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川崎近海汽船は戻り試す、22年3月期は市況回復で再上振れの可能性
- 2021/10/13 08:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力としている。さらに再生可能エネルギー産業を重要な事業分野の一つに位置付けて、バイオマス関連輸送などへの取り組みも強化している。22年3月期は近海部門の市況回復効果で大幅増益予想としている。さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して9月の年初来高値圏から急反落の形となったが、利益確定売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■近海輸送と内航輸送が主力
石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、日本近海における海洋資源開発・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船事業(OSV部門)を展開している。
21年3月期売上高構成比は近海部門が26%、内航部門が71%、OSV部門が4%、その他が0%、営業利益構成比は近海部門が▲72%、内航部門が283%、OSV部門が▲111%、その他が0%だった。
収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。また季節要因として第1四半期は入渠費用が増える傾向がある。
なお20年12月には全社的なDX推進に向けてDX委員会を設置、21年1月には環境への対応に向けて次世代環境対応ワーキンググループを設置、21年4月には安全運航推進員会を環境・安全運航推進委員会に改称した。
■モーダルシフトも背景として収益力向上目指す
2020年度中期経営計画では、目標値に23年3月期売上高388億円(近海部門101億円、その他含む内航部門268億円、OSV部門19億円)、営業利益6億円(近海部門2億円の赤字、その他含む内航部門6億円、OSV部門2億円)、経常利益4億50百万円、親会社株主帰属当期純利益3億円を掲げている。
海上輸送を通じて社会への貢献に努めるとともに、収益力の向上とコスト削減を進めつつ、安定配当の継続を目指す。
近海部門(21年3月期末18隻、23年3月期末計画15隻)は、中期的に厳しい状況が予想されるため、効率配船や高コスト傭船の早期返却返船などによって船隊規模の適正化を図り、市況にあった船隊整備の継続、商圏の維持、コスト削減などで終始安定を目指す。バイオマス発電所用燃料の輸送は長期契約の獲得を目指す。
内航部門(21年3月期末20隻、23年3月期末計画21隻)は、陸上輸送から海上輸送への転換を図るモーダルシフトの拡大を念頭に置いて、顧客ニーズに沿った輸送サービスの提供で収益力向上を目指す。定期船輸送では新規貨物の獲得とコスト削減、不定期船輸送では石灰石および石炭の各専用船の安全運航、商圏の維持、新規案件の獲得を推進する。フェリー輸送では、大型新造船の積載能力を活かした貨物の開拓、2つのフェリー航路の効率的運営を推進する。
OSV部門(21年3月期末5隻、23年3月期末計画5隻)は、海洋資源開発への期待が高まる中、オフショア支援船事業の充実、洋上風力関連事業への参入で収益拡大を図るとともに、CCS(二酸化炭素回収・海底貯蔵)調査や資源探査などにも取り組む。
20年1月適用開始のSOx規制(船舶用燃料油の低硫黄化環境規制)については適切な対応に取り組んでいる。日本初のLNG燃料フェリー就航に向けては川崎汽船<9107>と共同で技術的検証を本格化している。21年6月には川崎汽船と共同で設立した洋上風力発電向け作業船事業会社ケイライン・ウインド・サービスが営業開始した。
さらに再生可能エネルギー産業を重要な事業分野の一つに位置付けて、バイオマス関連輸送などへの取り組みも強化している。21年9月には山口県下関市における長府バイオマス発電所プロジェクトに参画(石油資源開発、MOT総合研究所、東京エネシス、長府製作所、および同社の5社)すると発表した。本発電所向け燃料輸送を受託する。22年6月着工、25年1月運転開始予定である。
■22年3月期大幅増益予想、さらに再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(7月30日に上方修正)は、売上高が21年3月期比9.1%増の404億50百万円、営業利益が2.1倍の8億50百万円、経常利益が4.5倍の8億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が6億10百万円の黒字(21年3月期は1億12百万円の赤字)としている。第1四半期の状況を受けて第2四半期累計および通期の連結業績予想を上方修正した。配当予想は21年3月期と同額の100円(第2四半期末50円、期末50円)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.8%増の95億15百万円、営業利益が1億24百万円の赤字(前年同期は3億16百万円の赤字)、経常利益が1億10百万円の赤字(同3億31百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が52百万円の赤字(同1億27百万円の赤字)だった。
全体として赤字縮小した。内航部門は新型コロナ影響で0.6%増収にとどまり、燃料油価格高騰の影響で赤字化したが、近海部門が市況回復効果で25.7%増収となって黒字化した。OSV部門は42.3%減収で赤字拡大した。
修正後の通期予想は近海部門の収益改善が牽引し、従来の営業減益・小幅経常増益予想から一転して大幅営業・経常増益予想としている。当期純利益は前期計上の特別損失の剥落も寄与する。
近海部門は市況回復に伴う運賃や貸船料の増加で従来予想(売上高が5.3%増の100億円、営業利益が2億円の赤字)を大きく上回り、大幅に収益改善する見込みだ。内航部門は荷動きが堅調だが、燃料油価格高騰の影響で従来予想並み(売上高が3.3%増の270億円、営業利益が47.5%減の6億円)としている。OSV部門の従来予想は売上高が5.5%増の15億円、営業利益が1億50百万円の赤字の計画である。船隊整備や稼働率向上で赤字縮小の見込みとしている。
市況が回復基調であり、近海部門の収益改善で、さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。
■株価は戻り試す
株価は地合い悪化も影響して9月の年初来高値圏から急反落の形となったが、利益確定売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月12日の終値は3125円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS207円80銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS8987円27銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約92億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)