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インテージホールディングスは調整一巡、22年6月期減益予想だが上振れの可能性
- 2021/12/16 08:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテージホールディングス<4326>(東1)は市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも積極展開している。デジタル環境の変化に対応するため積極的な事業投資やM&Aも継続する方針だ。22年6月期はコロナ禍の不透明感や成長投資などを考慮して減益予想としている。ただし保守的な印象が強い。主力事業が好調に推移して上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は11月の上場来高値圏から反落して水準を切り下げたが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。
21年6月期のセグメント別構成比は、売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援62%、ヘルスケア分野のマーケティング支援26%、ビジネスインテリジェンス13%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援43%、ヘルスケア分野のマーケティング支援51%、ビジネスインテリジェンス6%だった。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社などである。
21年5月にはリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)を子会社化、21年7月にはインテージがIXTを吸収合併、21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。
21年10月には、アジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、21年8月に新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になったと発表している。
21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携(インティメート・マージャーの普通株式の一部を既存株主から取得予定)すると発表した。
ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。
■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上
第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な事業投資やM&Aも継続して実施する方針だ。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。
SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。21年7月現在の投資実績は23社、合計約24.8億円である。
■22年6月期減益予想だが保守的で上振れの可能性
22年6月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年6月期比5.1%増の605億円、営業利益が23.1%減の34億円、経常利益が21.3%減の40億円、親会社株主帰属当期純利益が17.0%減の28億円としている。配当予想は21年6月期と同額の35円(期末一括)で、予想配当性向は50.0%となる。
セグメント別の計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)の売上高が21年6月期比6.8%増の380億円で営業利益が37.2%減の12億円、マーケティング支援(ヘルスケア)の売上高が1,9%増の150億円で営業利益が16.1%減の19億円、ビジネスインテリジェンスの売上高が3.1%増の75億円で営業利益が22.4%増の3億円としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比8.6%増の138億04百万円、営業利益が3.3倍の8億82百万円、経常利益が81.2%増の9億58百万円、親会社株主帰属四半期純利益が20.4%増の7億29百万円だった。
一部の事業がコロナ禍の影響を受けたが、主力事業の需要が概ね好調に推移して大幅増益だった。なお収益認識基準適用の影響額として、売上高が43百万円減少、営業利益、経常利益がそれぞれ6百万円増加している。影響は軽微である。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が12.0%増の86億16百万円で営業利益が3億82百万円(前年同期は10百万円の赤字)だった。コロナ禍で停滞していた顧客のマーケティング活動が回復基調となり、主力のパネル調査やカスタムリサーチが好調に推移した。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が5.4%増の34億64百万円で営業利益が31.3%増の4億30百万円だった。主力のリサーチが堅調に推移し、CRO(医薬品開発業務受託機関)の製造販売後調査の収益性改善も寄与した。
ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が0.7%減の17億23百万円で営業利益が69百万円(同50百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響で微減収だが、原価低減や経費削減で収益性が改善した。
通期予想は据え置いている。全体として需要が回復基調で増収だが、コロナ禍による不透明感や成長投資の影響などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期の進捗率は売上高が22.8%、営業利益が25.9%、経常利益が24.0%、純利益が26.0%と概ね順調だった。主力事業が好調に推移して通期予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は調整一巡
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認している。今後はプライム市場申請に係る所定の手続き等を進めるとともに、更なるコーポレートガバナンス向上を目指すとしている。
なお8月4日発表の自己株式取得(上限100万株・12億円、取得期間21年8月5日~22年6月30日)については、21年11月30日時点で累計取得株式数が28万6200株となっている。
株価は11月の上場来高値圏から反落し、地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。12月15日の終値は1671円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS70円06銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の35円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS750円50銭で算出)は約2.2倍、時価総額は約676億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)