クレスコは上値試す、22年3月期2Q累計が計画を上回る大幅増益で通期も上振れの可能性

 クレスコ<4674>(東1)は、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力として、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。22年3月期はコロナ禍の影響が和らいで顧客のIT投資が順調に回復し、生産性向上も寄与して増収増益予・増配予想としている。第2四半期累計は計画を上回る大幅増益だった。不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、受注が増加基調であり、通期も上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は年初来高値を更新する場面があった。利益確定売りで一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力として、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。22年3月期からセグメント区分を、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)に変更した。

 なお21年3月期のセグメント別構成比は、売上高がソフトウェア開発事業83%(金融・保険分野30%、公共・サービス分野21%、流通・その他分野32%)、組込型ソフトウェア開発事業17%(通信システム分野1%、カーエレクトロニクス分野7%、情報家電等・その他分野8%)、その他事業(商品・製品販売等)0%、営業利益構成比(連結調整前)はソフトウェア開発事業76%、組込型ソフトウェア開発事業24%、その他▲0%だった。

 収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。

■働き方改革や健康経営を推進

 中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略として、デジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略として、ITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。

 20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。

 21年3月には、経済産業省の健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2021」に選定された。21年6月には、新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。また11月10日には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得したと発表している。

■M&Aや自社オリジナル製品でデジタルソリューションを拡大

 デジタルソリューションの拡大に向けてM&Aも活用している。20年2月に北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にシステムインテグレーターのエニシアスを子会社化、21年7月には組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化した。

 オリジナル製品・サービスでは、IoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。21年7月にはCreageをマイクロソフトのAzure対応にバージョンアップした。

 21年8月には、東京都教育委員会および一般財団法人東京学校支援機構(TEPRO)と協定を締結して都内の公立小中学校のデジタル活用支援に参画した。また、画像処理AI学習データ作成時のアノテーション(データに対して関連する情報を付加すること)作業負荷を軽減する手法の特許を取得した。

 21年9月には、子会社のクリエイティブジャパンが、大学・高専・研究所での研究・開発用として、低価格の「ELTRESアドオンIoT開発キット」の提供を開始した。コロナ過で厳しい研究・教育環境への貢献でIoT普及を推進する。

■22年3月期2Q累計大幅増益と順調、通期上振れの可能性

 22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用、損益への影響なし)は、売上高が21年3月期比6.8%増の424億円、営業利益が10.5%増の38億50百万円、経常利益が2.4%増の42億円、親会社株主帰属当期純利益が8.2%増の28億50百万円としている。配当予想は2円増配の40円(第2四半期末20円、期末20円)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比9.7%増の210億61百万円、営業利益が47.6%増の20億17百万円、経常利益が20.5%増の22億23百万円、親会社株主帰属四半期純利益が22.8%増の16億06百万円だった。

 受注が好調に推移(全社受注高は22.2%増の210億61百万円)した。コロナ禍でダメージを受けた業界(旅行、空輸など)からの受注も徐々に回復傾向となった。さらに生産性向上や前期の不採算プロジェクトの解消なども寄与して計画を上回る大幅増益だった。営業利益率は2.5ポイント上昇して9.6%となり、中期経営計画目標値の10.0%に接近した。なお営業外収益では前期に2億76百万円計上したデリバティブ評価益が5百万円に減少した。また特別利益に投資有価証券売却益1億72百万円を計上(前期は1億47百万円計上)した。

 ITサービス事業(22年3月期からセグメント区分変更、前年比は組替後)は、売上高が8.4%増の202億84百万円(エンタープライズが8.3%増の89億49百万円、金融が8.8%増の65億23百万円、製造が8.1%増の47億94百万円)で、営業利益(全社費用等調整前)が34.6%増の26億66百万円だった。エンタープライズは人材紹介・派遣、運輸、旅行・ホテルからの受注が回復、金融は保険・その他が増加、製造は機械・エレクトロニクスが増加した。デジタルソリューション事業は、売上高が55.8%増の7億93百万円で営業利益が2.2倍の28百万円だった。クラウド関連やロボティクス関連のソリューションが増加した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が98億70百万円で営業利益が7億99百万円、第2四半期は売上高が111億91百万円で営業利益が12億18百万円だった。

 通期も顧客のIT投資が順調に回復して増収増益予想としている。第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が52.4%、経常利益が52.9%、親会社株主帰属当期純利益が56.4%と概ね順調だった。不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、受注が増加基調であり、顧客の予算執行時期の関係で下期の構成比が高い特性があることも勘案すれば、通期も上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は第2四半期累計の大幅増益を評価して年初来高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りで一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。11月19日の終値は2055円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円54銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS926円96銭で算出)は約2.2倍、時価総額は約473億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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