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うかいは11月の既存店売上が前年比102.4%、コロナ禍の影響が和らいで収益回復基調
- 2021/12/21 08:33
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
うかい<7621>(JQ)は高級和食・洋食料理店を主力として、物販事業および文化事業も展開している。コロナ禍で厳しい状況だが、10月25日から通常営業を再開し、既存店売上は前年比で10月が100.0%、11月が102.4%となった。22年3月期業績予想は未定だが、コロナ禍の影響が徐々に和らいで収益回復基調だろう。なお取引金融機関とのコミットメントライン契約を締結・更新しているため資金面の不安はない。株価は小幅レンジでモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■高級和食・洋食料理店が主力
高級和食・洋食料理店を主力として、物販事業および文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。21年3月期末時点の店舗数は和食7店舗、洋食8店舗である。物販事業は「アトリエうかい」の常設店、ECサイト、百貨店の催事出店での販売などを展開している。なおセグメント区分は事業本部(和食事業、洋食事業、物販事業)および文化事業としている。収益面では第3四半期の構成比が高い季節特性がある。
海外は、17年11月台湾・高雄市のホテル「シルクスクラブ」内に1号店「うかい亭 高雄」をグランドオープン、19年1月台湾・台北市の商業施設「微風南山」内に2号店「ザ・ウカイ・タイペイ」をオープンしている。
■成長戦略としてブランド向上や新サービス創造を推進
中期成長戦略として、ブランドの向上と確立(オンリーワンの店づくり)、安定的な収益基盤の再構築、戦略的・中長期的な人材育成、財務体質の改善を推進している。
具体的には、飲食事業における顧客ニーズ多様化に対応した新メニューの開発、郊外店舗の集客力の底上げ、物販事業における「アトリエうかい」の成長促進、文化事業におけるイベント企画強化など、収益力向上に向けた施策を推進する方針だ。
新型コロナウイルスを契機とする「新しい生活様式」に対応してテイクアウト販売も開始した。今後はテイクアウトやECをはじめとする販売チャネルの拡充など、新たなサービスの形の創造にも積極的に取り組む方針としている。
21年11月には、京都においては初めての常設店となる「アトリエうかい 高島屋京都店」を新規出店した。
■22年3月期予想未定だがコロナ禍の影響が和らいで収益回復基調
22年3月期第2四半期累計の業績(非連結)は、売上高が前年同期比22.2%増の40億24百万円、営業利益が10億79百万円の赤字(前年同期は9億18百万円の赤字)、経常利益が6億20百万円の赤字(同8億94百万円の赤字)、四半期純利益が6億28百万円の赤字(同11億72百万円の赤字)だった。
コロナ禍で厳しい状況が続いているが、前年同期との比較では前年4月~5月の臨時休業の反動増などで大幅増収となり、最終赤字が縮小した。なお営業外収益の助成金収入として、新型コロナウイルス感染症影響に伴う雇用調整助成金および営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金の合計額4億08百万円を計上した。また前年同期の特別利益に計上した災害による保険金収入1億23百万円、助成金収入1億75百万円、および特別損失に計上した臨時休業による損失5億58百万円が剥落した。
事業別の売上高は、前年4月~5月の臨時休業の反動増などで事業本部(飲食事業部、物販事業部)が21.7%増の37億08百万円、文化事業(箱根ガラスの森)が28.8%増の3億16百万円となった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が20億46百万円で四半期純利益が4億63百万円の赤字、第2四半期は売上高が19億78百万円で四半期純利益が1億65百万円の赤字だった。第2四半期は、新型コロナウイルス感染症再拡大に伴う緊急事態宣言で、酒類提供や営業時間等の自粛要請を受けたため売上回復が中断する形となったが、四半期ベースでも赤字縮小傾向である。
通期予想は引き続き未定としている。コロナ禍で厳しい状況だが、緊急事態宣言解除および飲食店への営業自粛要請緩和で10月25日から通常営業を再開し、既存店売上は前年比で10月が100.0%、11月が102.4%となった。コロナ禍の影響が徐々に和らいで収益回復基調だろう。
月次売上(前年同月比)を見ると全店・既存店とも21年4月が795.0%、5月が730.4%、6月が94.8%、7月が94.0%、8月が76.7%、9月が73.5%、10月が100.0%だった。そして11月は全店(11月1日にアトリエうかい高島屋京都店をオープン)が105.4%、既存店が102.4%だった。4月~5月は20年の1回目の緊急事態宣言に伴う臨時休業・臨時休館の反動で大幅増収、7月~9月は感染再拡大に伴う種類提供停止の影響の減収、10月~11月は緊急事態宣言解除に伴って回復基調の形である。
なお参考値として令和元年台風19号被災(19年10月)およびコロナ禍の影響を受けなかった19年3月期との比較で見ると、21年4月は全店70.0%で既存店67.1%、5月は全店53.8%で既存店51.5%、6月は全店55.0%で既存店52.3%、7月は全店62.7%で既存店59.6%、8月は全店57.7%で既存店55.6%、9月は全店57.6%で既存店54.6%、10月は全店83.1%で既存店79.9%、11月は全店85.4%で既存店80.3%だった。回復半ばだが、コロナ禍の影響は徐々に和らぐことが予想される。
■資金面の不安なく、リスクマネジメントを評価
なお新型コロナウイルス影響の長期化に備えて、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結・更新しているため資金面の不安はない。
21年3月期有価証券報告書の「事業等のリスク」欄には「新型コロナウイルスの影響で売上高が著しく減少して営業損失を計上し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しているが、財務基盤を安定させるためキャッシュ・フロー改善の推進、設備投資や経費の見直しなどの対策を行っていることに加えて、手元資金を厚くすることを目的として、21年4月および5月に取引金融機関4行と総額39億円の機動的な資金調達が可能となるコミットメントライン契約を締結および延長していることにより、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないと判断している」との内容が記載されている。
コミットメントライン契約による21年3月末時点の借入残高は14.5億円だった。借入極度枠に余裕があるため資金面の不安はない。リスクマネジメントが強化されていることを評価したい。
■株主優待制度は毎年9月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じて優待券などを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は下値固め完了
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場への適合を確認し、21年8月10日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。
株価は小幅レンジでモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。12月20日の終値は3000円、前期実績PBR(前期実績のBPS542円39銭で算出)は約5.5倍、時価総額は約157億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)