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JSPは調整一巡、22年3月期は需要回復で再上振れの可能性
- 2021/10/13 08:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーと位置付ける自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進している。22年3月期予想は下期をやや保守的に見込んでいるが、需要が回復基調であり、高付加価値製品の販売好調や、原燃料価格高騰に対する販売価格改定なども勘案すれば、再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は反発力の鈍い展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
21年3月期セグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業58%、その他5%、営業利益構成比(調整前)は押出事業41%、ビーズ事業57%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
なお米国子会社JSP International Groupの電子線架橋ポリエチレンシート事業について、需要拡大が見込めず生産効率改善も進展しないため撤退して会社清算(21年6月末)した。
■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進
長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
また21年4月公表の新中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。
基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。
なお21年9月には、労働施策総合推進法に基づいて、直近3事業年度の採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表した。18年度は49%、19年度は54%、20年度は41%だった。
■22年3月期は需要回復で再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(収益認識に関する企業会計基準第29号を適用、7月30日に上方修正)は、売上高が21年3月期比11.0%増の1140億円、営業利益が0.3%増の52億円、経常利益が2.2%減の54億円、親会社株主帰属当期純利益が19.3%増の36億円としている。配当予想は21年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)である。
第1四半期は、売上高が前年同期比8.7%増の269億82百万円、営業利益が71.1%増の15億67百万円、経常利益が87.1%増の15億58百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.0倍の10億96百万円だった。なお特別損失に韓国の連結子会社における「火災による損失」1億27百万円を計上した。
自動車分野を中心とする需要の回復、ピーブロックを中心とする高付加価値製品の販売好調などで増収、原燃料価格高騰の影響を吸収して大幅増益だった。セグメント別に見ると、押出事業は売上高が1.2%減の90億円で営業利益が53.5%増の6億74百万円、ビーズ事業は売上高が13.2%増の165億44百万円で営業利益が52.1%増の11億29百万円、その他は売上高が31.3%増の14億37百万円で営業利益が19百万円(前年同期は16百万円の赤字)だった。
第1四半期の好調を受けて、第2四半期累計および通期の連結業績予想を上方修正した。修正後の第2四半期累計予想は、売上高が前年同期比15.4%増の555億円、営業利益が2.2倍の28億円、経常利益が2.3倍の29億円、親会社株主帰属四半期純利益が2.1倍の19億円としている。
修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.7%、営業利益が30.1%、経常利益が28.9%である。下期をやや保守的に見込んでいるが、需要が回復基調であり、高付加価値製品の販売好調や、原燃料価格高騰に対する販売価格改定なども勘案すれば、再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株主優待は3月末対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は調整一巡
株価は反発力の鈍い展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。10月12日の終値は1604円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円77銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2767円26銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約504億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)