【株式評論家の視点】冨士ダイスは上場後堅調に推移、業績好調で利回り3%、公募増資打ち返し一巡待って急伸も

株式評論家の視点

冨士ダイス<6167>(東2)は、6月25日に東証2部に上場。超硬工具の耐摩耗分野でトップメーカーで、FUJILLOY製品(超硬工具、超硬合金他)の提供を通じて、金属加工、精密加工、機械加工時の工具や金型で高い評価を得ている。

超硬製工具類は、設備更新を背景に鉄鋼向けのロールの売上高が増加し、超高圧発生用工具についても在庫補充や工具需要の高まりによって売上高が増加するなど、好調に推移している。

超硬製金型類は、自動車部品生産用金型売上高が増加し、製缶金型などの売上高が堅調に推移しているが、デジタルカメラの生産減少に伴って光学素子成型用金型の売上高は減少している。その他の超硬製品は、鉄鋼関連および海外の自動車部品向け各種部品の売上高が増加。超硬以外の製品では、積極的に拡販に取り組み自動車部品用生産用の鋼製品(鍛造金型)の売上高が増加しているほか、鋼製品(飲料缶生産用金型)の売上高が設備増強による需要増に対応し増加。更には加工用工具のダイヤモンド研削砥石の売上高が海外のスマートフォン関連やハードディスク向けで増加している。

 前2015年3月期業績実績は、売上高が162億5100万円(前の期比8.0%増)、営業利益が10億8800万円(同6.7%増)、経常利益が11億3000万円(同3.9%増)、純利益が7億6700万円(同4.8%増)に着地。年間配当は19.2円を実施。

今16年3月期業績予想は、売上高が168億9700万円(前期比4.0%増)、営業利益が11億4800万円(同5.5%増)、経常利益が12億0100万円(同6.3%増)、純利益が8億8000万円(同14.7%増)と続伸を見込んでいる。年間配当は、22円(同2.8円)を予定している。

6月25日の上場初日は、公開価格の530円を270円(50.9%)上回る800円で初値をつけた後、モミ合っている。日本銀行による金融緩和を発端に進んだ円安を背景に、国内製造業の価格競争力の回復、収益改善による設備投資需要の高まりや生産拠点の国内回帰等により、超硬工具の需要が高まっている。

超硬工具協会の調査によれば、前15年3月期の耐摩耗工具の出荷額は389億円まで拡大しており、同社は、今16年3月期以降も微増ではあるが、拡大が継続すると予想している。超硬製工具類では、顧客の大型パイプ生産ライン増設に伴う大型のダイスの販売増加、及び海外需要の復調による刃物類の販売増加等が見込まれているほか、超硬製金型類では、製缶金型については前期の特需がなくなるため減少を見込むものの、顧客の海外工場での需要増による粉末成形用金型の販売増加、及び同じく海外での生産拡大が続く自動車部品生産用金型の販売増加等を見込む。また、その他の超硬製品では、海外子会社が現地で販売する超硬合金チップや、産業機械向けの部品などの販売増加等を見込んでおり、今期計画は達成できる見通し。

PBR倍0.86倍と割り負け、配当性向50%目途で株主還元率は高く、配当利回り約3%と利回り妙味が増すことから、評価余地は拡がる。公募株の売りが一巡すれば、上昇基調を強めそうだ。(株式評論家・信濃川)

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