アイリッジは調整一巡、22年3月期大幅増収・営業増益予想

 アイリッジ<3917>(東マ)は、企業のO2O・OMOを支援するデジタル・フィジカルマーケティングソリューションをベースとして、デジタル地域通貨など新規事業領域も拡大し、DXソリューションカンパニーへの進化を目指している。22年3月期は大幅増収・営業増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は反発力の鈍い展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大

 企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するデジタル・フィジカルマーケティング領域(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)のソリューションをベースとして、デジタル地域通貨など新規事業領域も拡大している。

 21年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が23%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が77%だった。

 デジタルガレージ<4819>との資本業務提携を21年2月に解消した。デジタルガレージから株式80%を取得したセールスプロモーションの連結子会社DGマーケティングデザイン(DGMD)については両社の株式保有を継続し、21年4月1日付でQoil(コイル)に社名変更した。

 中期的な目標値としては、26年3月期の売上高133億円+αを目指すとしている。利益面については、当面は採用費用や新規事業への先行投資費用の増加が見込まれるが、販管費を適切にコントロールして、営業利益は毎期着実な増益を目指すとしている。

 なおwithコロナ対応として、オフィスを約5割削減・再編して、出社勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型働き方に最適な環境と勤務体制「iRidge Hybrid Working Style」を構築した。

■デジタル・フィジカルマーケティング領域はFANSHIPが主力

 デジタル・フィジカルマーケティング領域は、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、

 22年3月期第1四半期時点のFANSHIP導入アプリの合計MAU数(四半期平均)は、21年3月期第1四半期比1414万ユーザー増加(32.3%増加)の5788万ユーザーとなった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。

 今後はリアルチャネル保有企業向けのDXソリューションカンパニーへの進化を目指し、デジタル・フィジカルマーケティング領域におけるFANSHIPを中心としたクラウド型プロダクトおよびソリューションの強化・拡充、顧客ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスによるDX支援の強化を両輪として、新規事業の立ち上げ・収益化も推進する方針だ。

■デジタル地域通貨プラットフォームの展開を加速

 フィンテック領域(デジタル地域通貨)は子会社フィノバレーが、決済システムを中心としたデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を展開している。ファン育成プラットフォームFANSHIPと組み合わせることで、マーケティング機能を融合した決済基盤構築も可能となる。

 システムの提供実績としては、岐阜県飛騨・高山地域「さるぼぼコイン」、千葉県木更津市「アクアコイン」、大分銀行「デジタル商品券発行スキーム」などがある。

 地域経済活性化施策として自治体におけるデジタル地域通貨需要が高まっていることも背景に事業展開を加速している。21年2月には、長崎県南島原市の「MINAコイン」の提供を開始、東京都世田谷区の「せたがやPay」(21年8月に加盟店が1000店舗を突破)の提供を開始した。さらに岡山県真庭市の「公金キャッシュレス・市民ポイント調査研究業務」の優先交渉権を獲得(20年12月)している。

 21年2月には、熊本県人吉市の「人吉市スーパーシティ構想に係る事業提案公募型プロポーザル」において連携事業者に選定された。21年6月には、熊本県人吉市の「人吉市地域デジタル通貨構築業務委託公募型プロポーザル」において連携事業者に選定された。また「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」の第2期プロジェクトのインバウンド・観光再生に関するコーディネーター企業に選出された。

■新規事業領域も育成

 新規事業領域の育成も強化している。18年9月にはAIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDを提供開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。

 20年11月にはソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONETが設立したMONETコンソーシアムに参画した。MaaS事業への取り組みを強化する。また欧州系最大の戦略コンサルティングファームの日本法人ローランド・ベルガーの価値共創ネットワーク(VCN)に参画した。

 21年2月には、小売業界向けSaaS型オンラインプラットフォームを提供するFlow Solutionsと資本業務提携した。またオンライン・モンスターと提携し、接客・相談・学習指導など対面サービスを提供する企業向けに、対面サービスのオンライン化を実現するビデオ通話機能付マッチングプラットフォームの提供を開始した。さらに、メディカルネット(20年5月に歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携)と共同で、マッチングプラットフォームを利用したオンライン歯科相談サロン「デンタルオンラインサロン」と、業界初の歯科用口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診察サービス「デンタルオンライン」の提供を開始した。

 21年5月には、DXプロジェクトに必要な人材調達・稼働管理などの業務効率を改善し、外部企業とのコラボレーションを促進するリソース最適化支援プラットフォーム「Co―Assign」の提供開始を発表した。プロジェクト成功の確度を高める体制づくりを支援するクラウドサービスとして、24年度中の500社導入を目指すとしている。

 21年6月にはQoil(コイル)が京王電鉄と共同で、キラリナ京王吉祥寺にてアパレルD2C(Direct to Consumer)ブランド複数社によるショールーミングストア「INSEL STORE」をオープンすると発表した。7月5日にはQoilがサステナビリティをもっと楽しむプロジェクトWebサイト「Do well by doing good.jp」の制作・運営を支援したと発表した。7月16日にはQoilがドゥ・ハウスと連携して、競合商品ユーザーを狙い撃ちした店頭サンプリングが実施できる「スナイパー店頭サンプリング」の提供を開始した。

 21年8月には同社、ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)、データセクション、Flow Solutions(Flow)および子会社Qoilの5社で、リテールDXプラットフォームの共同展開に関して業務提携した。小売企業のDXを支援する。

 21年9月には子会社Qoilが、ドゥ・ハウス(東京都)が運営する「Global New Generations Lab」と連携し、Z世代(現在10代~20代半ばの世代)と企業の共創型の課題解決パッケージ「Plan withZ」を提供開始した。消費と情報発信の起点となるZ世代に響くマーケティングプラン・販促コンテンツ等を提供する。

■22年3月期大幅増収・営業増益予想

 22年3月期連結業績予想(経常利益と親会社株主帰属当期純利益は非開示)は、売上高が48億円~55億円(21年3月期比10.0%増~26.1%増)、営業利益が1億50百万円~2億円(同32.7%増~76.9%増)としている。

 第1四半期は売上高が前年同期比15.7%増の11億35百万円、営業利益が3百万円の黒字(前年同期は28百万円の赤字)、経常利益が0百万円の黒字(同27百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が9百万円の赤字(同24百万円の赤字)だった。

 子会社Qoilのオフラインプロモーション領域は新型コロナウイルスの影響が継続して伸び悩んだが、単体ベースの売上高はアプリ開発関連やアプリマーケティング関連が好調に推移して24.9%増の7億06百万円と伸長した。ストック型収益は22.9%増の4億02百万円となり、ストック型の売上比率は2.1ポイント上昇して35.4%となった。コスト面では事業拡大に向けた採用の継続で販管費が増加したが、売上総利益率が1.7ポイント改善して吸収した。

 通期は新型コロナ感染再拡大による子会社Qoilのオフラインプロモーションへの影響を考慮してレンジ予想としている。ただし月額報酬やアプリ開発の好調が牽引し、成長に向けた先行投資を吸収して大幅増収・営業増益予想としている。収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力の鈍い展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。9月28日の終値は707円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円72銭で算出)は約1.8倍、時価総額は約49億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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