百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.0%減の11億82百万円、機能事業が29.1%増の22億71百万円、通信事業が7.1%減の5億86百万円としている。

 コスト面では原材料価格の上昇が見込まれるが、売上増の加および生産数量の増加による生産効率向上などで吸収する見込みだ。なお不透明感を考慮して下期をやや保守的に想定しているため、さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は下値固め完了

 22年4月予定の新市場区分への移行について、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果においてスタンダード市場への適合を確認しており、9月14日開催の取締役会においてスタンダード市場選択を決議し、東京証券取引所に対して選択申請を行った。

 株価は反発力の鈍い展開だが一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。9月22日の終値は610円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円02銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS976円73銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約28億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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