【どう見るこの相場】2勝1敗の金価格関連株はインフレ抑制策にまさかまさかの対抗相場も

どう見るこの相場

 「ソフトランディング(軟着陸)」か「ハードランディング(失速)」か?FRB(米連邦準備制度理事会)が、12月15日のFOMC(公開市場委員会)で決定したインフレ抑制策の着地点が、株高か株安かなかなか見通せない。テーパリング(量的緩和策の縮小)を加速させ、2022年の政策金利引き上げを前倒しし回数も2回から3回に増加させることを示唆したのに、マーケットの反応がマチマチなのである。

 基本的にはFRBのタカ派政策は、これに英イングランド銀行の利上げ、欧州中央銀行(ECB)の来年3月末の新規資産購入の打ち切り決定も重なってマーケットに流入する資金を細らせ金融リスク商品にはマイナスとなるはずである。ところが15日から前週末17日までの3日間の米国市場では、株価は、値上がり1日、値下がり2日の1勝2敗、米10年債国債利回りは1勝2敗、金先物価格は2勝1敗と意外と健闘しているようにみえる。

 17日のニューヨーク工業株30種平均は、532ドル安と大幅続落したが、この日は東京市場のSQ(特別清算指数)算出と同様の「クアドルプル・ウィッチング」に当たり持ち高調整目的の売りなどの需給要因も交錯しており、これを割り引く必要性も指摘されている。10年物国債利回りも、新型コロナウイルスの新変異種「オミクロン型」の世界的な感染拡大も意識されて安全資産として買われこともあり、0.009%低下の1.406%と続落しFOMC前の14日の1.445%を下回った。

 今回のFRBの政策転換に比較されるのは、2013年5月の「バーナンキ・ショック」で始まった2013年から2015年に掛けてのテーパリング、政策金利引き上げである。この時は「バーナンキ・ショック」のあとFRBは、テーパリング開始の2014年1月から2015年12月の金利引き上げまでマーケットと対話しつつ時間を掛けて進め、金融市場は下値抵抗力を発揮したとされている。今回は、今年11月のテーパリング開始に対して早ければ来年3月にも金利引き上げとなる特急スケジュールも観測されているが、「オミクロン型」感染拡大という不透明材料が重なるなかで前回のテーパリング時の再現があるのか注目されることになる。

 そこで今回の当特集では、安全資産の一角を形成する金関連株に再注目することとした。金先物価格(ニューヨーク商品取引所)は、15日のFOMC直後に定石通りに7.8ドル安の1トロインオンス=1764.5ドルと続落したが、16日は反発、17日は続伸し、17日には一時1815.7ドルと今年11月下旬以来の高値となった。金は、金利のつかない金融商品で金利上昇局面には投資魅力が減退するが、その金利以上に物価が上昇して実質金利のマイナスが続けば金への投資ニーズは高まることになる。

 しかも、足元の長期金利(10年物国債)の利回りは低下し、「オミクロン型」の感染拡大へのリスク回避目的の買いも続いている。さらにロシアのウクライナ国境への兵力集結、来年2月の北京オリンピックを前にした米中対立の激化などの地政学リスクなども視野に入れ、金先物価格が、FRBのインフレ抑制策にまさかまさまの対抗相場を演じる可能性があるとすれば、関連株をポートフォリオの一角にセットして置くのも一法となるはずだ。当特集で再三取り上げてきている金関連の定番銘柄の産金株、貴金属リサイクル株などをマークするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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