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JSPは反発の動き、22年3月期は再上振れの可能性
- 2021/12/15 08:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。中期成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進している。12月13日には「サステナビリティ経営のマテリアリティ」を開示した。22年3月期は半導体不足や原料価格高騰の影響を考慮して営業・経常利益横ばい予想(7月30日に上方修正)を据え置いているが、高付加価値製品の好調や製品価格改定の効果などを勘案すれば再上振れの可能性が高いだろう。株価は地合い悪化の影響を受けて年初来安値を更新する場面があったが、その後は反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。
21年3月期セグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業58%、その他5%、営業利益構成比(調整前)は押出事業41%、ビーズ事業57%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
■成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロック拡販などを推進
長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。
基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして欧州の自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。さらにEV用バッテリー梱包材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
■サステナビリティ経営を推進
サステナビリティ経営を推進するため、21年4月にサステナビリティ推進室を新設した。
さらに12月13日には「サステナビリティ経営の重要課題(マテリアリティ)」を開示し、ホームページに「JSPのサステナビリティ経営とマテリアリティ」を掲載した。同社の発泡技術を活用して、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと、提供価値の拡大を推進する方針だ。
■22年3月期営業・経常利益横ばい予想だが再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用だが利益への影響軽微、7月30日に上方修正)は、売上高が21年3月期比11.0%増の1140億円、営業利益が0.3%増の52億円、経常利益が2.2%減の54億円、親会社株主帰属当期純利益が19.3%増の36億円としている。配当予想は21年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)である。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比15.8%増の556億73百万円、営業利益が2.3倍の29億85百万円、経常利益が2.4倍の30億81百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.5倍の22億80百万円だった。なお特別損失に韓国の連結子会社における火災による損失1億29百万円を計上している。
従来予想(7月30日に上方修正、売上高555億円、営業利益28億円、経常利益29億円、親会社株主帰属四半期純利益19億円)を上回る大幅増収増益だった。自動車分野を中心とする需要回復や、ピーブロックを中心とする高付加価値製品の拡販などで、原料価格高騰の影響を吸収した。
押出事業は売上高が2.7%増の188億29百万円で、営業利益が38.7%増の14億70百万円だった。食品トレー向けが巣ごもり特需の反動で減少したが、ミラマットなど産業資材製品の高付加価値製品が大幅伸長し、原料価格高騰の影響を吸収した。
ビーズ事業は売上高が23.2%増の338億06百万円で、営業利益が2.7倍の19億52百万円だった。自動車分野を中心に需要が回復し、ピーブロックの自動車分野での新規採用拡大などで高機能材製品の売上が拡大した。増収効果で原料価格高騰の影響を吸収した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が269億82百万円で営業利益が15億67百万円、第2四半期は売上高が286億91百万円で営業利益が14億18百万円だった。
通期予想は据え置いた。需要回復基調だが、半導体不足や原料価格高騰の影響を考慮した。事業別の計画は、押出事業の売上高が4.8%増の394億円で営業利益が12.6%増の29億円、ビーズ事業の売上高が14.5%増の686億円で営業利益が7.0%減の33億円としている。押出事業は販売数量回復と高付加価値製品の好調で増収増益見込み、ビーズ事業は販売数量回復と価格修正で増収だが原料高の影響が大きく減益見込みとしている。
ただし第2四半期累計の進捗率は売上高48.8%、営業利益57.4%、経常利益57.1%、純利益63.3%と順調だった。需要の回復、高付加価値製品の好調に加えて、製品価格改定の効果などを勘案すれば通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株主優待は3月末対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は反発の動き
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分の上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年10月29日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。
株価は地合い悪化の影響を受けて年初来安値を更新する場面があったが、その後は反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。12月14日の終値は1606円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円77銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2767円26銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約505億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)