- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サクセスHDは中期成長力を見直し
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サクセスHDは中期成長力を見直し
- 2015/6/30 07:02
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
サクセスホールディングス<6065>(東1)は保育園運営事業を展開している。株価はジェイコムホールディングス<2462>によるTOB期間終了(6月29日)が接近して急反落したが、調整一巡してトレンド好転する形だ。アベノミクス成長戦略が追い風であり、ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待される。中期成長力を見直して出直り展開だろう。
■神奈川と東京を地盤に保育園運営
保育園を運営するサクセスアカデミーの持株会社で、病院・大学・企業などが設置主体の事業所内保育室を受託運営する受託保育事業と、認可保育園・認証保育所・学童クラブ・児童館・全児童対策事業施設など公的保育施設を運営する公的保育事業を展開している。保育園業界3位の売上規模である。
従量制の請求方法や24時間365日の運営対応など、利用者の視点に立った最適な保育サービスを提供していることが強みだ。受託保育事業では委託先の予算や要望に合わせた保育設計で、さまざまな利用定員数、施設場所、利用時間帯、保育内容などを実現している。公的保育事業は利用者から徴収する利用料と自治体からの補助金が当社の収入となる。
14年12月期末時点の運営施設数は、受託保育事業が167施設(13年12月期末比5施設増加)、公的保育事業が88施設(認可保育園43施設、認証保育所5施設、学童クラブ等27施設、小規模保育等13施設)(同16施設増加)の合計255施設(同21施設増加)である。地域別には神奈川県と東京都を地盤としている。
成長に向けた重点戦略として、受託保育事業は広域エリアでの拡充、公的保育事業は首都圏中心の新規開園と小規模施設の運営を進め、施設運営の効率向上、人材確保・育成面でのジェイコムホールディングス<2462>グループとの連携強化、認可保育園開設用不動産の確保などを掲げている。24時間保育や英語教育の実施など高付加価値の保育サービスの提供、多様な保育需要に応じたサービスの提供も強化している。
■ジェイコムホールディングスがTOB実施
5月29日に筆頭株主であるジェイコムホールディングスが当社に対してTOBを実施して連結子会社化(現在は持分法適用関連会社)すると発表した。TOB期間は15年6月1日~6月29日、買い付け予定数の上限は125万4400株、買い付け価格は普通株式1株につき1700円である。TOB成立後も当社株式の上場は維持される予定だ。
これに対して当社は賛同の意見を表明している。またジェイコムホールディングスと当社第2位株主であるシバノとの間で公開買付応募合意書を締結し、シバノが保有する当社株式のすべてを応募することで合意している。
■15年12月期は増収ながら費用増加で減益予想
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)23億66百万円、第2四半期(4月~6月)24億75百万円、第3四半期(7月~9月)25億41百万円、第4四半期(10月~12月)27億31百万円、営業利益は第1四半期59百万円、第2四半期40百万円、第3四半期1億64百万円、第4四半期1億06百万円、経常利益は第1四半期57百万円、第2四半期2億81百万円、第3四半期1億55百万円、第4四半期1億89百万円だった。
毎年4月に新規施設の開園が集中して開園準備費用負担が先行するため、営業利益は期前半が低水準、期後半が高水準となりやすい。また経常利益は営業外での公的保育事業に係る設備補助金収入の増減も影響する収益構造だ。
今期(15年12月期)の連結業績予想(2月10日公表)は売上高が前期比12.5%増の113億75百万円だが、営業利益は同36.8%減の2億33百万円、経常利益は同3.5%減の6億58百万円、純利益は同7.1%減の3億68百万円としている。配当予想は前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)で予想配当性向は42.6%となる。
新規施設開設費用、および保育士募集採用費や人件費の増加などを考慮して営業減益見通しとしている。ただし新規施設開設などで2桁増収見通しだ。ニーズが高い認可保育園については前期(8施設)を上回る新規開設を計画している。また経常利益と純利益については営業外収益での公的保育事業に係る設備補助金収入が寄与する。
第1四半期(1月~3月)は売上高が前年同期比16.2%増の27億49百万円、営業利益が同31.7%減の40百万円、経常利益が同38.9%減の35百万円、純利益が同36.8%減の20百万円だった。
前期に新設した施設も寄与して大幅増収だったが、利益面では保育士募集採用費や人件費が増加して減益だった。セグメント別に見ると、受託保育事業は売上高が同6.0%増の10億20百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同2.7%減の72百万円、公的保育事業は売上高が同23.2%増の17億29百万円、営業利益が同21.7%減の95百万円だった。
なお第1四半期の新規開設は受託保育事業2施設(病院内保育施設2施設)だった。また新たに受託保育事業6施設(病院内保育施設3施設、企業内等の保育施設3施設)、公的保育事業12施設(認可保育園7施設、学童クラブ・児童館4施設、小規模保育園等1施設)、合計18施設の開設準備が完了して4月から運営を開始している。
全国の保育所利用児童数は増加基調で、待機児童数は緩やかに減少傾向となっているが依然として解消せず、潜在需要も顕在化して都市部を中心に保育サービスの需要は高水準である。そしてアベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度の待機児童解消を目指して15年4月に「子ども・子育て新支援制度」がスタートした。さらに規制緩和、制度面での支援、運営補助金拡大などの動きが活発化している。
15年12月期は減益見通しだが、アベノミクス成長戦略が追い風であり、ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待される。国の重点政策を追い風とする中期成長シナリオに変化はなく、規模拡大に伴って収益改善が期待される。
■株価はTOB終了接近で急反落
株価の動きを見ると、TOBを材料視して安値圏1100円台から6月2日の年初来高値1629円まで急伸したが、TOB期間終了(6月29日)が接近するとともに急反落した。6月29日は全般地合い悪化も影響して1248円まで下押す場面があった。TOB発表前の安値圏に回帰する形だ。
6月29日の終値1267円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS70円36銭で算出)は18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当30円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS378円49銭で算出)は3.3倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺に回帰したが、13週移動平均線が上向きに転じ、さらに26週移動平均線を上抜いた。調整が一巡してトレンド好転する形だ。アベノミクス成長戦略が追い風であり、ジェイコムホールディングスとの連携強化の効果も期待される。中期成長力を見直して出直り展開だろう。