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建設技術研究所は上値試す、21年12月期は上振れの可能性
- 2021/10/14 08:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。グループ一体となった事業拡大戦略を推進している。10月16日開催の大阪府四条畷市「第3回スマートシティ推進フォーラム」では、名古屋大学と連携して自動運転車のデモンストレーションを行う。21年12月期は積極投資による費用増加などで減益予想としているが、防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化計画の推進で事業環境が良好であり、上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。株価は戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■総合建設コンサルタント大手
総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社化している。
20年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業75%、海外建設コンサルティング事業25%、営業利益(連結調整前)が国内建設コンサルティング事業99%、海外建設コンサルティング事業1%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。
■グループ一体となった事業拡大を推進
新たなCTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」を策定し、目標値としては2030年売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。
国内はインフラソリューショングループの実現に向けて、インフラ維持管理・更新や発注者支援などの事業プロセスの拡大、防災・減災や都市・建設などサービス・分野の拡大、民間など新たな顧客の掘り起こしなど市場の拡大を推進する。海外は開発途上国から先進国までを含めたグローバル展開を推進する。
21年3月には道路トンネル定期点検業務において、人力打音検査を代替え・定量化するレーザー打音検査装置を国内で初めて診断支援に活用した。また災害等に対して都市機能を維持・継続するための共助に係わる防災エリアマネジメントの手引きを策定した。
21年5月には、日本水環境学会COVID―19タスクフォースメンバーである金沢大学との共同研究契約に基づき、下水中の新型コロナウイルス遺伝子分析技術の実用化に成功した。これに伴って、新型コロナウイルス感染症拡大を早期に検知するための流行把握サービスの提供を開始した。
21年9月にはグループ会社の日総建、およびファインコラボレート研究所との3社間で業務提携した。既存業務での連携、新分野の創出、相互の人材交流を行う。またダム管理の負担を軽減するクラウド型ダム流入量予測およびダム運用支援情報のリアルタイム配信サービスを開始した。また、つくば市と、災害緊急対応時に避難指示発令など迅速かつ的確に意思決定を行うための情報共有ツールの開発に関する共同研究に連携して取り組む協定を締結した。
■21年12月期減益予想だが上振れの可能性
21年12月期の連結業績予想は、受注高が20年12月期比3.1%減の670億円、売上高が2.8%増の670億円、営業利益が3.6%減の49億円、経常利益が6.1%減の49億円、親会社株主帰属当期純利益が9.6%減の33億円としている。配当予想は20年12月期と同額の45円(期末一括)である。
セグメント別計画は国内の受注高が3.7%減の491億円、売上高が1.9%増の499億円、営業利益が3.6%減の48億50百万円、海外の受注高が1.4%減の179億円、売上高が5.5%増の171億円、営業利益が9.1%増の50百万円としている。国内は事業拡大に向けた積極投資に伴う費用増加で減益予想、海外は新型コロナ影響継続を想定するが効率化を推進して増益予想としている。
第2四半期累計は売上高が前年同期比9.8%増の352億22百万円、営業利益が34.2%増の35億65百万円、経常利益が33.7%増の36億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が31.1%増の23億55百万円だった。グループ全体の受注高は28.0%増の479億59百万円だった。
受注高、売上高、各利益とも第2四半期累計として過去最高だった。受注高は国内が16.7%増の353億69百万円で海外が75.9%増の125億90百万円、売上高は国内が3.3%増の257億90百万円で海外が32.1%増の94億32百万円、営業利益は国内が19.5%増の32億99百万円で海外が2億64百万円の黒字(前年同期は1億05百万円の赤字)だった。
国内は防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化計画の推進で順調だった。海外は東南アジアで建設技研インターナショナルが複数の大型案件を受注した。英国(Waterman)は公共部門が牽引した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高127億41百万円で営業利益が4億41百万円、第2四半期は売上高224億81百万円で営業利益31億24百万円だった。
通期予想は据え置いて、新型コロナ影響や積極投資による費用増加などで減益予想としている。ただし第2四半期累計が大幅増益であり、進捗率も受注高71.6%、売上高52.6%、営業利益72.8%、経常利益74.0%、純利益71.4%と高水準だった。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化計画の推進で事業環境が良好であり、通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。
■株価は上値試す
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分の上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認しており、9月24日開催の取締役会でプライム市場選択を決議した。東京証券取引所が定める所定のスケジュールに従って所定の手続を進める。
株価は上げ一服の形となったが戻り高値圏で堅調だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月13日の終値は2599円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS233円38銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想45円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS2393円36銭で算出)は約1.1倍、時価総額は約368億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)