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朝日ラバーは煮詰まり感、22年3月期2Q累計が計画超で通期再上振れの可能性
- 2021/11/25 08:48
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQ)は、自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の拡大も推進している。22年3月期は需要回復して大幅増収増益予想(8月6日に上方修正)としている。第2四半期累計は計画を上回る大幅増収・黒字転換だった。通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は小幅レンジでモミ合う展開だが煮詰まり感を強めている。調整一巡して上放れを期待したい。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。
21年3月期のセグメント別売上構成比は工業用ゴム事業が82%、医療・衛生用ゴム事業が18%、営業利益構成比(調整前)は工業用ゴム事業が52%、医療・衛生用ゴム事業が48%だった。また主要製品の売上高は、ASA COLOR LEDが27億12百万円、医療用ゴム製品が11億38百万円、卓球ラケット用ラバーが3億09百万円、RFIDタグ用ゴム製品が4億76百万円だった。
■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信
2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。
中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。
そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円としている。
光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。
なお21年3月期の中期事業分野別の売上高は、光学事業が28億90百万円、医療・ライフサイエンス事業が12億06百万円、機能事業が17億59百万円、通信事業が6億31百万円だった。
技術開発では、簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LED、超親水性シリコーンゴム、ウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムなどの開発を推進している。
20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。
20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術を開発したと発表している。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。
また20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。
21年8月には「サステナビリティビジョン2030」を策定した。SDGsへの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献する。
■22年3月期2Q累計黒字転換、通期は再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用だが利益への影響軽微、8月6日に上方修正)は、売上高が21年3月期比11.8%増の72億52百万円、営業利益が3億21百万円の黒字(21年3月期は92百万円の赤字)、経常利益が3億11百万円の黒字(同18百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が2.1倍の2億36百万円としている。配当予想は10円増配の20円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比27.5%増の36億32百万円、営業利益が1億76百万円の黒字(前年同期は1億79百万円の赤字)、経常利益が1億78百万円の黒字(同1億28百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億35百万円の黒字(同7百万円の黒字)だった。収益認識基準適用の影響額として、売上高と売上原価がそれぞれ51百万円減少したが、利益への影響はなかった。
車載用ゴム製品の需要が回復して大幅増収(国内が24.5%増の27億62百万円、海外が38.0%増の8億69百万円)となり、販管費抑制も寄与して各利益とも黒字転換した。売上総利益率は7.4ポイント上昇、販管費比率は3.7ポイント低下した。従来予想(8月6日に上方修正)に対して売上高が54百万円、営業利益が49百万円、経常利益が55百万円、親会社株主帰属四半期純利益が45百万円、それぞれ上回った。
工業用ゴム事業は売上高が36.3%増の30億40百万円で、営業利益(全社費用調整前)が2億83百万円の黒字(同1億11百万円の赤字)だった。RFIDタグ用ゴム製品は需要低迷したが、ASA COLOR LEDなどの車載用ゴム製品や卓球ラケット用ラバーの需要が回復基調となった。医療・衛生用ゴム事業は売上高が4.5%減の5億91百万円で、営業利益が37.4%減の55百万円だった。コロナ禍の影響でプレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム栓の在庫調整が継続した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が17億97百万円で営業利益が78百万円、第2四半期は売上高が18億35百万円で営業利益が98百万円だった。
通期予想は据え置いた。新型コロナ感染症拡大の動向、半導体・部品供給不足による自動車の減産、原材料価格の高騰など先行き不透明感を考慮した。
通期の売上高の計画は、セグメント別では工業用ゴム事業が14.1%増の60億90百万円、医療・衛生用ゴム事業が0.9%増の11億62百万円、中期事業分野別では光学事業が11.1%増の32億12百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.0%減の11億82百万円、機能事業が29.1%増の22億71百万円、通信事業が7.1%減の5億86百万円、また主要製品別ではASA COLOR LEDが10.6%増の29億99百万円、医療用ゴム製品が7.3%減の10億55百万円、卓球ラケット用ラバーが23.3%増の3億81百万円、RFIDタグ用ゴム製品が19.3%減の3億84百万円としている。
第2四半期累計の進捗率は売上高が50.1%、営業利益が54.8%、経常利益が57.2%、親会社株主帰属当期純利益が57.2%と順調である。下期は自動車用の受注減速を見込んでいるが、自動車減産の影響は一時的だろう。通期予想に再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株価は煮詰まり感
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場への適合を確認し、21年9月14日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。
株価は小幅レンジでモミ合う展開だが煮詰まり感を強めている。調整一巡して上放れを期待したい。11月24日の終値は599円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円02銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS976円73銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約28億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)