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神鋼商事は上値試す、22年3月期は再上振れの可能性
- 2021/9/28 08:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼や非鉄金属関連などを扱う商社である。KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社としてグローバルビジネスの深化を追求している。22年3月期(7月30日に上方修正)は大幅増収増益・増配予想としている。需要が回復基調であり、価格も高値圏で推移する見込みだ。コロナ禍からの経済再開本格化で通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は順調に水準を切り上げて年初来高値更新の展開だ。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社
神戸製鋼所<5406>系で、鉄鋼製品(鋼板製品、線材製品など)、鉄鋼原料(輸入鉄鋼原料、合金鉄、コークスブリーズなど)、非鉄金属(銅製品、アルミ製品、非鉄金属地金・スクラップなど)、機械・情報(ゴム・タイヤ機械、製鉄・非鉄機械、化学機械、環境関連機器、電池用材料、液晶用材料、PC部品など)、溶接材料・機器(溶接材料、溶接関連機器、溶接ロボットシステムなど)を扱う商社である。M&Aも積極活用して、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社としてグローバルビジネスの深化を追求している。
21年3月期のセグメント別経常利益構成比は鉄鋼が15%、鉄鋼原料が8%、非鉄金属が46%、機械・情報が30%、溶材が4%、その他が▲2%だった。鉄鋼、鉄鋼原料、非鉄金属は、取扱数量と市況の影響を受けて収益が変動しやすい特性がある。
■重点分野はEV・自動車軽量化と資源循環型ビジネス
新中期経営計画(22年3月期~24年3月期)では、EV・自動車軽量化と資源循環型ビジネスを重点分野として、目標数値には最終年度24年3月期経常利益95億円(鉄鋼41億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属23億円、機械・情報13億円、溶材5億円)以上、ROE9%以上を掲げている。
投資額は3年合計200億円としている。内訳は、自動車向け鋼材加工事業に20億円、環境リサイクル事業に30億円、アルミ加工事業に80億円、M&Aによる流通再編に20億円、その他・海外チャンネル拡大・サプライチェーン強化に50億円としている。
鉄鋼は海外(中国、米国など)拡販や海外現地需要取り込み、鉄鋼原料は鉄スクラップとバイオマス燃料の取り扱い拡大、非鉄金属は半導体・自動車向け部材やエアコン用銅管の取り扱い拡大、機械・情報は建設機械部品の海外取り扱い拡大、溶材はM&Aによる流通再編や販売機能の強化を推進する。
株主還元の基本方針は、財務体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、連結配当性向30%を目標に安定的な配当を維持するとしている。またSDGsへの取り組みでは、鉄スクラップ、バイオマス燃料、雑電線屑などの取り扱い拡大や再資源化の推進を目指している。
■22年3月期大幅増益予想、さらに再上振れの可能性
22年3月期連結業績予想(7月30日に上方修正)は、売上高(収益認識に関する企業会計基準第29号適用のため前期比増減率は非記載)が4830億円、営業利益が21年3月期比75.1%増の78億円、経常利益が79.5%増の73億円、親会社株主帰属当期純利益が2.3倍の51億円としている。配当予想(7月30日に第2四半期末35円および期末35円の合計70円上方修正)は、21年3月期比120円増配の170円(第2四半期末85円、期末85円)としている。
第1四半期は売上高が1139億44百万円で、営業利益が前年同期比3.7倍の20億83百万円、経常利益が3.3倍の23億26百万円、親会社株主帰属四半期純利益が28.5倍の17億96百万円だった。自動車関連や半導体関連の取り扱いが好調に推移して大幅増益だった。
セグメント別利益(経常利益)は、鉄鋼が鋼板製品および線材製品の国内向け取扱量増加や価格上昇などで3.4倍の11億95百万円、鉄鋼原料が市況低迷による海外子会社の収益悪化などで45.5%減の73百万円、非鉄金属が銅製品・アルミ製品・非鉄原料の取扱量増加などで6.3倍の10億98百万円、機械・情報が圧延設備や大型圧縮機などの減少で64百万円の赤字(前年同期は1億円の黒字)、溶材が建築・自動車・建設機械向け溶接材料の取扱量増加などで46百万円の黒字(同39百万円の赤字)だった。
第1四半期の好調を受けて第2四半期累計・通期の連結業績予想、および配当予想を上方修正した。なお第2四半期累計予想は売上高が2380億円で、営業利益が前年同期比2.8倍の39億円、経常利益が2.5倍の41億円、親会社株主帰属四半期純利益が5.9倍の29億円としている。
第2四半期以降も自動車関連や半導体関連の取扱量が好調に推移し、価格も高値圏で推移する見込みとしている。さらに販管費が当初想定よりも大幅に縮小する見込みとなったことも寄与する。修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.6%、経常利益が31.9%と高水準である。コロナ禍からの経済再開本格化で通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は順調に水準を切り上げて年初来高値更新の展開だ。指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。9月27日の終値は3505円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS575円96銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の170円で算出)は約4.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS6295円46銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約311億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)