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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ゼリア新薬工業は調整の最終局面、16年3月期は大幅増益予想で収益改善基調
- 2015/6/30 06:50
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野を中心に展開する医薬品メーカーである。株価は水準を切り下げて調整局面が続いているが、調整のほぼ最終局面だろう。16年3月期の大幅増益予想を評価して一旦は反発展開が期待される。
■消化器分野が中心の医薬品メーカー
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。
医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」、H2受容体拮抗剤「アシノン」、亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」を主力としている。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。
コンシューマーヘルスケア事業は「コンドロイチン群」「ヘパリーゼ群」「ウィズワン群」を主力としている。
M&Aを活用してグローバル展開も推進し、08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月には、ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約を締結し、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。
新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。
消火器分野の「Z-206(アサコール)」は協和発酵キリンと共同で、潰瘍性大腸炎を対象に用法・用量を追加するフェーズ3を実施している。中国での開発はフェーズ3を終了して13年5月に承認申請済みだ。自社オリジナル品の「Z-338(アコファイド)」は欧州において機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施している。
エーザイ<4523>から導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」は逆流性食道炎を対象としたフェーズ2を開始、子宮頸癌を対象とする「Z-100」は日本を含むアジア地域におけるフェーズ3国際共同治験を開始、膵臓癌を対象とする「Z-360」は日本を含むアジア地域におけるフェーズ2国際共同治験を開始、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ1bを開始した。
14年8月にはエーザイの新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。
14年9月には、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。
15年3月にはコンビニエンスストア向け滋養強壮ミニドリンク剤「ヘパリーゼ・アミノ」を販売開始した。疲労回復のための栄養補給を訴求した「ヘパリーゼ」ブランド初の指定医薬部外品である。6月には「ヘパリーゼW」シリーズの新製品として、炭酸飲料「ヘパリーゼWスパークリング」を全国のコンビニエンスストアで販売すると発表した。
15年4月にはベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%取得を発表した。当社グループのアジア地域における事業展開の際の一つの拠点とする。
■16年3月期は大幅増益予想で収益改善基調
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億15百万円、第2四半期(7月~9月)154億21百万円、第3四半期(10月~12月)156億46百万円、第4四半期(1月~3月)152億30百万円、営業利益は第1四半期8億58百万円、第2四半期14億21百万円、第3四半期10億61百万円、第4四半期6億62百万円の赤字だった。
15年3月期の配当性向は62.3%、ROEは14年3月期比6.9ポイント低下して4.2%、自己資本比率は同6.0ポイント上昇して65.0%となった。
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比6.5%増の650億円、営業利益が同49.3%増の40億円、経常利益が同26.3%増の35億円、純利益が同17.3%増の30億円としている。配当予想は前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)で予想配当性向は53.1%となる。
コンシューマーヘルスケア事業が引き続き好調に推移し、医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」の国内外での伸長、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場浸透を見込んでいる。研究開発費や広告宣伝費が増加するが、増収効果で吸収して大幅増益見込みだ。
前期は薬価改定や後発品使用促進の影響、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築遅れ、ライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、広告宣伝費の増加、成長戦略に欠かせない新薬パイプラインの充実を図るため当初予定していなかった新規開発テーマの導入費用の発生、ヨーロッパとアジア地域で実施している治験の進捗による研究開発費の想定以上の増加などで大幅減益だったが、収益は改善基調だろう。
■株価は調整の最終局面
株主優待については毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。1000株以上所有株主に対してはA・B・C・D・Eコースの中からいずれか1コース選択、100株以上~1000株未満所有株主に対してはFコースを贈呈する。
株価の動きを見ると、水準を切り下げて調整局面が続いている。6月29日には全般地合い悪化も影響して年初来安値となる1777円まで下押した。ただし調整のほぼ最終局面だろう。
6月29日の終値1777円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS56円48銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1178円00銭で算出)は1.5倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形で水準を切り下げたが、リズム的には調整のほぼ最終局面だろう。16年3月期の大幅増益予想を評価して一旦は反発展開が期待される。