ゼリア新薬工業は調整一巡、22年3月期は再上振れの可能性

 ゼリア新薬工業<4559>は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。22年3月期は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの拡販などで大幅営業・経常増益予想としている。第2四半期累計は欧州の医療用医薬品事業が好調に推移し、為替差益も寄与して計画を上回る大幅増益だった。通期は為替差益を見込んでいないため再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形となったが、大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

 21年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業54%、コンシューマーヘルスケア事業46%、その他0%、営業利益構成比(調整前)は医療用医薬品事業42%、コンシューマーヘルスケア事業55%、その他3%だった。地域別売上比率は日本66%、欧州27%、その他7%だった。

■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコール(協和キリンとの販売提携を終了して20年4月から単独販売)を主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども拡大している。また20年9月には鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト(開発コードZ-213、ビフォーファーマ社から導入、静注鉄剤)の販売を開始した。

 21年3月期の売上高はアサコールが165億42百万円、エントコートが48億17百万円、アコファイドが16億67百万円、その他が69億95百万円だった。

 アサコールの海外展開については、欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中(21年9月時点でドイツ、フランスをはじめとする18ヶ国で販売中)である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。また、21年7月にはMenariniを通じて新たにアサコールの中国での販売を開始した。

 アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。なおアステラス製薬<4503>と日本で行っている共同販促を21年3月で終了し、4月以降は単独で販促活動を行っている。

 子会社のティロッツ社(スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。

 また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社が欧州を中心に販売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)について、欧州、中東、アフリカ、および独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継する資産譲渡契約(取得額109百万ユーロ)を締結し、21年6月には欧州テリトリーでの製造販売権承継をほぼ完了した。残る地域についても順次承継予定である。

■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力

 コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。

 21年3月期の売上高は、ヘパリーゼ群が75億46百万円、コンドロイチン群が60億79百万円、ウィズワン群が16億35百万円、その他が100億円だった。

 事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。

 20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。

 西洋ハーブ関連では21年度に、軽度の静脈還流障害による足のむくみ改善薬ベルフェミン(20年11月に製造販売承認取得、OTC医薬品)、および過敏性腸症候群を適応症とするコルペルミンの発売を予定している。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(21年11月4日現在)は以下の通りである。

 潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品、アサコール)は中国で20年4月承認取得、21年7月販売開始(開発主体であるTillotts Pharma AGが、イタリアのMenariniグループの中国現地法人に独占的販売権供与)した。

 Z-338(自社品、アコファイド)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を対象として第3相段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。

 高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第3相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。

■アサコールやエントコートの拡大などを推進

 収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業ではアサコール高用量製剤の海外販売国拡大、フェインジェクトやエントコートの市場浸透、ティロッツ社の営業体制強化、コンシューマーヘルスケア事業では主力製品に次ぐ製品群の育成、西洋ハーブ剤など特徴ある製品群の市場認知度向上による事業拡大を推進している。

 また持続的成長に向けて、消化器領域および既存事業との親和性の高い領域の薬剤導入、M&A、自社製品の海外導出を推進する方針としている。

■22年3月期2Q累計大幅増益、通期は再上振れの可能性

 22年3月期連結業績予想(11月1日に利益を上方修正、収益認識基準適用のため増減率は収益認識基準を遡及適用した21年3月期実績値との比較)は、売上高が21年3月期比13.7%増の600億円、営業利益が52.5%増の53億円、経常利益が62.1%増の52億円、親会社株主帰属当期純利益が17.7%増の37億円としている。配当予想は21年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。

 第2四半期累計(収益認識基準を遡及適用した前年同期実績値との比較)は、売上高が前年同期比12.1%増の286億06百万円、営業利益が67.2%増の26億72百万円、経常利益が138.4%増の31億16百万円、親会社株主帰属四半期純利益が52.4%増の21億15百万円だった。

 従来予想を上回る大幅増益だった。コンシューマーヘルスケア事業がコロナ禍の影響を受けたため売上高は従来予想を若干下回ったが、20年11月に製造販売権を承継したディフィクリアをはじめとして、欧州の医療用医薬品事業が想定以上に好調に推移した。さらに、英ポンドやユーロなどの欧州通貨に対するスイスフラン安の進行に伴って、営業外収益で為替差損益が大幅に改善(前期は4億25百万円の為替差損計上、今期は4億17百万円の為替差益計上)したことも寄与した。なお研究開発費は18.1%増の29億86百万円だった。

 セグメント別に見ると、医療用医薬品事業は売上高が24.4%増の179億97百万円で営業利益(調整前)が93.1%増の30億81百万円、コンシューマーヘルスケア事業は売上高が4.1%減の105億33百万円で営業利益が15.9%減の19億76百万円だった。

 医療用医薬品事業の売上高は、アサコールが6.7%増の85億06百万円、エントコートが18.4%増の22億45百万円、アコファイドが17.9%増の15億80百万円、その他が4.1%増の33億86百万円と伸長した。ディフィクリアの売上高は22億79百万円だった。海外の好調が牽引した。

 コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群が11.9%増の32億37百万円、コンドロイチン群が5.2%増の25億95百万円、ウィズワン群が7.1%減の6億47百万円、その他が17.7%減の40億52百万円だった。医薬品ヘパリーゼやコンドロイチン群が回復傾向だが、ヘパリーゼのコンビニ流通品がコロナ禍の影響を受け、また手指消毒薬の需要が一巡した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高135億48百万円、営業利益12億51百万円、経常利益20億81百万円、第2四半期は売上高150億58百万円、営業利益14億21百万円、経常利益10億35百万円だった。

 通期ベースでも海外の医療用医薬品事業が牽引する見込みだ。医療用医薬品事業ではアサコールの海外売上拡大、エントコートの欧州の一部の国における薬価改定影響の一巡、アコファイドのアステラス製薬との共同販促終了と販売移管(21年4月)に伴う在庫調整影響一巡、フェインジェクトやディフィクリアの通期寄与などを見込み、コンシューマーヘルスケア事業では販促活動強化も寄与してヘパリーゼ群やコンドロイチン群の売上回復基調を見込んでいる。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高47.7%、営業利益50.4%、経常利益59.9%、親会社株主帰属当期純利益57.2%と順調である。なお為替相場の先行きが不透明な状況として、通期ベースでは為替差損益の発生を見込んでいない。このため通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。

■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈する。なお3月1日に優待品コース内容変更(詳細は会社HP参照)を発表している。

■株価は調整一巡

 なお11月4日に自己株式取得(上限80万株・18億円、取得期間21年11月5日~22年5月13日)を発表している。

 株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形となったが、大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。11月25日の終値は2002円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS81円80銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1225円69銭で算出)は約1.6倍、時価総額は約1063億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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