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エイトレッドは戻り試す、22年3月期2桁増益予想、さらに上振れの可能性
- 2021/10/8 09:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エイトレッド<3969>(東1)はワークフローシステムを展開している。社内文書電子化のリーディングカンパニーである。10月7日には人材領域ビジネス大手マイナビグループのマイナビM&Aとの業務提携を発表した。中小企業の経営課題解決を支援する。22年3月期はクラウドサービスが牽引して2桁増益・連続増配予想としている。さらなるストック売上拡大で通期予想に上振れの可能性がありそうだ。DXの流れも背景として収益拡大基調だろう。株価はやや上値の重い形だが、徐々に下値切り上げの動きを強めている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■ワークフローシステムの開発・販売
ソフトクリエイトホールディングス<3371>の連結子会社で、ワークフローシステム(ソフトウェア)の開発・販売を展開している。
ワークフローシステムとは、企業における稟議書、経費精算申請書、各種届け出書など、稟議・申請から承認・決裁に至る事務工程(ワークフロー)を電子化(システム化)するソフトウェア製品である。
多くの企業が紙(申請書類・帳票)を使用して稟議・申請から承認・決裁に至る事務を行っているが、ワークフローシステムを導入することによって、業務プロセスの効率化(作業工数削減や時間短縮)、ペーパーレス化によるコスト削減(用紙・印刷・郵送・保管に係るコストの削減)、内部統制の強化(意思決定プロセスや承認日時のデータ化・可視化)などのメリットが得られる。
主力製品は、大手・中堅企業向けパッケージ型のAgileWorks、小規模企業向けクラウド型のX-point Cloudである。21年4月にはX-point Cloudのメジャーバージョンアップ版をリリースした。なおクラウド型のX-point Cloudへの移行により、従来の主力製品であった小・中規模企業向けパッケージ型のX-pointは、22年3月新規ライセンス販売終了、25年3月通常サポート終了、27年3月延長サポート・追加ライセンス販売終了予定である。
21年3月期の製品別売上高は、パッケージソフトが20年3月期比13.7%増の13億23百万円(X-pointが3.2%減の4億30百万円、AgileWorksが24.1%増の8億93百万円)、クラウドサービスが30.9%増の6億円だった。X-pointはクラウドサービスへの移行で減少だが、AgileWorksとX-point Cloudが導入企業数の増加で大幅伸長している。導入企業数は累計3500社以上に達している。
■社内文書電子化のリーディングカンパニー
社内文書(申請書・稟議書)電子化のリーディングカンパニーである。複数の市場調査レポートで、X-point Cloudがワークフロー市場における出荷金額・売上金額実績シェア1位を獲得している。
アイ・ティ・アールの「ITR Market View:RPA/OCR/BPM市場2021」では、AgileWorksの伸長も寄与してワークフロー市場における20年度ベンダー別売上金額シェア1位、X-point CloudがSaaS型ワークフロー市場ベンダー別売上金額で16年度から6年連続シェア1位を獲得した。
富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2020年版」においては、X-point CloudがSaaSワークフロー市場占有率推移(金額)で5年連続シェア1位(同23.0%)となっている。
ミック経済研究所の「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2020年度版」においては、X-point CloudがSaaS・ASP型ワークフロー市場シェア(出荷金額)で9年連続シェア1位(同34.3%)を獲得している。中堅中小企業向け(100人未満のSMB市場)での19年度シェアは55.9%だった。
アイティクラウドの「ITreview Grid Award 2021 Summer」ワークフロー部門では、X-pointがLeader(8期連続)、X-point CloudがHigh Performer(5期連続)、AgileWorksがHigh Performer(4期連続)を受賞している。
■開発特化型企業
事業戦略の基本は、日本型業務プロセスに適した製品によって他社製品との差別化を図る、導入企業ごとの個別カスタマイズを行わずに開発コストを抑制する、開発に特化して販売パートナー企業(販売代理店)を活用するとしている。販売パートナーは大手SIerなどで構成され、全国に営業網を構築している。
■ワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」市場は拡大基調
同社が運営するワークフロー総研の調査(テレワークとワークフローの導入調査)によると、テレワークを行っている企業のワークフローシステム導入率は73.2%で、ワークフロー導入はテレワーク推進に必要であると回答した会社員が91.7%に達している。一方、テレワークを行っていない企業のワークフローシステム導入率は僅か23.2%にすぎない。
電子文書を導入せずに、依然として紙・手書きベースで事務処理を行っている企業が多いが、今後は中堅・中小企業においても、業務効率化を実現するワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」の導入が加速し、市場は拡大基調が予想される。
こうした事業環境に対応し、AgileWorksとX-point Cloudを2本柱として、カバレッジ拡張や他社サービスとの連携を強化しながら売上拡大を推進する方針だ。
20年9月には、インフォマート<2492>と企業間取引文書と社内文書のペーパーレス化事業で協業開始した。21年6月には、官民連携で東海地域における中小企業でデジタルワークシフト促進を目指す「デジタルワークシフトコンソーシアム浜松」に参画した。21年7月には、フィリップ証券とTOKYO PRO Marketへの上場を目指す新興企業に対する内部統制支援DXで業務提携した。
10月7日には、人材領域ビジネス大手マイナビグループのマイナビM&Aとの業務提携を発表した。中小企業の経営課題解決を支援する。
■22年3月期2桁増益予想、さらに上振れの可能性
22年3月期業績(非連結)予想は、売上高が21年3月期比9.1%増の21億円、営業利益が12.4%増の8億80百万円、経常利益が11.3%増の8億80百万円、当期純利益が13.9%増の6億10百万円としている。配当予想は2円増配の22円(第2四半期末11円、期末11円)としている。増収・2桁増益・連続増配予想である。
製品別売上高計画は、X-pointがクラウドサービスへの移行で26.8%減の3億15百万円だが、AgileWorksが17.6%増の10億50百万円、X-point Cloudが22.3%増の7億35百万円と大幅伸長する見込みだ。X-pointのAgileWorksへのアップセルやX-point Cloudへの移行を促進し、21年4月のX-point Cloudのメジャーバージョンアップの効果も見込んでいる。
第1四半期は、売上高が前年同期比22.9%増の4億89百万円で、営業利益が53.9%増の2億04百万円、経常利益が46.4%増の2億04百万円、四半期純利益が47.2%増の1億34百万円だった。導入企業数の増加やストック売上の拡大などで大幅増収増益だった。ストック売上は26.4%増の3億73百万円、フロー売上は12.6%増の1億16百万円だった。
製品別売上高は、クラウドサービス(SaaS型)のX-point Cloudが29.8%増の1億74百万円、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksが25.3%増の2億11百万円と大幅伸長した。パッケージ型のX-pointはクラウドサービスへの移行で減収を見込んでいたが、追加ライセンス発生などで8.7%増の1億03百万円と堅調だった。
通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高23.3%、営業利益23.2%、経常利益23.2%と順調である。第1四半期が大幅増収増益と順調であり、さらなるストック売上拡大で通期予想に上振れの可能性がありそうだ。DXの流れも背景として収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は9月末と3月末の年2回
株主優待制度は年2回、毎年9月末および3月末時点の株主を対象として、保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は戻り試す
株価はやや上値の重い形だが、徐々に下値切り上げの動きを強めている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月7日の終値は2347円、今期予想PER(会社予想のEPS81円64銭で算出)は約29倍、今期予想配当利回り(会社予想の22円で算出)は約0.9%、前期実績PBR(前期実績のBPS412円08銭で算出)は約5.7倍、時価総額は約176億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)