エスプールは上値試す、22年11月期も収益拡大基調

 エスプール<2471>(東1)は、障がい者雇用支援やコールセンター向け派遣などの人材サービス事業に加えて、新たな収益柱構築に向けた新規事業にも積極展開している。12月9日には障がいのある芸術家(パラアーティスト)が制作活動を行う組織「COLORS」の発足を発表した。21年11月期は主力事業が好調に推移して2桁営業・経常増益予想としている。さらに上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で22年11月期も収益拡大基調を期待したい。株価は上場来高値圏で堅調だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお1月13日に21年11月期決算発表を予定している。

■人材サービス事業を展開

 ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援、新規事業)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣、人材紹介)を展開している。さらに新たな収益柱構築に向けた新規事業として、環境経営支援サービスおよび広域行政BPOサービスを開始している。エスプール本体で新規事業開発を行い、事業規模や収益化に応じて、子会社として分社化する戦略としている。

 20年11月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高がビジネスソリューション事業28%、人材ソリューション事業72%、営業利益がビジネスソリューション事業48%、人材ソリューション事業52%だった。

 21年3月には一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)に入会した。また経済産業省および日本健康会議が認定する健康経営優良法人2021(ホワイト500)に2年連続で選定された。21年10月には子会社のエスプールリンクが、女性の活躍推進に関する取り組みが優れている企業に対して厚生労働大臣が認定する「えるぼし」の最高位となる「3段階目」を取得した。グループにおける「えるぼし」取得はエスプール、エスプールヒューマンソリューションズ、エスプールプラスに続く4社目となった。

■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力

 ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行サービス、物流センター運営代行)、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービス「OMUSUBI」なども展開している。

 障がい者雇用支援サービスの「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じてノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。20年11月期末時点の顧客数は321社、管理区画数は3829区画、就業者数は1915名だった。

 20年8月には東京都板橋区に初の屋内型農園を開設した。従来型の農園はビニールハウス型で概ね3000坪を超える敷地を必要としていたが、台風など自然災害の影響を踏まえ、屋外作業に適さない方にも就労機会を提供することを目的として屋内型を開設した。屋内型は倉庫や建物の活用を前提としているため立地面において柔軟性が高い。

 21年10月期は7施設を新規開設予定(期初時点では6施設の計画だったが需要が旺盛なため上方修正)で、関西エリア(大阪府枚方市と摂津市)に進出する。21年9月には東京都板橋区に全国30番目の施設を開設した。

 障がい者の個性やキャリアを活かした雇用環境を構築し、それぞれのフィールドで活躍するパラスペシャリストの支援に取り組んでいる。12月9日には障がいのある芸術家(パラアーティスト)が制作活動を行う組織「COLORS」の発足を発表した。障がい者の個性を活かしたキャリア支援は「パラアスリート」に続き2事例目となる。

 ロジスティクスアウトソーシングでは、巣ごもり消費を背景としてEC通販発送代行サービスが拡大している。このため21年夏を目途に、つくばセンターの拡大移転を予定している。

 なおネット通販発送代行サービスを展開する子会社のエスプールロジスティクスは21年8月、環境省が策定する日本独自の環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証を取得した。21年9月には越境ECサービス支援のアジアンブリッジと資本業務提携した。ASEAN諸国への越境ECサービスを通じて既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得を推進する。

 採用支援サービスのOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。20年3月には採用支援サービスのZENKIGENに出資、健康経営支援サービスのメンタルヘルステクノロジーズに出資、20年5月にはZENKIGEN、ワークスタイルテック、およびイレブンと4社合同で、企業間が期間限定で従業員をシェアし合うプラットフォーム「超企業 従業員プラットフォーム」を開設した。

 20年9月には適性診断サービス「Talentgram」を開始、20年11月にはWEB面接代行サービス「Faceview」を開始、21年2月にはオンライン接客サービス開発・提供に向けてピアズと業務提携、サービス業を中心に人材の過不足解消を目的とした人材紹介サービスを開始、21年5月にはアルバイト・パートの入退職手続代行サービスを開始した。

■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力

 人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。

■新規事業

 新規事業としては、環境経営支援サービス、広域行政BPOサービスなどを開始している。

 環境経営支援サービスについては、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援までワンストップサービスの展開を推進する。

 広域行政BPOサービスについては、人口10万人以下の地方都市を中心に、隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開する。シェアード型BPOセンターは北海道北見市、秋田県大仙市、青森県弘前市に続き、22年2月には香川県三豊市に4拠点目、および大分県中津市に5拠点目の開設を予定している。なお21年12月にBPO事業を新設の子会社エスプールグローカルに承継する。

 21年10月には宮崎県日南市およびココホレジャパン(岡山県岡山市)と3者包括連携協定を締結し、日南市内の後継者不在事業者の調査、移住者とのマッチング、事業再生支援等による後継者課題解決に取り組むと発表した。第一弾として、ココホレジャパンが運営するプラットフォームを活用した「宮崎県日南市継業バンク」を開設して地域の維持活性化を図る。

■25年11月期営業利益50億円目標

 中期経営計画では、目標値に25年11月期の売上高410億円、営業利益50億円、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持を掲げている。基本戦略として、既存事業の深掘りによるオーガニック成長、新たな事業領域における成長機会の獲得、ESGを軸とした経営基盤の強化を推進する。

 オーガニック成長としては、人材派遣サービスではコールセンター派遣におけるトップシェアの獲得、新たな派遣領域の発掘、障がい者雇用支援サービスでは農園サービスにおける圧倒的NO.1の確立、障がい者の個性に合わせた多様な働き方メニューの開発、ロジスティクスアウトソーシングではEC通販を軸とした事業拡大、日本発のゼロ・エミッションを実現した自社センターの開設、採用支援サービスのOMUSUBIではアルバイト・パート採用支援業務でのトップシェア獲得、採用から定着化までの総合的サービスの提供を推進する。

 新たな事業領域における成長機会の獲得としては、ベンチャー投資も活用して、CO2削減を中心とする環境ビジネス領域、企業の「持たざる経営」へのシフトを支援するBPOビジネス領域への展開を加速する方針だ。

■21年11月期2桁営業・経常増益予想、22年11月期も収益拡大基調

 21年11月期の連結業績予想は売上高が20年11月期比18.0%増の248億円、営業利益が12.2%増の25億円、経常利益が11.6%増の24億88百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.5%増の16億35百万円としている。配当予想(11月11日に期末1円90銭上方修正)は20年11月期比2円70銭増配の6円(期末一括)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比18.1%増の180億31百万円、営業利益が23.9%増の19億32百万円、経常利益が25.0%増の19億46百万円、親会社株主帰属四半期純利益が22.1%増の12億67百万円だった。主力事業が好調に推移して計画を上回る大幅増収増益だった。

 ビジネスソリューション事業は売上高が31.8%増の53億44百万円で営業利益が35.3%増の13億87百万円だった。障がい者雇用支援サービスの売上高が34.8%増の29億86百万円と大幅伸長した。企業ニーズが高水準に推移している。ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行、物流センター運営)は売上高が6.9%増の9億27百万円となり、品川センターの収益改善策の効果などで粗利率の改善も進展した。採用支援サービス「OMUSUBI」の売上高は14.7%増の4億79百万円だった。第3四半期に緊急事態宣言に伴う飲食業の採用抑制の影響を受けたが、累計ベースでは2桁伸長した。

 人材ソリューション事業は売上高が13.0%増の127億30百万円で営業利益が11.6%増の14億89百万円だった。販売支援は緊急事態宣言の影響で19%減の13億28百万円と低調だったが、コールセンター業務が新型コロナ関連スポット案件も寄与して18%増の105億95百万円と大幅伸長した。

 新規事業の売上高は、環境経営支援サービスが2億21百万円、広域行政BPOサービスが78百万円だった。いずれも順調に立ち上がった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が54億10百万円で営業利益が3億87百万円、第2四半期は売上高が62億31百万円で営業利益が7億97百万円、第3四半期は売上高が63億90百万円で営業利益が7億48百万円だった。第1四半期は障がい者雇用支援の新規4施設開園費用が先行していたが、第2四半期以降は新規施設の販売が寄与している。

 通期のセグメント別(調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が27.2%増の74億08百万円(障がい者雇用支援が27.1%増収、ロジスティクスアウトソーシングが19.0%増収、採用支援のOMUSUBIが22.0%増収)で営業利益が15.7%増の18億73百万円、人材ソリューション事業の売上高が14.8%増の175億円(コールセンター業務が13%増収、販売支援が16%増収)で営業利益が9.8%増の19億30百万円としている。

 主力事業が好調に推移して通期も2桁営業・経常増益予想としている。新規事業の環境経営支援サービスは売上高2億35百万円の計画としている。クレジット販売は単価の大幅上昇で仕入が苦戦しているため、コンサル業務でカバーし、新サービスの開発を急ぐ方針としている。地方自治体向けシェアード型BPOサービスの拡大も推進する方針だ。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が72.7%、営業利益が77.3%と順調だった。第4四半期に障がい者雇用支援の設備販売が集中する見込みであることを考慮すれば、通期予想は上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で22年11月期も収益拡大基調を期待したい。

■株価は上場来高値圏

 21年6月には、ESGのグローバル基準を満たす日本企業を対象とした株価指数FTSE Blossom Japan Index構成銘柄(228社)に初選定された。

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年9月10日開催の取締役会でプライム市場選択・申請を決議した。

 株価は上場来高値圏で堅調だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月9日の終値は1287円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS20円70銭で算出)は約62倍、前期推定配当利回り(会社予想6円で算出)は約0.5%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS56円43銭で算出)は約23倍、時価総額は約1017億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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