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フライトホールディングスは底値圏、22年3月期黒字転換予想
- 2021/12/17 08:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力としている。22年3月期はサービス事業の大型案件やC&S事業の損益改善などで黒字転換予想としている。マイナンバーカード関連や無人自動精算機関連など有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新したが売り一巡感を強めている。ほぼ底値圏だろう。下値固め完了して出直りを期待したい。
■電子決済ソリューションが主力
子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、子会社のイーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。
21年3月期のセグメント別売上高構成比はC&S事業が22%、サービス事業が72%、ECソリューション事業が6%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。
■サービス事業は電子決済ソリューションを展開
サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。
ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。
Incredistシリーズは、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドの認定が完了している。国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了し、21年春からは近畿圏でスルッとKANSAI協議会が展開しているPiTaPaにも対応している。
戦略製品として、据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機としてマイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。マイナポイントや健康保険証のマイナンバーカードへの統合などで需要拡大が期待される。
Android携帯を決済端末に変える小・中規模事業者向けTap to PhoneソリューションTapion(タピオン)は、21年後半から市場投入予定である。
自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。
■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風
電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)の普及促進が図られている。さらに非接触が新型コロナウイルス対策としても注目されている。
こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。
18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。さらに中堅カード会社との接続など決済パートナーの拡大を推進する。
19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。
19年7月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOVの車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。
またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。
■ロボット関連も強化
C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。
ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。
■22年3月期黒字転換予想
22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年3月期比14.5%増の39億円、営業利益が2億80百万円の黒字(21年3月期は2億69百万円の赤字)、経常利益が2億50百万円の黒字(同2億75百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が2億10百万円の黒字(同2億82百万円の赤字)としている。
第2四半期累計は売上高が前年同期比16.6%増の15億84百万円、営業利益が46百万円の黒字(前年同期は2億91百万円の赤字)、経常利益が41百万円の黒字(同3億04百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が40百万円の黒字(同3億06百万円の赤字)だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が10億67百万円で営業利益が1億84百万円、第2四半期は売上高が5億17百万円で営業利益が1億38百万円の赤字だった。
サービス事業の大型案件の納品を第1四半期に完了し、C&S事業の損益改善も寄与して第2四半期累計ベースでも黒字転換した。各利益は従来予想(営業利益10百万円の黒字、経常利益10百万円の赤字、親会社株主帰属四半期純利益10百万円の赤字)を上回った。サービス事業の粗利益率改善に加えて、Android携帯を決済端末に変える「Tap to Phone」のソリューション「Tapion」開発費の一部が下期に後ズレとなったことも寄与した。
C&S事業は売上高が39.8%増の3億93百万円で、営業利益が14百万円の赤字(同1億32百万円の赤字)だった。前期にプロジェクト損失を計上した反動で赤字縮小した。
サービス事業は売上高が9.7%増の10億70百万円で、営業利益が2億21百万円の黒字(同25百万円の赤字)だった。顧客都合で前期から期ズレとなっていた「Incredist」大型案件の納品が第1四半期に完了した。粗利益率の改善や開発費の後ズレも寄与した。
ECソリューション事業は売上高が18.7%増の1億20百万円で、営業利益が15百万円の赤字(同9百万円の黒字)だった。販売が堅調で増収だが、大型開発案件の開発スケジュール遅延で受注損失引当金を計上した。
通期もサービス事業の大型案件やC&S事業の損益改善などで黒字転換予想としている。なお21年9月には次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱの大口案件の受注(業績予想に織り込み済み)を発表している。マイナンバーカード関連や無人自動精算機関連など有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は底値圏
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場適合を確認し、21年11月18日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。
株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新したが売り一巡感を強めている。ほぼ底値圏だろう。下値固め完了して出直りを期待したい。12月16日の終値は422円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS22円21銭で算出)は約19倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS45円33銭で算出)は約9.3倍、時価総額は約40億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)