アスカネットは底値圏、22年4月期営業増益予想、さらに上振れ余地

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 アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、空中結像ASKA3Dプレートの量産化・拡販も推進している。22年4月期は新型コロナ影響が和らいで増収・営業増益予想としている。緊急事態宣言解除で期後半に向けて需要が回復ペースを速めることも予想され、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。収益回復基調を期待したい。株価は6月の年初来安値に接近しているがほぼ底値圏だろう。調整一巡して出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中結像AIも推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力として、非接触ニーズでも注目される空中結像ASKA3Dプレートの量産化・拡販を推進している。

 セグメント区分(22年3月期から名称変更)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業(従来のメモリアルデザインサービス事業)、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業(同パーソナルパブリッシングサービス事業)、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業(同エアリアルイメージング事業)としている。

 21年4月期のセグメント別構成比は、売上高がフューネラル事業43.2%、フォトブック事業54.7%、空中ディスプレイ事業2.1%、営業利益(調整前)がフューネラル事業75.7%、フォトブック事業57.8%、空中ディスプレイ事業▲33.4%だった。

 フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 フューネラル事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。92年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。21年4月期末のハード設置件数は2578ヶ所、21年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約36.7万枚、電照焼増枚数が約12.3万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約30%(1位)である。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加、20年11月には故人を偲ぶ「inori」の提供を開始した。21年1月には「tsunagoo」による訃報作成数が累計5万件を突破した。

 21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破した。全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透したことになる。

 21年8月には、コロナ禍の影響で報告が遅くなりがちな葬儀の報告をスムーズに行えるサービス「tsunagoo AFTER」をリリースした。

■フォトブック事業はOEMも拡大

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力として、NTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。

 21年1月には、スマートフォンやパソコンから簡単に出産報告や出産お祝い金の受け渡しができるWebサービスの「e-tayori(いい・たより)」(特許出願中)を開始した。コロナ禍でウエディング関連が厳しい環境のため、スタジオ写真向けや建築写真向け商品の拡販にも注力している。

 なお21年4月期末時点で、約4720社の写真館向けなどに年間約40万冊(OEM除く)を提供している。マイブック会員数は約28.1万人となった。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレートの本格量産目指す

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。21年7月には、ENEOSが実施する非接触セルフ給油機の実証実験にASKA3Dプレートが採用された。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として、開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートの従来よりも大きい250mm角サイズを開発し、21年4月からサンプル販売を開始した。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。

 生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。

 営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。ドバイの代理店Easy Way社は、10月17日~21日にドバイで開催された「GITEX Global2021」に出展した。

■22年4月期増収・営業増益予想、さらに上振れ余地

 22年4月期の業績(非連結)予想は、売上高が21年4月期比8.6%増の62億70百万円、営業利益が2.7%増の2億85百万円、経常利益が13.9%減の2億85百万円、当期純利益が11.3%減の2億円としている。配当予想は21年4月期と同額の7円(期末一括)である。

 第1四半期は売上高が前年同期比比16.4%増の14億66百万円、営業利益が42百万円の黒字(前年同期は40百万円の赤字)、経常利益が42百万円の黒字(同0百万円)、四半期純利益が28百万円の黒字(同1百万円の赤字)だった。新型コロナ影響が和らいで2桁増収となり、営業黒字転換した。

 葬儀関連のフューネラル事業は14.5%増収で32.5%増益だった。葬儀施行件数が回復傾向となり、遺影写真加工収入や葬儀演出ツールなどの売上も回復した。写真集関連のフォトブック事業は16.9%増収で2.5倍増益だった。一般消費者向けは旅行・イベント自粛で厳しい状況が続いているが、プロ写真家向けのウエディング関連において新型コロナ影響がやや和らいだ。空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業は41.3%増収だが赤字拡大した。技術開発センター本格稼働に伴って研究開発費が増加した。

 通期のセグメント別の売上高計画は、フューネラル事業が3.1%増収、フォトブック事業が7.7%増収、空中ディスプレイ事業(内部売上消去後)が2.4倍増収としている。フューネラル事業では葬儀の小型化が継続するが、葬儀社向けITサービス「tsunagoo」の展開を加速させる。フォトブック事業では、小型化ウエディング・フォトウエディングに対応したサービスやWebサービス「e-tayori」の展開を推進する。空中ディスプレイ事業では、大型化技術の醸成や海外代理店との連携強化を推進する。

 全体として、上期はコロナ禍で特にフォトブック事業で厳しい環境が続くが、下期は影響が和らぎ、通期ベースで増収の計画である。利益面では上期の稼働率低下、減価償却費や研究開発費の増加などがマイナス要因となるが、増収効果で吸収して通期営業増益の見込みとしている。経常利益と当期純利益は前期計上した保険解約益の剥落で減益予想としている。

 21年9月には、同社が実施したアンケート調査で、新型コロナを理由に結婚式をキャンセルした人の6割以上が、今後1年以内に結婚式・披露宴を挙げる予定があると回答したとリリースしている。新型コロナ影響が和らいで事業環境が好転に向かいそうだ。

 第1四半期の進捗率は売上高が23.4%、営業利益が14.7%である。やや低水準の形だが、下期の構成比が高い収益特性を考慮すれば順調と言えるだろう。緊急事態宣言解除で期後半に向けて需要が回復ペースを速めることも予想され、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。21年2月には、利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。

■株価は底値圏

 株価は軟調展開で6月の年初来安値に接近しているがほぼ底値圏だろう。調整一巡して出直りを期待したい。10月21日の終値は814円、今期予想PER(会社予想のEPS11円87銭で算出)は約69倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.9%、前期実績PBR(前期実績のBPS345円75銭で算出)は約2.4倍、時価総額は約142億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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