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生化学工業は調整一巡、22年3月期上振れの可能性
- 2021/10/12 08:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野を主力とする医薬品メーカーである。22年3月期は大幅営業・経常増益予想としている。コロナ禍からの回復などで通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して戻り高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお11月9日に22年3月期第2四半期決算発表を予定している。
■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー
糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。
21年3月期のセグメント別の構成比は、売上高が医薬品事業75%(国内医薬品43%、海外医薬品25%、医薬品原体・医薬品受託製造7%)、LAL事業25%、営業利益が医薬品事業24%、LAL事業76%だった。
20年3月には海外製造拠点としてカナダのダルトン社を子会社化した。なおダルトン社を買収する際に中間持株会社として設立したSEC社、および買収目的会社として設立したSAC社が特定子会社に該当することになったため、ダルトン社とSAC社が現地法に基づく新設合併を行い、新設された新ダルトン社が旧ダルトン社から商号および事業を引き継いだ。
20年8月には、ダルトン社がサスカチュワン大学の研究機関であるVIDO-InterVacと、VIDO-InterVacがカナダ政府およびサスカチュワン州から支援を受けて開発を進めているCOVID-19ワクチンの製造に関して、業務提携に合意した。ダルトン社は本提携により、COVID-19ワクチンの初期段階の臨床試験で投与される治験薬の調合、充填、製剤化を担う。
21年4月にはLAL事業の海外子会社である米ACC社が、遺伝子組み換えエンドトキシン測定用試薬「パイロスマート ネクストジェン」の販売を開始した。21年8月には単回投与の関節機能改善剤ハイリンクについて、台湾のTCM社を通じて台湾における販売を開始した。
■新薬開発は糖質科学分野に焦点
研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞っている。開発パイプラインには、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722、癒着防止材SI-449がある。
SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。またスイスのフェリング社と日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大95百万米ドル(うち契約一時金5百万米ドル)である。米国では第3相臨床の追加試験が22年11月経過観察終了予定だが、新型コロナウイルスの影響で進捗が遅れているため、被験者増加や治験施設増加など各種施策を実行して組み入れを促進している。
SI-613は、小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結し、21年3月に変形性関節症治療剤ONO-5704/SI-613(ジョイクル関節注30mg)について、変形性関節症(膝関節、股関節)の効能または効果で国内製造販売承認を取得(21年5月に小野薬品工業が販売開始)した。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大120億円(うち契約一時金20億円)である。米国では第2相臨床試験結果の解析が終了し、第3相臨床試験の検討と並行して提携先の選定を進めている。SI-613-ETP(小野薬品工業とのSI-613の契約に含む)は後期第2相臨床試験の解析が終了し、次のアクションを検討中である。
なおSI-613について、20年9月にエーザイ<4523>と韓国における販売提携に関する契約を締結した。エーザイの韓国子会社が韓国におけるSI-613の独占的販売権を取得し、製造販売申請を行う。承認取得後は製品をエーザイに供給する。契約一時金と販売マイルストーンを受け取る。エーザイとは20年4月に中国における共同開発および販売提携に関する契約を締結しており、2ヶ国目の提携となる。
SI-614は米国で第2・3相試験が終了し、販売提携先を選定中である。SI-722は、19年11月米国における第1・2相臨床試験を開始、20年3月被験者投与を開始した。新型コロナウイルスの影響で計画遅れの状況だが、治験施設の稼働を再開している。SI-449は18年5月開始した日本でのパイロット試験で良好な結果が確認され、20年5月に国内ピボタル試験を開始した。新型コロナウイルスの影響で遅延が生じているが、リモート下での治験対応策を実施している。
■新薬開発や収益基盤強化を推進
中期経営計画の目標には、22年3月期(想定為替レート1米ドル=105円)の売上高283億円、経常利益45億円、SKK EBITDA(営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた利益指標)50億円、海外売上高比率50.0%を掲げている。研究開発費は売上比25~30%である。利益配分は配当性向50%を目指す。
重点施策としては、新たな収益の柱となる新薬開発の加速、製品の市場拡大による収益基盤強化、生産性向上のための改革を推進する。
■22年3月期大幅営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比16.1%増の322億円、営業利益が2.0倍の45億50百万円、経常利益が53.7%増の46億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が14.4%減の36億50百万円としている。なお受取ロイヤリティーを営業外収益から売上高に表示区分変更し、販売手数料等を販管費計上から売上高控除に変更する。配当予想は6円増配の30円(第2四半期末15円、期末15円)(普通配当20円+特別配当10円)としている。
売上面は国内薬価引き下げが減収要因となるが、受取ロイヤリティーの増加、新製品の変形性関節症治療剤ジョイクル関節注30mg(開発コードONO-5704/SI-613)の発売、医薬品原体・医薬品受託製造の伸長などで2桁増収見込みとしている。
セグメント別売上高計画は、医薬品事業が21.0%増の251億50百万円(国内医薬品が1.3%増の116億円、海外医薬品が1.8%増の69億円、医薬品原体・医薬品受託製造が27.3%増の23億50百万円、ロイヤリティーが6.0倍の43億円)で、LAL事業が1.6%増の70億50百万円としている。
利益面は、研究開発費が増加(9.6%増の79億円)し、減価償却費や営業関連費も増加するが、増収効果で吸収して大幅営業・経常増益予想としている。当期純利益は前期の法人税等調整額のマイナス計上の反動で減益予想としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比71.6%増の117億84百万円、営業利益が11.2倍の44億46百万円、経常利益が7.6倍の46億13百万円、親会社株主帰属四半期純利益が6.9倍の36億52百万円だった。新型コロナ影響からの回復、M&A効果、受取ロイヤリティー計上などで大幅増収増益だった。
医薬品事業の売上高は93.3%増の97億07百万円だった。新型コロナ影響からの回復で国内医薬品は9.8%増の38億47百万円、海外医薬品は40.6%増の15億89百万円だった。医薬品原体・医薬品受託製造はダルトン社の連結も寄与して2.4倍の7億20百万円と大幅伸長した。さらに受取ロイヤリティー(表示区分を従来の営業外収益から売上高に変更)35億50百万円を計上した。LAL事業も海外子会社におけるエンドトキシン測定用試薬などが好調に推移して12.6%増の20億76百万円と伸長した。利益面は研究開発費が増加(19億36百万円で3億20百万円増加)したが、増収効果や売上構成変化による原価率の低下(6.4ポイント低下)で大幅増益だった。
通期予想を据え置いたが、第1四半期の進捗率は売上高が36.6%、営業利益が97.7%、経常利益が99.2%、当期純利益が100.1%だった。コロナ禍からの回復などで通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して戻り高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月11日終値は1048円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64円83銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1127円14銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約595億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)