【アナリスト水田雅展の銘柄分析】IBJは東証1部への指定替えと15年12月期業績予想の増額を発表

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 IBJ<6071>(東2)は日本最大規模の集客力と会員数を誇る婚活サービス企業である。26日に東証1部への指定替え(7月17日付)、株式の立会外分売、および15年12月期業績予想の増額修正を発表した。15年12月期業績は再増額が濃厚だ。株価は上場来高値更新の展開で、さらに上値追いの展開となりそうだ。なお8月14日に第2四半期累計(1月~6月)の業績発表を予定している。

■日本最大級の婚活サービス企業

 結婚相談から婚活サイト、さらにライフデザインサービスや地方自治体の婚活支援研修まで、ネットとリアルを最大限に活用して、各事業のシナジー効果を高めながら婚活に関するサービスを幅広く展開している。

 00年に日本初のインターネット結婚情報サービス(婚活サイト)を本格開始、03年に「Yahoo!JAPAN」の婚活サービスを構築、そして04年には国家公務員共済組合連合会(KKR)の福利厚生サービスを受託した実績を持つ。

 主力事業は、日本で最初の婚活サイト「ブライダルネット」を運営するコミュニティ事業、婚活パーティー「PARTY☆PARTY」や合コン・街コン「Rush」を運営するイベント事業、IBJ直営9店舗で展開する婚活ラウンジ「IBJメンバーズ」のラウンジ事業、IBJ正規加盟店「日本結婚相談所連盟」に加盟する全国1000社超の結婚相談所にお見合いシステムを提供する連盟事業である。またビッグデータも活用した婚活会員向け広告サービスや、婚礼関連企業へ会員カップルを送客(紹介)するライフデザインメディア事業も展開している。

 日本結婚相談所連盟に加盟する相談所を含めたIBJグループ全体の婚活会員数は15年3月末時点で約34.2万人(オンライン会員数28.8万人+オフライン会員数5.4万人)、イベント開催数は月間約2500本、ラウンジ事業における成婚率は約52%、IBJグループ全体で創出する成婚数は年間約2500組に達している。日本最大規模の集客力と会員数を誇る婚活サービス企業だ。

 収益は、コミュニティ事業では「ブライダルネット」月会費課金者からの月会費、イベント事業ではイベント参加費、ラウンジ事業では登録料・活動サポート費・月会費および成果報酬の成婚料、連盟事業では相談所からの加盟金および月額システム利用料、ライフデザインメディア事業では広告収入および婚礼関連企業からの手数料収入である。

 婚活会員数や加盟相談所の増加に伴って収益が増加するストック型のビジネスモデルだ。なおイベント事業のイベント開催回数・動員数および売上高は、クリスマスムードが高まる第4四半期(10月~12月)の構成比が高いという季節要因もあるようだ。

■IBJブランド力の強化と事業領域の拡大を推進

 中期的には日本の国策や市場ニーズに貢献する企業として、年間6000組(日本の成婚組数の1%)の成婚をIBJグループで創出することを目指している。成長戦略としては、クオリティ向上によるIBJブランド力の強化、既存事業の一段の強化に加えて、行政・地方自治体との連携強化、ライフデザインメディア事業での事業領域拡大などを推進する方針だ。

 行政・地方自治体との連携では、国家公務員共済組合連合会(KKR)からの福利厚生サービス受託に加えて、結婚支援研修・セミナーや相談員育成サービスなどで山形・山梨・富山・岐阜・和歌山・京都・高知の7府県と連携し、徳島県との連携も予定している。さらに全国自治体からの問い合わせが増加基調のようだ。

 ライフデザインメディア事業では、結婚式場やジュエリーなどのブライダル関連企業14社(15年3月末時点)と提携して会員カップルを送客(紹介)している。送客数は増加基調である。さらに不動産や保険などライフデザイン分野の企業とも提携して送客領域を拡大する計画だ。

 海外については14年4月、台湾最大のオンラインマッチングサービス会社であるSunfun Info社と台湾に合弁会社IBTを設立した。14年8月には自社店舗でのパーティー運用を開始して、動員数が急速に増加しているようだ。

 15年1月には、大手企業による少子化対策プロジェクトとして民間事業者協議会「婚活サポートコンソーシアム」を発足させた。日本の少子化問題に対する社会意識向上を目的として、婚活サポートの立場から調査・分析に基づいた情報発信などを行う。発足時の参画企業は9社だが、順次参画企業を増やして問題解決への取り組みの輪を広げていく方針だ。

 活動の一環として4月13日「婚活における身だしなみとファッション」に関する調査レポート、5月28日「結婚前後の住まい」に関する調査レポートを発表している。また6月21日には小泉進次郎衆議院議員など最前線で活躍する著名人をゲストコメンテーターに迎えて「第1回婚活シンポジウム」を開催した。

 なお6月10日には、15年7月11日から開催される歌手のクリス・ハートによる全国ツアー「47都道府県Tour2015-2016~続く道~presented by IBJ」(約10万名動員予定)のメイン公式スポンサー契約を締結したと発表している。

■15年12月期業績予想を増額修正、さらに再増額が濃厚

 6月26日に今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)および通期(1月~12月)の非連結業績予想の増額修正を発表した。

 第2四半期累計は前回予想(2月13日公表)に対して、売上高を1億71百万円増額して前年同期比27.5%増の19億47百万円、営業利益を68百万円増額して同34.7%増の3億90百万円、経常利益を68百万円増額して同33.8%増の3億85百万円、そして純利益を46百万円増額して同42.1%増の2億47百万円とした。

 婚活会員数の増加に伴って全事業が期初計画以上に順調に推移しているようだ。人件費や広告宣伝費などの増加を吸収して大幅増収増益の見込みだ。

 通期の非連結業績予想については、前回予想(2月13日公表)に対して売上高を1億71百万円増額、営業利益を68百万円増額、経常利益を91百万円増額、純利益を65百万円増額した。修正後の売上高は前期比21.6%増の40億33百万円、営業利益は同32.7%増の8億53百万円、経常利益は同34.3%増の8億46百万円、純利益は同34.5%増の5億44百万円となる。なお配当予想は未定としている。

 売上高と営業利益については、第2四半期累計の増額分だけを上乗せして、第3四半期(7月~9月)および第4四半期(10月~12月)の期初計画を据え置いた形だ。また修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高48.3%、営業利益45.7%、経常利益45.5%、純利益45.4%となる。

 ただし婚活会員(オンライン・オフライン)数、ブライダルネット月会費課金者数、PARTY☆PARTYやRushのイベント動員数、日本結婚相談所連盟の加盟相談所数、および成婚数が増加基調であり、ライフデザインメディア事業における送客ビジネスの拡大も寄与する。

 ストック型の収益構造であることや、イベント事業は第4四半期の盛り上がりが大きいため、期初時点から下期の比率が高い計画だったことなどを考慮すれば、通期業績予想は再増額が濃厚だろう。配当予想についても増配期待が高まる。

 なお月次データによると、15年5月末時点の婚活会員数は14年12月期末比4.3万人増加の36.1万人(オンライン会員数が同4.2万人増加の30.7万人、オフライン会員数が同0.2万人増加の5.5万人)、日本結婚相談所連盟加盟相談所数は同55社増加の1044社、ブライダルネット月会員課金者数は同0.4万人増加の1.4万人となった。また15年5月の婚活イベント動員数は3.6万人だった。

■国策や社会的認知度向上で収益拡大基調

 未婚化・晩婚化による婚姻数の減少、生涯未婚率の上昇、さらに出生率低下で日本の少子化問題が深刻化しているため、一般的に婚活・ウェディング市場の縮小懸念があり、婚活ブームのピークアウトを指摘する見方もあるようだ。

 しかし一方では、若者層の間に「いずれは結婚したい」という声が多く、婚活サービスの潜在市場規模は約1兆円とされる有望市場だ。そして女性活用・子育て支援・少子化対策はアベノミクス成長戦略の重点分野に位置づけられる国策である。結婚・出産・子育て支援関連ビジネスの前段階に位置付けられる婚活サービスに対する期待感も高まる。

 また婚活サービス市場では中小規模事業者が多いため、サービス内容・情報に対する信頼感や料金体系に対する不透明感なども指摘されている。しかし一部で報道されたネット大手の参入や、6月21日開催の「第1回婚活シンポジウム」などによって、婚活サービス業界に対する信頼感や社会的認知度・イメージが高まり、サービス利用者が増加して市場が拡大する効果が期待される。

 ネット大手の参入は中小規模事業者を淘汰する一方で、規模の大きい優良事業者にとっては追い風となりそうだ。日本最大規模の会員数を誇る優位性を活かして中期的に収益拡大基調だろう。

 株主優待制度については毎年12月31日現在の株式1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。株主優待内容は100株以上~500株未満保有株主に対して特製QUOカード500円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券1枚、500株以上保有株主に対して特製QUOカード1000円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券3枚を贈呈する。

■東証1部へ指定替え、株価は上場来高値更新の展開

 なお6月26日に、7月17日付での東証2部から東証1部へ指定替え、および東証1部の形式要件充足を目的とした株式の立会外分売を発表した。14年12月10日付の東証2部への市場変更から約7ヶ月でのスピード指定替えであり、社会的認知度・イメージ・信用力が一段と高まるだろう。立会外分売は7月13日~16日の間に実施する。分売予定株式数は62万株、分売価格は実施日の前日の終値もしくは最終気配値を基準として決定する。

 株価の動き(6月12日から貸借銘柄)を見ると、15年4月の1347円を突破して上場来高値更新の展開が続いている。6月26日は1988円まで上伸する場面があった。中期成長力を評価する動きだろう。

 6月26日の終値1970円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS43円74銭で算出)は45倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS116円37銭で算出)は17倍近辺である。

 目先的にはやや過熱感もあるが、日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドだ。15年12月期業績は再増額が濃厚であり、東証1部への指定替えや中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。

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