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クリーク・アンド・リバー社は上値試す、22年2月期は再上振れの可能性
- 2021/10/18 08:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(東1)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業などを展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。22年2月期は増収増益・過去最高更新予想(9月30日に上方修正)としている。上期の超過達成分の一部を下期に事業投資として実行する見込みだが、通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上場来高値更新後に上げ一服の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開
クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、ライツマネジメント(知的財産の流通)事業を主力としている。
2022年2月期第2四半期末時点で、プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野および9の周辺サービスに展開し、プロフェッショナルクリエイター32万400人、クライアント4万1520社のネットワークを構築していることが強みだ。
新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)を展開している。
新規サービスとしては、米国C&R Globalが法務領域コンサルティングサービス、プロフェッショナルメディアが求人メディア運営、VR Japanが中国IDEALENS社製VRゴーグル販売、台湾インツミット社と合弁のIdrasysがAI予測ツール「Forecasting Experience」の機能強化や販売拡大を推進している。クレイテックワークスはゲームコンテンツ開発・運営を展開し、インタラクティブブレインズの3DCGアバター事業、VR事業、コンテンツ開発事業を譲り受けた。またジェイアール東日本企画と共同でデータドリブンマーケティング事業を推進するJDDLを設立している。
VR関連では法人向けVR・AR・MR関連サービスの導入実績が4000件を超え、がん治療の中核病院から遠隔医療への応用を見据えて手術の模様を遠隔地からリアルタイムに視聴する実証実験を受注している。ドローン関連(サイトテック社製YOROI)では、官公庁・民間企業での業務用途の活用が拡大している。21年6月にはセガとのゲーム著作物の利用に関する許諾契約を締結した。さらに5G時代のXR(VR・AR・MR)独自ソリューションや、VRアート作品などのNFT(非代替性トークン)への取り組みも開始している。
■日本クリエイティブ分野が拡大基調
21年2月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野9%、医療分野10%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益が日本クリエイティブ分野73%、韓国クリエイティブ分野▲2%、医療分野30%、会計・法曹分野4%、その他▲4%だった。
韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。またエコノミックインデックスは21年3月に株式を譲渡して連結から除外した。
収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。
■プロフェッショナル50分野構想
中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、目標数値を24年2月期売上高460億円、営業利益35億円、営業利益率7.6%としている。
基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。
20年7月にはVR・Web関連のGruneを子会社化、NHKおよび関連会社の番組制作・編集部門へのスタッフ派遣などを展開するウイングを子会社化、20年10月にはコンサルティング事業のきづきアーキテクトを子会社化した。
21年4月にはブロックチェーンエンターテインメント事業のDEA社(シンガポール)に出資した。NFT(非代替性トークン)への取り組みとして、DEA社のプラットフォームにコミックやゲーム等のコンテンツを提供する。将来的には自社でNFTプラットフォームを運営することも視野に入れているようだ。
事業シナジーを見越した資本参加も実行している。18年3月には東大発バイオベンチャーのCO2資源化研究所(UCDI)に出資し、水素と二酸化炭素から菌体を培養してBiofeeds(バイオフィーズ:飼料蛋白素材)やバイオ燃料の資源化を目指す研究開発に協力している。
21年8月には、EPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立した。
■22年2月期は増収増益・過去最高更新予想、さらに再上振れの可能性
22年2月期連結業績予想(9月30日に売上高、利益とも上方修正)は、売上高が21年2月期比10.7%増の413億円、営業利益が30.7%増の32億円、経常利益が28.7%増の32億円、そして親会社株主帰属当期純利益が18.4%増の19億50百万円としている。配当予想は据え置いて21年2月期比1円増配の17円(期末一括)としている。
セグメント別計画は、日本クリエイティブ分野の売上高が11%増の290億円で営業利益が27%増の22億50百万円、韓国クリエイティブ分野の売上高が7%増の35億円で営業利益が20百万円の黒字(21年2月期は49百万円の赤字)、医療分野の売上高が12%増の44億円で営業利益が24%増の9億円、会計・法曹分野の売上高が5%増の21億円で営業利益が9%増の1億10百万円、その他(9社)の売上高が13%増の25億円で営業利益が50百万円の赤字(同1億04百万円の赤字)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比14.0%増の210億35百万円、営業利益が48.2%増の21億57百万円、経常利益が47.3%増の21億73百万円、親会社株主帰属四半期純利益が45.4%増の14億06百万円だった。計画を上回る大幅増収増益となり、半期ベースで過去最高だった。
全セグメントが増収増益と順調だった。特に主力の日本クリエイティブ分野(売上高が16.3%増の144億83百万円、営業利益が59.2%増の13億01百万円)の好調が牽引した。売上面ではTV番組制作やゲーム関連を中心に伸長し、利益面では高採算案件の増加やDX化による生産性向上なども寄与した。医療分野(売上高が13.7%増の26億18百万円、営業利益が24.0%増の8億26百万円)も伸長した。医師紹介が好調で、ワクチン接種のスポット需要増加も寄与した。レジナビFairは新型コロナ影響で会場開催が困難だったが、オンライン開催に切り換えて開催(配信)回数と参加者が大幅に増加した。その他は売上面で9社のうち5社が増収、利益面で9社のうち7社の収益が改善した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高105億99百万円で営業利益12億30百万円、第2四半期は売上高104億36百万円で営業利益9億27百万円だった。
通期も日本クリエイティブ分野の好調が牽引して大幅増収増益・過去最高更新予想としている。なお下期の利益予想を下方修正した形だが、第2四半期累計の超過分の一部を、クリエイターネットワーク拡大に向けたプロモーション強化など、主に既存事業の伸長を目的とする広告宣伝費等の事業投資(合計約2億円)として実行する見込みとしている。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高50.9%、営業利益67.4%、経常利益67.9%、純利益72.1%である。医療分野の収益が上期偏重となる季節特性や、下期の事業投資を考慮しても順調な水準であり、通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
22年4月4日に移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果としてプライム市場の上場維持基準に適合していることを確認しており、21年9月30日開催の取締役会でプライム市場選択を決議した。今後、所定の手続を進める。
株価は上場来高値更新後に上げ一服となってやや乱高下する形だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月15日の終値は1969円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS87円48銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約0.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS455円87銭で算出)は約4.3倍、そして時価総額は約453億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)