【どう見るこの相場】東証の市場再編の「メークドラマ」は不適合の割安銘柄こそアタック余地

どう見るこの相場

 「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」とは、かつてのベテラン党人政治家の至言で、いまだに広く言い伝えられている。衆議院議員選挙も、10月31日の投開票日を1週間後に控え、各立候補者が、襟に金バッチをつけられるかただの人に終わるかデッドヒートの真っ最中である。望むらくは、9月相場、10月相場と続いた「政治月間」のラストでまたまたの一波乱は願い下げでスンナリとイベントを通過して、11月相場が、折からの四半期決算発表の本格化と軌を一つにして米国市場追随の「業績月間」に移行してくれることを祈るばかりである。

 上場会社も、いままさに投資適格会社か不適格会社かを選別する終盤戦に差し掛かっているといっても過言ではない。来年4月適用の東証の市場区分再編に向け、この12月までに各上場会社が上場市場を選択して上場申請をしなければならないからである。同再編は、現在の東証1部・2部市場、ジャスダック(JQ)市場、マザーズ(東マ)市場の4市場をプレミアム(P)市場、スタンダード(S)市場、グロース(G)市場の3市場にクラス分け、ランク付けするものだ。最上位市場はP市場で、あたかも襟に金バッチのように「P市場銘柄に非らずば上場会社に非ず」との共通認識も強まっている。

 もちろんこの3市場には、各市場ごとに流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、売買代金の上場基準があり、その基準への適合・不適合によって選択の幅も狭まる。東証は、今年7月9日に全上場会社に第1次判定結果を通知しており、東証第1部銘柄2189社の3割に当たる664社が、P市場の上場基準に不適合であると明らかにした。

 これは事件であり、「メークドラマ」の風雲を呼ぶものでもある。ベストな市場再編は、東証1部銘柄がP市場、東証2部銘柄がS市場、JQ銘柄や東マ銘柄がS市場、G市場への横滑りとみられていたのが、3割もの東証1部銘柄のP市場上場に待ったが掛けられ、下位市場上場の格下げも懸念されたからだ。またS・G市場でも上場基準に不適合な東証2部株、新興市場株が続出している。

 逆に上場基準に適合さえすれば、格上げも可能なわけで、「メークドラマ」の一番星は、市場再編が発表されて以来、東証2部や新興市場からP市場へグレードアップする銘柄で、下馬評がしきりであった。ただ下馬評の高かったハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>(JQS)が、早々の9月21日にS市場選択を公表したことで拍子抜けとなった。それでもこの10月末~11月の決算発表に合わせてグレードアップ銘柄が出てくるのか要注目とはなるが、熱気はやや後退した感触ではある。

 となると「メークドラマ」銘柄は、不適合の烙印を押され株価的にアゲインストな銘柄になる。不適合銘柄でも、基準適合に向け適合計画書を作成・提出して認められれば、経過措置としてその上場市場への上場が可能となるからだ。適合計画書には、上場基準クリアのために増配や自己株式取得の株主還元策や認知度向上に向けたIR(株主広報)の積極化、親会社や大株主、取引先からの株式売り出し、さらには企業価値をアピールする中期経営計画などが盛り込まれ、株高政策の発動が期待され、この効果が早期に株価に反映されるはずだからだ。

 現に不適合銘柄のなかには、不適合と増配や業績上方修正、中期経営計画などをセットで発表し、本気度と実現可能性を示唆した銘柄も相次いだ。そこで今週の当コラムは、最下位市場のG市場も含めて本気度銘柄に加え、株価的に割安な銘柄にこそ「メークドラマ」の可能性が期待でき、アタック余地が生じるとして注目することとした。このほか東証1部銘柄にもかかわらず敢えてS市場上場を選択した割安株なども、マークは怠れない。

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