イトーキは下値切り上げ、21年12月期横ばい予想だが上振れ余地

 イトーキ<7972>(東1)はオフィス家具の大手で、物流機器などの設備機器関連も展開している。21年12月期はコロナ禍で厳しい事業環境だが、利益率改善や販管費削減などで減収影響を挽回して営業・経常利益横ばい予想としている。さらに上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は反発力の鈍い形だが一方では徐々に下値を切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。なお11月8日に21年12月期第3四半期決算発表を予定している。

■オフィス家具の大手

 オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器などの設備機器関連も展開している。製販一貫体制が特徴である。

 20年12月期のセグメント別売上構成比はオフィス関連事業が56%、設備機器関連事業が42%、その他(家庭用机など)が2%、営業利益構成比はオフィス関連事業が33%、設備機器関連事業が62%、その他が4%だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。

 21年12月期からセグメント区分をワークプレイス事業、設備機器・パブリック事業、IT・シェアリング事業に変更した。

 ワークプレイス事業は、従来のオフィス関連事業のオフィス家具・営繕・FMPMコンサル、および設備機器関連事業の内装・建材、その他事業の家庭用家具で構成する。設備機器・パブリック事業は、従来の設備機器関連事業の内装・建材以外、およびオフィス関連事業の公共施設関連で構成する。IT・シェアリング事業は、従来のオフィス関連事業の什器レンタル・オフィスシェア関連サービス、メンバーシップ事業、およびソフトウェア開発関連サービスで構成する。

■本社オフィスのITOKI TOKYO XORKでオフィス空間を提案

 本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナの「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れた。

 海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。

■ポストコロナの働く環境づくりをリード

 中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。

 目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。

 基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。

 20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。

 なお経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2021大規模法人部門ホワイト500」に認定されている。オフィス家具事業を展開する企業としては初の5年連続認定である。

 21年9月には代表取締役社長の交代(22年3月下旬に開催予定の定時株主総会終了後に開催される取締役会において正式決定の予定)を発表した。平井嘉朗・現代表取締役社長が退任して特別顧問に就任し、湊宏司・現顧問が代表取締役社長に就任予定である。経営体制の一層の強化により、中期経営計画「RISE ITOKI 2023」に掲げた抜本的な構造改革を推進する。

■21年12月期横ばい予想だが上振れ余地

 21年12月期連結業績予想は、売上高が20年12月期比1.9%減の1140億円、営業利益が0.1%増の18億円、経常利益が1.0%増の19億円、親会社株主帰属当期純利益が特別損失一巡で7億円の黒字(20年12月期は2億35百万円の赤字)としている。配当予想は20年12月期と同額の13円(期末一括)である。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比4.8%減の615億72百万円、営業利益が11.6%増の29億36百万円、経常利益が12.9%増の28億30百万円、親会社株主帰属四半期純利益が90.3%増の22億90百万円だった。オフィスビル供給量減少などで減収だが、利益率改善や販管費減少などで2桁増益だった。なお特別利益に固定資産売却益11億78百万円を計上した。

 ワークプレイス事業は売上高がオフィスビル供給量減少などで6.0%減の440億06百万円だったが、営業利益が13.8%増の21億85百万円だった。ポストコロナを見据えたワークプレイス構築への投資が増加傾向となり、提供価値向上による利益率改善や販管費圧縮などで増益だった。なお中国事業については、コロナ禍による輸出制限や市場停滞などで厳しい状況が継続している。

 設備機器・パブリック事業は売上高が2.1%減の167億33百万円で、営業利益が1.8%減の10億20百万円だった。物流設備や原子力特殊扉などは堅調だったが、前年好調だった博物館や公共交通機関のデジタルサイネージ関連の設備投資が一巡した。

 IT・シェアリング事業は売上高が8.2%増の8億32百万円で、営業利益が2億70百万円の赤字(前年同期は3億27百万円の赤字)だった。オフィス空間のシェア事業や会員向けソリューションが堅調に推移し、増収効果で赤字縮小した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高321億21百万円で営業利益16億67百万円、第2四半期は売上高294億51百万円で営業利益12億69百万円だった。

 通期は新型コロナ影響などで厳しい事業環境が続くことを想定して減収だが、利益率改善で減収影響を挽回して営業・経常利益横ばい予想としている。第2四半期累計は2桁増益と順調だった。そして各利益は通期予想を超過達成している。構造改革プロジェクトの進捗状況も概ね順調のようだ。オフィス新築・改装・移転シーズンなどの季節要因で上期偏重の傾向があるが、通期上振れ余地がありそうだ。好業績を期待したい。

 コロナ禍で感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。働き方改革による企業の職場環境改善の流れも追い風として中期的に収益拡大を期待したい

■株価は下値切り上げ

 なお22年4月4日に移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場の上場維持基準に適合していることを確認しており、21年8月30日開催の取締役会でプライム市場選択申請を決議した。東京証券取引所が定める申請スケジュールに従って所定の手続きを進める。

 株価は反発力の鈍い形だが一方では徐々に下値を切り上げている。調整一巡して出直りを期待したい。10月7日の終値は368円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円50銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の13円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS969円43銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約168億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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