【アナリスト水田雅展の銘柄分析】MRTは中期成長力を評価して底値圏から反発期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 MRT<6034>(東マ)は医師プラットフォームを運営して医師紹介事業を主力としている。株価は水準切り下げの動きが続いたが調整のほぼ最終局面だろう。16年3月期増収増益基調であり、中期成長力を評価して底値圏から反発展開が期待される。

■医師プラットフォーム運営で医療人材紹介事業が主力

 14年12月東証マザーズ市場に新規上場した。インターネットを活用した医師プラットフォームを運営し、医師を中心とする医療人材紹介事業を主力としている。東京大学医学部附属病院の医師互助組織を母体としているため、医師視点のサービスや医師を中心とする医療分野の人材ネットワークが強みであり、東大卒医師の3人に1人はMRT会員に登録している。

 主力のサービスは、非常勤医師を紹介する外勤紹介サービスの「Gaikin」、常勤医師を紹介する転職紹介サービスの「career」、医局向けサービスの「ネット医局」などである。15年3月期末時点で医師紹介件数は累計70万件を突破した。また看護師・薬剤師・臨床工学技士・放射線技師などの転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」も運営し、15年4月には医師とコンシューマを繋ぐ医療情報発信メディア「Good Doctors」も開始した。

 医局は教授を中心とした医師同士の相互扶助組織として存在し、各医局には数人から数百人の医師が存在している。医局は大学・診療科ごとに存在し、大学医局だけでも全国で2000以上存在している。そして医局は医師の人事業務も統制し、大学病院以外の医療機関の多くは医局の人事によって医師が供給(派遣)され運営が成り立っている。また大学病院で勤務している医師が大学病院以外で勤務することを医師間では「外勤」と呼び、医師は大学医局の指示のもとで「外勤」を行っている。

 外勤紹介サービスの「Gaikin」は、非常勤を希望する医師会員と医療機関との間で、インターネット技術を活用した当社の人材紹介システムを利用して、反復継続的に自動マッチングを行うサービスである。

 転職紹介サービスの「career」は、常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握したうえで、求人側の医療機関と転職(常勤医師)希望の医師をマッチングするサービスである。

 医局向けサービスの「ネット医局」では、医局管理業務を支援するグループウェアを提供している。医局管理業務の効率化を推進し、当社にとっても医局単位で医師をカバーして全国的に医師会員数を増やすことが可能となる。また「Gaikin」と「ネット医局」を組み合わせることで、市中病院への医師供給という医局機能を補完する。

 国内の医師需要については、高齢化社会の進展に伴って医療ニーズが増加する一方で医師の供給不足が深刻化し、中期的に医師の売り手市場が予想されている。また医師の地域偏在という地域間格差問題が存在する一方で、医師流動化が活発になることも予想されている。このため医師紹介市場においてはインターネットの活用や、医局との関係による競争優位性の確保が重要になる。

 こうした事業環境に対して、医師会員向けに提供する情報・サービスの付加価値を高めるとともに利便性も向上させて、医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークを構築していることが特徴だ。

■中期成長に向けてサービス拡充

 中期成長戦略としては、医療・ヘルスケア情報プラットフォームを拡充し、全国へネットワーク展開して全国大学医局へのサービス導入を目指す。15年3月には全国展開への第一歩として名古屋営業所を開設した。またアライアンス戦略も活用してシェア拡大を推進するとともに、コンシューマ向けサービスなどの新規事業も推進する。

 15年2月、日本最大級の税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」を運営する弁護士ドットコム<6027>と業務提携した。会員登録の医師や医療機関に対して「税理士ドットコム」に会員登録している税理士を紹介することでサービスを拡充する。

 15年4月、GMOリサーチ<3695>と業務提携した。同社のDIY型リサーチシステム「GMO Market Observer」を利用して、当社が保有する医師会員向けのインターネット調査サービスを開始する。

 15年4月、オウンドメディア構築事業を展開するリボルバー(東京都)と業務提携した。リボルバーが提供するモバイル特化メディアプラットフォーム「dino」をベースシステムとして、医師が発信する医療・ヘルスケア情報発信メディア「Good Doctors」を立ち上げた。

 15年4月、国内最大級のショッピング・オークション一括検索サイト「オークファン」を運営するオークファン<3674>と、データ収集・解析において連携した。ビッグデータを活用して医師と医療機関に対する有益なサービスの拡充を図る。

 そして15年5月には、業界最安値で1時間1000円から即日手配可能なベビシッターサービス「キッズライン(KIDSLINE)」を運営するカラーズ(東京都)と業務提携した。当社へ会員登録している看護師に対して「キッズライン」に登録してもらい、看護師会員の一人一人に最適な勤務先を紹介することによって当社のサービスを拡充するとしている。

■16年3月期は増収増益予想

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期比20.3%増の10億円、営業利益が同3.7%増の1億80百万円、経常利益が同15.8%増の1億80百万円、純利益が同10.5%増の1億06百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 事業別売上高の計画については、主力の外勤紹介サービス「Gaikin」が同24.7%増の8億08百万円、転職紹介サービス「career」が同0.7%増の1億42百万円、そして転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」他が同17.1%増の48百万円としている。また外勤医師紹介件数は同13.2%増の11万4500件、外勤医師給与取扱高は同13.3%増の71億円、ネット医局導入数は同90医局増の150医局の計画だ。

 学会への参加や医師会員向けキャンペーン、営業増員、医師情報プラットフォームシステムの利便性向上などの効果で、医師登録件数および医師紹介件数が順調に増加し、価格改定(15年4月勤務開始案件分から外勤紹介サービス「Gaikin」の医師紹介手数料を10%から20%に値上げ)効果も寄与して大幅増収見込みだ。

 営業利益については営業拠点、医師医局情報プラットフォーム、およびメディアの拡充に向けた投資フェーズとして小幅増益にとどまる見込みだが、経常利益は上場関連費用一巡も寄与して2桁増益見込みだ。さらに地方拠点展開、システム改修による利便性向上、新規メディアサービス「Good Doctors」の普及、新サービスの開発も推進する方針だ。中期成長に向けた先行投資を吸収して増収増益基調だろう。

■株価は調整の最終局面

 株価の動きを見ると、水準切り下げの動きが続き、6月29日には全般地合い悪化も影響して上場来安値となる1650円まで下押す場面があった。

 6月29日の終値1666円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS46円79銭で算出)は36倍近辺、実績PBR(前期実績のBPS302円74銭で算出)は5.5倍近辺である。

 2000円台を割り込んで水準を切り下げたが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。調整のほぼ最終局面だろう。16年3月期増収増益基調であり、中期成長力を評価して底値圏から反発展開が期待される。

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