トーセは調整一巡、22年8月期大幅増益予想

トーセ<4728>(東1)は家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手である。21年8月期は開発改修対応費用増加などで減益だったが、各利益とも従来予想を上回って着地した。22年8月期は一時費用の一巡も寄与して大幅増益予想としている。新型ゲーム機や5G対応などでゲーム市場の活性化が予想されており、先行投資も奏功して収益拡大を期待したい。株価は徐々に水準を切り下げる形でやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手

 家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手で、デジタルエンタテインメント事業(ゲームソフト関連、モバイルコンテンツ関連、パチンコ・パチスロ関連などデジタルコンテンツの企画・開発・運営の受託)、その他事業(SI事業、家庭用カラオケ楽曲配信事業、新規事業の創出)を展開している。

 21年8月期の売上高構成比はデジタルエンタテインメント事業が92%、その他事業が8%、営業利益構成比はデジタルエンタテインメント事業が84%、その他事業が16%だった。

 収益は開発業務の進行に合わせて受け取る開発売上、コンテンツ配信後の運営に伴う運営売上、コンテンツ販売数量に基づくロイヤリティ売上である。大型案件の開発受託の有無や、開発完了・売上計上時期などによって変動しやすい特性がある。

 複雑化・多様化するゲーム市場において、豊富なパイプライン展開を可能とする多彩な技術ポートフォリオ、長年の実績とノウハウに基づく信用力、開発売上とストック型の運営売上を持つ安定的なビジネスモデルを特徴としている。

 なお、こどもたちの命を守りたいと願う企業・団体が一体となり、京都のこどもの交通事故防止を目的に生まれた「京のこどもを守るプロジェクト」に協賛している。21年度も、交通安全グッズとしてスウェーデン生まれのリフレクター(反射板)「グリミス」を京都市交通対策協議会に寄付した上で、9月1日「こどもの交通事故防止推進日」を皮切りに、京都府内のさまざまな場所で配布した。21年1月には令和2年度京都市輝く地域企業表彰「地域企業輝き賞」および「地域企業輝き特別賞」を受賞している。

■開発体制強化を推進

 市場に向けた重点施策として、大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化、成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みを推進し、人事・教育・採用の改革を継続する方針だ。

 大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化では、各スタジオが獲得した開発技術やノウハウの全社展開、プロジェクト運営の品質向上、データ分析チームの強化を推進する。

 成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みでは、ゲーム開発とビジネス系SIの技術の連携を強化して、デジタル社会に対応した新規事業やゲームに限らないエンタテインメント事業に挑戦する。

 人事・教育・採用の改革では、職場環境整備や人材教育など積極的な人材投資を継続して実行する。

■22年8月期大幅増益予想

 21年8月期連結業績は売上高が20年8月期比5.8%増の59億60百万円、営業利益が27.1%減の2億66百万円、経常利益が26.5%減の2億84百万円、親会社株主帰属当期純利益が34.8%減の1億48百万円だった。前期比では減益だったが、原価・販管費の抑制なども寄与して各利益とも従来予想を上回って着地した。配当は20年8月期と同額の25円(第2四半期末12円50銭、期末12円50銭)とした。

 デジタルエンタテインメント事業は、売上高が10.6%増の54億78百万円で営業利益が28.8%減の2億23百万円だった。なお売上構成比はゲームソフト関連が58.3%、モバイルコンテンツ関連が39.4%、パチンコ・パチスロ関連が2.3%だった。

 家庭用ゲームソフトの大型案件「SCARLET NEXUS」の開発完了、複数の家庭用ゲームソフト大型案件の顧客からの仕様追加などで増収だが、スマートフォン向けゲーム開発案件において開発中盤まで実施した作業の成果物を改修する必要が生じ、改修対応への費用が発生して減益だった。新型コロナ影響の長期化で感染予防対策費用が想定以上だったことも影響した。

 その他事業は売上高が29.6%減の4億81百万円で営業利益が16.7%減の43百万円だった。家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が伸長したが、SI事業の前年の大型案件の反動が影響した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高7億74百万円で営業利益1億11百万円の赤字、第2四半期は売上高10億64百万円で営業利益26百万円の黒字、第3四半期は売上高23億61百万円で営業利益1億93百万円の黒字、第4四半期は売上高17億61百万円で営業利益1億58百万円だった。

 22年8月期連結業績予想は売上高が21年8月期比4.7%増の62億42百万円、営業利益が80.3%増の4億80百万円、経常利益が71.7%増の4億88百万円、親会社株主帰属当期純利益が93.0%増の2億86百万円としている。配当予想は21年8月期と同額の25円(第2四半期末12円50銭、期末12円50銭)としている。

 売上高計画は、デジタルエンタテインメント事業が7.2%増の58億70百万円(売上構成比はゲームソフト関連70.0%、モバイルコンテンツ関連29.7%、パチンコ・パチスロ関連0.2%)で、その他事業が22.6%減の3億72百万円としている。デジタルエンタテインメント事業では家庭用ゲームソフト開発案件の需要が高水準に推移する見込みだ。その他事業は家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が堅調だが、新規事業模索の活動を進めるため減収見込みとしている。

 なお収益認識基準を変更(21年8月期までは一部を除いて工事完成基準で開発検収完了時に収益認識、22年8月期からは工事進行基準で開発業務の進捗に応じて収益認識)するが、21年3月以降に進行していた大型案件については工事進行基準によって収益を認識していたため、収益認識基準変更による22年8月期業績への影響は無いとしている。

 利益面は増収効果に加えて、前期発生した開発改修対応費用や新型コロナ感染予防対策費用の一巡、開発体制の充実・強化なども寄与して大幅増益予想としている。新型ゲーム機や5G対応などでゲーム市場の活性化が予想されており、先行投資も奏功して収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は徐々に水準を切り下げる形でやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。10月26日の終値は779円で、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS790円51銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約60億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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