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ヤマシタヘルスケアホールディングスは上値試す、22年5月期1Q大幅増益で通期上振れの可能性
- 2021/10/7 08:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東1)は、九州を地盤とする医療機器専門商社を中心にヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。22年5月期第1四半期は新型コロナ影響が和らいで大幅増益だった。通期予想は据え置いて減益予想としているが、上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は地合いが悪化する中で逆行高の形となり4月の年初来高値に接近している。上値を試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
グループの事業会社は4社で構成されている。山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。トムスは透析分野を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、イーピーメディックは整形外科領域における体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・販売、アシスト・メディコは医療機関の経営支援・病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングを展開している。またイーディライト(東京都豊島区、山下医科器械と資本業務提携)を持分法適用関連会社としている。
医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。
また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始した。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始した。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。
21年5月期のセグメント別売上構成比は医療機器販売業が99%、医療機器製造・販売業が1%、医療モール事業が0%、営業利益構成比(調整前)は医療機器販売業が96%、医療機器製造・販売業が4%、医療モール事業が0%だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い特性がある。
■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進
新中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値に最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。
主要施策としてグループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を推進する。
なお21年6月にはSDGsへの取り組みの一環として、独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。また21年8月にはESG基本方針の制定をリリースした。地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。
■22年5月期1Q大幅増益、通期減益予想据え置きだが上振れの可能性
22年5月期の連結業績予想(収益認識に関する企業会計基準第29号を適用するため売上高の増減率は非掲載、利益への影響はなし)は、売上高が498億38百万円(第29号適用換算後で比較した場合は21年5月期比約8.0%減)、営業利益が44.0%減の5億42百万円、経常利益が43.0%減の5億84百万円、親会社株主帰属当期純利益が48.9%減の3億46百万円としている。配当予想は49円減配の41円(期末一括)としている。
第1四半期は、売上高が128億85百万円、営業利益が3.1倍の2億02百万円、経常利益が2.7倍の2億21百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.8倍の1億44百万円だった。なお収益認識基準適用で売上高が38億69百万円、売上原価が38億69百万円、それぞれ減少している。従来基準によった場合の売上高は前年同期比7.9%増の167億55百万円だった。
医療機器販売業は、売上高が128億35百万円で営業利益が61.4%増の4億04百万円だった。新型コロナ影響が和らいで手術数や外来・入院患者数が回復傾向となった。従来基準によった場合の売上高は前年同期比8.3%増の167億04百万円(一般機器分野が7.4%減の20億85百万円、一般消耗品分野が9.1%増59億55百万円、低侵襲治療分野が14.6%増の42億55百万円、専門分野が1.9%増の27億45百万円、情報・サービス分野が28.1%増の16億62百万円)だった。
なお、医療機器製造・販売業は売上高が72百万円で営業利益が80.4%減の5百万円、医療モール事業は売上高が16百万円で営業利益が1百万円(前年同期は0百万円の損失)だった。
通期予想は据え置いて、新型コロナ影響(取引先医療機関における手術や検査・処置症例の減少に伴う消耗品の販売減少)が継続し、前期に発生したコロナ対策補助金による一時的なコロナ関連商品の需要継続が見込めないため、減収減益予想としている。
ただし第1四半期の進捗率は売上高が25.9%、営業利益が37.3%、経常利益が37.8%と高水準である。医療機関の設備投資関連で第2四半期と第4四半期の構成比が高くなる傾向があることも勘案すれば、通期予想に上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
株価は地合いが悪化する中で逆行高の形となり4月の年初来高値に接近している。上値を試す展開を期待したい。10月6日の終値は2162円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円69銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の41円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2969円03銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約55億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)