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ジーニーは売られ過ぎ感、マーケティングSaaSビジネスが成長軌道で22年3月期大幅増益予想
- 2021/11/30 10:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジーニー<6562>(東マ)はマーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーを目指し、企業のDXを支援するマーケティングSaaSビジネス領域の強化や広告プラットフォームビジネスの収益力向上を推進している。22年3月期はマーケティングSaaSビジネス領域が成長軌道に乗って大幅増益予想としている。第2四半期累計の進捗率は低水準の形だが下期偏重の収益特性がある。通期ベースでも収益改善基調を期待したい。株価は年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■上期業績は好調。通期業績予想の達成に向けて大きく前進
営業利益は上期で1.7億円とYoYで2.9億円改善し、前通期の1.9億円並みまで拡大。広告業界の繁忙期が12月と3月ということもあり、当社は下期偏重の業績構造となっている。前期は、営業利益が下期で3.1億円。今期は上期に1.7億円達成しており、前期下期実績3.1億円と下期施策及び上期実績等を踏まえると、7億円台が見えてきた。
■マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニー
マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーを目指し、企業のDXを支援するマーケティングSaaSビジネス領域の強化や広告プラットフォームビジネスの収益力向上を推進している。
21年3月期の売上高構成比はアド・プラットフォーム事業が80%、マーケティングソリューション事業が10%、海外事業が11%だった。なお22年3月期から事業区分を、インターネット広告に関わる広告プラットフォーム事業、企業のDXを支援するマーケティングSaaSビジネス領域のマーケティングSaaS事業、および国内のプロダクトを東南アジア中心に展開する海外事業に変更した。
20年11月には高速・高精度検索エンジン開発のビジネスサーチテクノロジを子会社化した。また21年8月には顧客獲得・管理チャットポットサービスを開発・提供するREACTを完全子会社化した。
収益面の季節特性として、広告プラットフォーム事業では広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中する傾向がある。なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社となっている。ソフトバンクと協業してクロスボーダーサービスの強化・拡大を推進している。
■広告プラットフォーム事業は独自アドテクノロジーが強み
広告プラットフォーム事業はインターネット広告市場において、広告収益を最大化するサプライサイド(ネットメディア向け)のGENIEE SSPが取引実績2万社で国内シェア1位、デマンドサイド(広告主向け)のGENIEE DSPが広告主数500社で国内NO.1のデータ保有量を誇っている。
ネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)を強みとしている。ネット広告取引市場においては、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。さらにビッグデータやAIを活用して広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。
21年7月には、21年5月開始したWeb動画リワード広告において、UNICORNが運営する国内最大規模の全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」と連携した。
21年9月には、Cookie規制への対策としてGENIEE SSPとGENIEE DSPが、DMP最大手であるインティメート・マージャー<7072>の3rd Party Cookieを利用せず、異なるドメイン間で3rd Party Dateの活用が可能な共通IDソリューションIM―UIDと連携し、広告配信検証を開始した。
■広告プラットフォームはDOOH領域に展開
広告プラットフォーム事業の領域拡大戦略として、大型屋外サイネージ、タクシー広告、駅内広告、歯科医院待合サイネージなど、DOOH(自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)領域に積極展開している。
18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月DeNA<2432>のタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。19年8月にはジオネクサスにDOOH広告配信プラットフォームをOEM提供した。19年11月にはメディカルアシストTVと業務提携し、歯科医院デジタルサイネージ向けプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年1月にはヒットと業務提携し、20年2月に首都高速道路沿い大型屋外ビジョン向けプログラマティックOOH広告配信を開始、20年3月に東京・渋谷ハチ公口および大阪・御堂筋沿いにプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年7月には京王エージェンシーと業務提携してデジタル広告効果の可視化に向けた実証実験を開始、20年8月にはユニカと業務提携してDOOH向け広告配信サービスYUNIKA VISION DOOHの提供を開始、20年10月には日本自動ドアおよびYmixと業務提携してFast Beautyが運営する全国約88店舗ヘアカラー専門店fufuに設置するタブレット端末へ広告配信した。
21年5月には、デジタル屋外広告プラットフォームGENIEE DOOHがユナイテッドマーケティングテクノロジーのBypassと連携開始した。またホープ<6195>と業務提携した。気象庁ホームページ広告運用事業における広告配信システムを共同で構築・提供・運用する。21年7月にはGENIEE DOOHとSpotX Japanの動画広告配信プラットフォームSpotXが連携した。
■DX支援マーケティングSaaSビジネス領域を強化
マーケティングSaaS事業は、クラウド上でアプリケーションを提供するSaaS型のビジネスモデルで、企業のマーケティング活動を効率化するソフトウェアを提供している。
具体的にはCRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システムちきゅう、マーケティングオートメーションツールMAJIN、チャット型Web接客プラットフォームchamo、サイト内検索proboを展開している。
CRM/SFAシステムちきゅうは、顧客管理CRMシステムおよび商談管理SFAシステムを一体化させたクラウド型サービスである。マーケティングオートメーションMAJINは企業のマーケティング活動を自動化し、効率的に購買・契約等を行うためのプラットフォームである。取引実績は合計で約1万社に達している。チャットボットツールchamoは4500社の導入実績を持つ国産NO.1のチャットツールである。
集客~販促~受注までを一気通貫で実行・管理できる唯一のセールス&マーケティングプラットフォームとして、企業のDXを支援するマーケティングSaaSビジネス領域の成長を加速させる方針だ。
21年6月には不動産業者向けDX推進を目的としてSS Technologiesと業務提携した。21年8月にはREACTを完全子会社化した。chamoと統合し、チャット型Web接客サービス領域の機能拡張によって収益機会拡大を推進する。
21年10月にはchamoと、広告計測ツールのCATS、およびアフィリエイトシステムのアフィリエイトアドとの連携開始を発表した。正確なコンバージョンデータの計測が可能になり、広告運用を改善することで成果を最大化できる。
■24年3月期(IFRSベース)EBITDA27億円~32億円目標
24年3月期の目標値には、IFRSベースで売上高250億円~300億円、売上総利益80億円~90億円、営業利益20億円~25億円(日本基準ベースで18億円~23億円)、EBITDA27億円~32億円を掲げている。
マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーとなるべく、広告プラットフォーム事業を伸ばしながら、マーケティングSaaS事業の急成長を目指す。またプライム市場への上場を目標として、流動性/ガバナンス/経営成績・財政状態の基準のクリアを目指すとしている。会計基準はIFRSの適用を検討する方針だ。
■22年3月期大幅増益予想、マーケティングSaaSビジネスが成長軌道
22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用のため売上高の前期比増減率は非記載、利益への影響なし)は、売上高が134億25百万円~137億39百万円、営業利益が6億40百万円~8億40百万円(21年3月期比3.3倍~4.3倍)、経常利益が6億20百万円~8億20百万円(同4.2倍~5.5倍)、EBITDAが12億59百万円~14億59百万円(同2.1倍~2.5倍)、親会社株主帰属当期純利益が5億26百万円~6億65百万円(同5.2倍~6.5倍)としている。収益認識基準を適用しない場合の売上高予想は150億49百万円~153億63百万円(21年3月期比7.0%増~9.3%増)となる。配当予想は未定である。
第2四半期累計は、売上高が64億58百万円、営業利益が1億72百万円の黒字(前年同期は1億23百万円の赤字)、経常利益が1億93百万円の黒字(同1億40百万円の赤字)、EBITDAが4億55百万円の黒字(同47百万円の赤字)、そして親会社株主帰属四半期純利益が1億38百万円の黒字(同1億19百万円の赤字)だった。
広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業とも伸長して黒字転換した。なお収益認識基準の影響額として、売上高と売上原価がそれぞれ7億31百万円減少している。会計基準変更影響を除く従来基準ベースでは、売上高は11,8%増の71億89百万円だった。売上総利益は61.4%増加した。
セグメント別(調整前、22年3月期から区分変更して一部を組み換えているため前期比増減率は非記載)に見ると、広告プラットフォーム事業は売上高が52億57百万円で営業利益が7億50百万円だった。気象庁ホームページの広告運用事業における広告配信システム提供開始、デジタルDOOH領域での広告配信量の拡大など、新機能開発やシェア拡大などで売上総利益が前年同期比39%増加した。
マーケティングSaaS事業は売上高が5億15百万円で営業利益が13百万円だった。プロダクト機能強化や拡販などでアカウント数が増加し、売上高が120%増と成長した。海外事業は売上高が7億26百万円で営業利益が57百万円だった。リセラーおよびパートナーシップの強化を推進した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が29億68百万円で営業利益が50百万円、第2四半期は売上高が34億90百万円で営業利益が1億22百万円だった。
22年3月期はSaaS型プロダクト開発・機能強化などへの先行投資が完了して収益拡大フェーズとしている。経済環境の不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、第2四半期累計は想定(売上高57億20百万円、営業利益77百万円の赤字、経常利益87百万円の赤字、EBITDA2億20百万円、親会社株主帰属四半期純利益86百万円の赤字)を大幅に上回った。また通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は低水準の形だが下期偏重の収益特性がある。通期ベースでも収益改善基調を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でグロース市場適合を確認し、21年9月24日開催の取締役会でグロース市場選択を決議した。今後、所定のスケジュールに基づいて手続を進める。
8月13日発表の自己株式取得(上限35万株・3億50百万円、取得期間21年8月16日~22年8月15日)については、21年10月31日時点で累計取得株式数4万7900株となっている。
株価は年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。11月29日の終値は799円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS147円12銭で算出)は約5.4倍、時価総額は約144億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)