建設技術研究所は戻り試す、21年12月期大幅増収増益予想、22年12月期も収益拡大基調

 建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。グループ一体となった事業拡大戦略を推進している。21年12月期は受注が好調に推移して大幅増益予想としている。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境が良好であり、22年12月期も収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、利益確定売り一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

 総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社としている。

 20年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業75%、海外建設コンサルティング事業25%、営業利益(調整前)が国内建設コンサルティング事業99%、海外建設コンサルティング事業1%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。

■グループ一体となった事業拡大を推進

 CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標値に2030年売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

 国内はインフラソリューショングループの実現に向けて、インフラ維持管理・更新や発注者支援などの事業プロセスの拡大、防災・減災や都市・建設などサービス・分野の拡大、民間など新たな顧客の掘り起こしなど市場の拡大を推進する。海外は開発途上国から先進国までを含めたグローバル展開を推進する。

 21年3月には道路トンネル定期点検業務において、人力打音検査を代替え・定量化するレーザー打音検査装置を国内で初めて診断支援に活用した。また災害等に対して都市機能を維持・継続するための共助に係わる防災エリアマネジメントの手引きを策定した。

 21年5月には、日本水環境学会COVID―19タスクフォースメンバーである金沢大学との共同研究契約に基づき、下水中の新型コロナウイルス遺伝子分析技術の実用化に成功した。これに伴って、新型コロナウイルス感染症拡大を早期に検知するための流行把握サービスの提供を開始した。

 21年9月にはグループ会社の日総建、およびファインコラボレート研究所との3社間で業務提携した。既存業務での連携、新分野の創出、相互の人材交流を行う。またダム管理の負担を軽減するクラウド型ダム流入量予測およびダム運用支援情報のリアルタイム配信サービスを開始した。また、つくば市と、災害緊急対応時に避難指示発令など迅速かつ的確に意思決定を行うための情報共有ツールの開発に関する共同研究に連携して取り組む協定を締結した。

 21年10月には国際規格である情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証の登録組織を全社に拡大した。従来は09年から一部の組織で取得していたが、再認証に合わせて登録組織を本社および全ての事業所に拡大した。

 12月6日には、自社開発の「音響データのAI解析による下水道の雨天時侵入水検知技術」が、国土交通省の第5回インフラメンテナンス大賞(特別賞)を受賞したと発表している。

■21年12月期大幅増益予想、22年12月期も収益拡大基調

 21年12月期連結業績予想(10月28日に上方修正)は、売上高が20年12月期比13.5%増の740億円、営業利益が21.9%増の62億円、経常利益が20.8%増の63億円、親会社株主帰属当期純利益が12.3%増の41億円としている。配当予想は据え置いて20年12月期と同額の45円(期末一括)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比8.8%増の516億02百万円、営業利益が31.1%増の50億03百万円、経常利益が29.8%増の50億65百万円、親会社株主帰属四半期純利益が26.5%増の32億55百万円だった。受注が好調に推移し、単価上昇や生産性向上も寄与して大幅増益だった。

 グループ全体の受注高は20.4%増の675億03百万円だった。国内は防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化計画の推進で好調に推移した。海外は建設技研インターナショナルが東南アジアにおいて渡航制限されるなどコロナ禍の影響を受けた。英国Waterman Groupは英国の社会経済活動正常化に伴って持ち直し傾向となった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億41百万円で営業利益が4億41百万円、第2四半期は売上高が224億81百万円で営業利益が31億24百万円、第3四半期は売上高が163億80百万円で営業利益が14億38百万円だった。

 通期は従来予想に対して売上高が70億円、営業利益が13億円、経常利益が14億円、親会社株主帰属当期純利益が8億円、それぞれ上回る見込みとした。売上高は増収幅が拡大し、各利益は小幅減益予想から一転して大幅増益予想とした。国内建設コンサルティング事業において受注が好調に推移し、海外建設コンサルティング事業においても英国Waterman Groupの業績が回復見込みとしている。

 修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.7%、営業利益が80.7%、経常利益が80.4%、親会社株主帰属当期純利益が79.4%と順調である。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境が良好であり、22年12月期も収益拡大基調だろう。

■株価は高値圏

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分の上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月24日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。東京証券取引所が定める所定のスケジュールに従って手続を進める。

 株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、利益確定売り一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。12月9日の終値は2431円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS289円96銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2393円36銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約344億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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