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三洋貿易は調整一巡、22年9月期も収益拡大基調
- 2021/10/20 08:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品などを主力とする専門商社である。バイオマス・地熱・海洋など再生エネルギー関連への取り組みも強化している。21年9月期は需要回復基調で大幅増益予想としている。当面は部品不足による自動車減産が懸念材料となりそうだが、影響は一時的で22年9月期も収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお11月5日に21年9月期決算発表を予定している。
■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開し、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。メーカー並みの技術サポート力が特徴だ。海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。
自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。
20年9月期のセグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品が24%、機械資材が60%、海外現地法人が15%、その他が1%だった。収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い特性がある。
M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化、19年10月畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化、19年11月英国OXIS社と業務提携、20年3月食品添加物を中心とする化学品輸入販売商社のNKSコーポレーションを子会社化した。
20年10月には連結子会社のアズロと非連結子会社のNKSコーポレーションを合併(新社名は三洋ライフマテリアル)、20年11月には健康食品原料や化粧品原料を中心とする化学品輸出専門商社のグローバル・トレーディングを子会社化、20年12月には非連結子会社の三洋テクノスが研究機器向け試験片および部品製造のテストマテリアルズを子会社化、21年4月には子会社のグローバル・トレーディングを吸収合併した。
21年4月にはグループの事業の選択・集中の観点から、産業用合成ゴム材料製造の非連結子会社の三洋東和(上海)の全持分85.9%を譲渡した。
■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」
長期経営計画「VISION2023」では、目標値を23年9月期経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。
経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げ、基本戦略として企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進に取り組む。
注力市場はモビリティ(あらゆるモビリティ)、ファインケミカル(ゴム、塗料、インキ、コーティング)、サスティナビリティ(バイオマス・地熱・海洋などの再生エネルギー、畜産飼料)、ライフサイエンス(在宅医療、化粧品、食品、科学機器、電材など)としている。今後の成長ドライバーとしては木質バイオマス関連、自動車関連、および海外への展開を加速する方針だ。
木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。18年8月には大日本コンサルタント<9797>と合弁で、静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立した。
自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。また海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。
さらに、事業部の垣根を越え、規模が大きく有望なビジネスを優先的に開発する社長直轄の事業開発室を創設し、20年9月期時点で新規プロジェクト44件を選定している。
■21年9月期大幅増益予想、22年9月期も収益拡大基調
21年9月期連結業績予想(5月11日に売上高、利益を上方修正)は、売上高が20年9月期比15.7%増の880億円、営業利益が25.2%増の60億円、経常利益が19.5%増の63億円、親会社株主帰属当期純利益が39.4%増の42億円としている。配当予想(5月11日に第2四半期末50銭上方修正)は50銭増配の38円(第2四半期末19円、期末19円)である。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比19.3%増の684億25百万円、営業利益が33.0%増の50億83百万円、経常利益が33.8%増の56億28百万円、親会社株主帰属四半期純利益が38.3%増の37億91百万円だった。自動車関連を中心に需要が好調に推移して大幅増収増益だった。
化成品は8.2%増収で45.7%営業増益だった。ゴム関連商品は供給ひっ迫と価格高騰が深刻化したが、自動車をはじめ全ての産業向けで需要が拡大した。化学品関連商品はUVインキ原材料などが好調だった。利益面では16年に買収したソートののれん償却終了も寄与した。
機械資材は15.2%増収で29.1%営業増益だった。産業資材関連は主力の自動車向けシート周辺部材が好調だった。機械・環境関連商品は北海道当別町の大型バイオマス案件が実現した。科学機器関連商品は粒子分散および耐候性試験機が堅調だった。
海外現地法人は45.4%増収で38.0%営業増益だった。米国は中国製自動車部品の追加関税や販管費増加で微増益にとどまったが、中国(上海)で自動車部品が大幅伸長した。タイやベトナムも順調だった。なおインドネシアの子会社を第1四半期から新規連結している。
四半期別に見ると第1四半期は売上高216億09百万円で営業利益17億21百万円、第2四半期は売上高239億16百万円で営業利益19億13百万円、第3四半期は売上高229億円で営業利益14億49百万円だった。
新型コロナの影響や半導体不足の影響など不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は売上高が77.8%、営業利益が84.7%、経常利益が89.3%、当期純利益が90.3%と高水準だった。通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。当面は部品不足による自動車減産が懸念材料となりそうだが、影響は一時的で22年9月期も収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する第一次判定結果としてプライム市場適合を確認し、21年7月12日開催の取締役会においてプライム市場選択申請に係る手続きに入る旨の決議を行っている。
株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。10月19日の終値は1143円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS146円59銭で算出)は約8倍、前期推定配当利回り(会社予想の38円で算出)は約3.3%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1069円41銭で算出)は約1.1倍、時価総額は約332億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)