【どう見るこの相場】衆議院選挙の自民党の勝ち方は信玄公流の「五分勝ち」か?それとも「六分勝ち」「8分勝ち」なのか?

■「十分勝ち」の海運株をフォローする舶用エンジン株など周辺銘柄に「五分勝ち」方程式

 泉下の武田信玄公も、ホッとされておられるのではないだろうか?昨31日に投開票された衆議院議員選挙のことである。自民党は、絶対安定多数を獲得したものの、現職の甘利明幹事長が落選するなど公示前より議席数を減らした。信玄公は、「戦に勝つということは五分を上」と戒めている。衆議院選挙の自民党の勝ち方が、信玄公流の「五分勝ち」なのか、それとも「六分勝ち」なのか「8分勝ち」なのか判断の分かれるところだろう。しかしこれが「十分勝ち」の完勝とされると、信玄公はむしろ敵を侮り驕りが生じるばかりで、「十分は下」としているだけに、それこそ「一強政治」の再現にもなり兼ねない。今後のマーケットの反応が注目される。

 信玄公の遺訓を兜町流に解釈すれば、「十分勝ち」は、勝った取ったと有頂天になって、ユーフォリオ(熱狂的陶酔感)状態のなかリターンの最大化一筋でリスクが最大化する紙一重の陥穽が待ち構えていることを教えてくれる。対して「五分勝ち」は、いわゆる相場格言でいう「天井売らず底買わず」とデフェンシブで、高望みはせずミドルリスク・ミドルリターンにとどめる投資行動の正当性の道標ともなる。

 この勝利の方程式は、そのまま株式相場での銘柄選別や投資スタンスの選択にも応用可能となる。まず「十分勝ち」か「五分勝ち」銘柄かの見極めである。2021年相場は、まだ2カ月を残してちょっと早いが、年内相場の「十分勝ち」の完勝銘柄を総括すれば、海運株を有力候補とするのに異論は少ないだろう。とにかく海運大手3社の業績推移は半端でなく、前週末29日の前引け後には商船三井<9104>(東1)が、3回目の今3月期の上方修正と期末配当の増配を発表し、大手海運3社が買い気配から始まり商いを伴って急伸した。11月4日に残りの日本郵船<9101>(東1)、川崎汽船<9107>(東1)も四半期業績の発表を予定しており、川崎汽船の復配期待も含めほぼ間違いなく商船三井を追随するとみられている。

 しかもこの驚異的な業績推移は、コンテナ船の荷動き増・運賃高騰を背景に昨年8月の前期業績の1回目の上方修正以来、すでに1年3カ月も続く連戦連勝で、株価は、今年9月に1万円~1万1000円台へ駆け上がって上場来高値を更新し、年初来の上昇率も4倍超の大化けをしている。足元の株価は、信玄公の遺訓通りにリターンが最大化すればリスクも最大化して年初来高値から約3割下の水準でもみ合っており、業績の再々上方修正、増配とともに「十分勝ち」をもう一度試すことになるか見物となる。

 では「五分勝ち」銘柄はどうか?これは掃いて捨てるほど多いが、「十分勝ち」の海運株の周辺でも見受けられる。例えば舶用エンジン株のジャパンエンジンコーポレーション<6016>(東2)である。同社株は、前週27日に株価が152円高と急伸して東証第2部の値上がり率ランキングのトップに躍り出た。前日26日にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業の公募採択を受けて日本郵船などと5社で「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」や川崎重工業<7012>(東1)などと「舶用水素エンジンの開発」を開始するなどと発表したことが直接のキッカケとなった。その後、株価は前週末に掛けて続落したが、同社にはこのほか環境規制強化に伴う尿素還元脱硝装置の搭載船舶が増加しコンテナ船の世界的な建造ブームのなかで主機(エンジン)の特需も期待されるなど、綱渡りではなく一歩、一歩の「五分勝ち」の環境は整っているとみられるのである。

 同社株を含めて舶用エンジン株は、業績も堅調に推移し、海運大手3社のPER1倍~2倍、配当利回り7%~8%には及ばないものの、PER評価が1ケタ台、PBRが1倍以下と割り負けている銘柄も多い。前週末29日の米国市場で主要3株価指数が揃って過去最高値を更新したなかで、「五分勝ち」とはいかにも控え目過ぎるかもしれない。しかしだからこそ逆に信玄公の遺訓に敬意を払うことも一法となるはずでもある。舶用エンジン株と横一線の舶用機器株、さらにコンテナ船荷動きの活発化、運賃急騰で業績が上ぶれ方向にある海上輸送系のフォワーダー株を含めた海運周辺株をマークするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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