- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 三洋貿易は調整一巡、22年9月期小幅営業・経常増益予想だが上振れ余地
三洋貿易は調整一巡、22年9月期小幅営業・経常増益予想だが上振れ余地
- 2021/11/29 08:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品などを主力とする専門商社である。バイオマス・地熱・海洋など再生エネルギー関連への取り組みも強化している。21年9月期は木質バイオマス大型案件も寄与して大幅増収増益だった。自動車関連は第4四半期に減産の影響を受けたが、通期ベースでは概ね順調だった。22年9月期は小幅営業・経常増益にとどまる予想としているが、上振れ余地がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。株価は上値を切り下げる形でやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開し、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。メーカー並みの技術サポート力が特徴だ。海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。
自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。
21年9月期のセグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品が31%、機械資材が56%、海外現地法人が15%、その他が▲2%だった。収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い特性がある。
M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化、19年10月畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化、19年11月英国OXIS社と業務提携、20年3月食品添加物を中心とする化学品輸入販売商社のNKSコーポレーションを子会社化した。
20年10月には連結子会社のアズロと非連結子会社のNKSコーポレーションを合併(新社名は三洋ライフマテリアル)、20年11月には健康食品原料や化粧品原料を中心とする化学品輸出専門商社のグローバル・トレーディングを子会社化、20年12月には非連結子会社の三洋テクノスが研究機器向け試験片および部品製造のテストマテリアルズを子会社化した。
21年4月には子会社のグローバル・トレーディングを吸収合併した。また事業の選択・集中の観点から産業用合成ゴム材料製造の非連結子会社の三洋東和(上海)の全持分85.9%を譲渡した。
■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」
長期経営計画「VISION2023」では経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げて、目標値を23年9月期経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。この長期ビジョンの達成が視野に入ってきたため、新たに2ヶ年の新中期経営計画(22年9月期~23年9月期)を策定し、23年9月期の目標値を売上高1100億円、経常利益を75億円とした。
長期ビジョンで推進してきた企業体質および収益基盤の強化を目指す7つの基本戦略(企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進)をさらに推進する。
具体的にはモビリティ(あらゆる移動体)、ファインケミカル(合成ゴム、塗料、インキ、コーティング、電材)、サステナビリティ(バイオマス・地熱・海洋などの再生エネルギー、畜産飼料)、ライフサイエンス(食品添加物、化粧品、在宅医療、科学機器、バイオテクノロジー)の注力4分野に特化して、事業領域の追求・深化、新規事業の開拓、グローバル展開、環境配慮型商材の拡充、気候変動への取り組み、および新規投資案件の推進を一層強化する方針だ。
目標達成に向けて、20年10月には事業部横断で次世代事業を創出する社長直轄の組織として事業開発室を新設した。20年9月期時点で新規プロジェクト44件を選定している。21年10月にはライフサイエンス事業部を新設した。
木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。18年8月には大日本コンサルタント<9797>と合弁で、静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立した。
自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。また海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。20年11月にはタイ・レムチャバンに事務所を開設、21年1月には米国・アラバマに事務所を開設した。
■22年9月期小幅営業・経常増益予想だが上振れ余地
21年9月期連結業績は売上高が20年9月期比18.0%増の897億88百万円、営業利益が14.9%増の55億06百万円、経常利益が17.4%増の61億90百万円、親会社株主帰属当期純利益が41.3%増の42億56百万円だった。配当は20年9月期比1円50銭増配の39円(第2四半期末19円、期末20円)とした。
木質バイオマスの大型案件も寄与して大幅増収増益となり、経常利益、親会社株主帰属当期純利益は過去最高を更新した。自動車関連は第4四半期に半導体・部品不足に伴う完成車メーカー減産の影響を受けたが、通期ベースでは高価格帯車種向けの好調も寄与して概ね順調だった。
化成品は売上高が14.5%増の315億34百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が56.9%増の20億17百万円だった。ゴム関連商品は自動車関連に加えて、家電・情報機器など非自動車関連の需要が急増し、合成ゴムや副資材が好調だった。仕入価格高騰と物流混乱の中でも在庫を活用して安定供給に対応した。化学品関連商品も主力の塗料・インキ関連をはじめ、幅広いケミカル原材料需要が堅調に推移した。
機械資材は売上高が10.7%増の334億14百万円で、営業利益が7.7%増の36億65百万円だった。産業資材関連では自動車向けシート周辺部材が期末にかけて減産の影響を受けたが、通期ベースでは概ね順調だった。機械・環境関連は飼料加工機器が好調に推移し、木質バイオマスの大型案件(本体6基)も寄与した。資源開発関連は海洋開発関連機材や地熱開発機材が好調だった。
海外現地法人は売上高が35.4%増の246億89百万円で営業利益が16.5%増の9億78百万円だった。米国は高吸水性樹脂やフィルム、中国(上海)は自動車関連部品、タイはゴム関連や自動車部品、メキシコは自動車関連部品、ベトナムは塗料・インキ関連、インドネシア(新規連結)はゴム関連が好調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高216億09百万円で営業利益17億21百万円、第2四半期は売上高239億16百万円で営業利益19億13百万円、第3四半期は売上高229億円で営業利益14億49百万円、第4四半期は売上高213億63百万円で営業利益4億23百万円だった。第4四半期は完成車メーカー減産の影響を受けた。
22年9月期の連結業績予想は売上高が21年9月期比4.7%増の940億円、営業利益が5.3%増の58億円、経常利益が1.8%増の63億円、親会社株主帰属当期純利益が1.3%減の42億円としている。配当予想は21年9月期と同額の39円(第2四半期末19円、期末20円)としている。
コロナ禍による物流混乱・供給逼迫、原材料価格高騰、半導体・部品不足に伴う自動車メーカー減産の影響など、不透明感を考慮して小幅営業・経常増益にとどまる予想としているが、中長期的な見地から対応施策を講じて最高益更新予想としている。期初時点では保守的な傾向が強いだけに上振れ余地がありそうだ。なお新・中期経営計画を発表し、目標値に23年9月期売上高1100億円、経常利益75億円を掲げた。収益拡大基調を期待したい。
■株価は調整一巡
22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する第一次判定結果としてプライム市場適合を確認し、21年7月12日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。
株価は上値を切り下げる形となってやや軟調な展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。11月26日の終値は992円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS146円38銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の39円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1195円18銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約288億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)