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- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】GMO TECHは下値切り上げて戻り歩調に変化なし、15年12月期業績は増額濃厚
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】GMO TECHは下値切り上げて戻り歩調に変化なし、15年12月期業績は増額濃厚
- 2015/7/7 06:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
GMO TECH<6026>(東マ)はインターネット集客支援サービス関連に事業展開している。15年12月期業績予想は増額が濃厚であり、中期的にも高成長が期待される。株価は6月10日の戻り高値8750円から利益確定売りで一旦反落したが、下値を切り上げて戻り歩調に変化はないだろう。
■インターネット集客支援サービス関連に事業展開
GMOインターネット<9449>の子会社で、インターネット集客支援サービス関連に事業展開している。06年12月設立(社名イノベックス)で、09年4月GMOインターネットと資本提携、09年5月GMO SEOテクノロジーに社名変更、11年12月GMO TECHに社名変更、14年12月東証マザーズに新規上場した。
創業期からのPC・モバイル集客支援事業の収益が安定的に拡大し、11年6月サービス開始したスマートフォンアフィリエイトASP事業が急拡大して高成長を牽引している。14年9月には新規分野としてスマートフォンアプリCMS/ASP事業も開始した。自社内でシステム・サービスを開発・制作・運用する技術力・開発力が強みである。
■スマートフォンアフィリエイトASP事業が高成長を牽引
高成長を牽引するスマートフォンアフィリエイトASP事業は、スマートフォンアプリをインストールするユーザーの獲得を目的として、スマートフォンアプリのプラットフォーム(米アップル社のAppStoreおよび米グーグル社のGoogle Play)におけるランキング上位表示対策サービスを提供している。アプリインストールに対する成果報酬型広告サービスだ。
11年6月に開始したアフィリエイト広告配信システム「GMO SmaAD Adnetwork」と、11年8月に開始したスマートフォンリワード広告「GMO SmaAD Reward」を主力として、13年5月にはアプリストアにおけるキーワード検索結果最適化コンサルティングサービス「GMO SmaAD ASO」も開始した。
リワード広告はアプリをインストールしたユーザーに仮想通貨など報酬の一部を還元する仕組みの広告である。スマートフォンリワード広告「GMO SmaAD Reward」は短期間でランキング上位に表示して、インストール数を増大させる効果が高い。アフィリエイト広告配信システム「GMO SmaAD Adnetwork」はインセンティブ付与がない広告手法で、広告主のアプリに対して興味を持っているアクティブユーザーの獲得に効果が高い。
需要の季節要因としては、ゴールデンウイーク、盆、クリスマス・年末年始といった長期休暇の直前に需要が増加する傾向があるという。中期成長に向けて広告主数の増加、単価の上昇、広告掲載可能媒体総数の増加への取り組みを強化している。また海外需要に対応した多言語化や、海外広告主の日本での広告出稿需要を取り込むため、海外イベントにも積極的出展して認知度向上を図っている。
■PC・モバイル集客支援事業は安定的に収益拡大
収益が安定的に拡大しているPC・モバイル集客支援事業は、SEO(検索エンジン最適化)対策やリスティング広告運用代行など、Webサイトへの集客から成果までを総合的にコンサルティングするソリューションサービスだ。SEO対策サービス「SEO Airlines byGMO」を主力として、フェイスブックユーザー向けの「Facebook広告」運用代行サービスも展開している。また「アルバイトナウ」や「中古車ナウ」など便利な情報を提供するPCサイトやアプリも運用している。
ソリューションではデータ分析結果に基づいてSEO対策、リスティング広告、リターゲティング広告などサイトに最適な手法を提案し、コンバージョンの最適化を図る。SEO対策に沿ったスマホページ制作、SEO対策を加味したアプリ制作、そしてアプリ集客までのシステム・サービスを自社内に保有しているため、スマホSEO対策がワンストップで可能となる。高度なデータドリブンマーケティングが強みだ。
なお15年4月に米グーグル社が検索エンジンをアップデートした。モバイル検索の結果表示でスマホ閲覧に最適化(モバイルフレンドリー化)されたWebサイトを優遇する新たなアルゴリズムである。このため従来はPCサイトをSEO対策すればモバイルも同じ順位で表示されたが、今後はPC・モバイル・アプリで各々に独自のSEO対策が必要となる。
これに合わせて15年3月には、CMS対応ASPサービス「GMO AppCapsule」も活用して、SEO対策サービス「SEO Airlines byGMO」のモバイルフレンドリー対策プラン「モバイルフレンドリー最適化サービス」の提供を開始した。
■新規分野のスマートフォンアプリCMS/ASP事業も順次収益化期待
新規分野のスマートフォンアプリCMS/ASP事業は、最新のテクノロジーを融合して、主にスマートフォンアプリユーザーなどWeb上で集めたユーザーを実店舗に誘導するO2Oサービスを提供している。
14年9月に飲食店、美容院・ネイルサロン、宿泊施設、病院・歯科医院といったリアル店舗への集客を目的として、店舗オリジナルアプリを簡単操作・短時間で作成・管理できるCMS対応ASPサービス「GMO AppCapsule」を開始した。CMSはWebコンテンツを管理して配信など必要な処理を行うシステムである。
特定のアプリユーザーに対して情報配信を行うプッシュ通知機能、店舗を中心とする一定エリアに入ったユーザーを指定して自動的にクーポンや情報の配信を行う機能、順番待ちのアラート機能などを実装し、お客様を実店舗に誘導して集客することが可能になる。クレジットカード決済との連携機能や広告効果計測ツールであるSDKも組み込まれている。中小企業や個人店舗でも導入可能な安価な価格設定で、月次課金収入のビジネスモデルだ。
当面は営業費用が先行するが、収益化に向けて販売網の強化や追加機能開発の強化を推進している。販売面では、全国展開の大手小売・飲食・ホテルチェーンなどに対しては直販を強化し、地方に関しては販売代理店網を整備・拡大している。販売代理店契約は58社となり、概ね全国をカバーしたようだ。
追加機能では15年4月に「GMO AppCapsule」のブログコンテンツである「GMO AppCapsule Labo」をリリースした。15年5月には「GMO AppCapsule」において、モバイルフレンドリー対応の一つである「App Indexing」の連携が可能な「リンクリスト」機能をリリースした。
■アライアンス戦略も積極化
アライアンス戦略も積極化している。6月26日にはメディア運営やアプリ開発などを手掛けるナオ社とのゲーム実況動画チャンネル企画・開発における協業を発表した。ゲームの広告・宣伝として活用できる同チャンネルのゲーム紹介用動画広告枠をスマートフォンゲーム運営者向けに販売する。
6月30日には中国のモバイルゲームパブリッシャーのKick9社との戦略的パートナーシップに関する業務提携を発表した。日本のアプリデベロッパーの中国進出および広告配信を支援するとともに、中国アプリデベロッパーによる日本向けスマートフォン広告プロモーションを支援する。
■15年12月期業績予想は増額が濃厚
今期(15年12月期)の非連結業績予想(2月5日公表)は売上高が前期比8.9%増の33億円、営業利益が同20.7%増の3億40百万円、経常利益が同30.2%増の3億40百万円、純利益が同29.4%増の2億04百万円としている。配当予想は同10円増配の年間62円(期末一括)で、予想配当性向は33.4%となる。
スマートフォンアフィリエイトASP事業の成長が加速し、PC・モバイル集客支援事業も好調に推移して大幅増収増益見込みだ。14年9月サービス開始で営業費用が先行しているスマートフォンアプリCMS/ASP事業も、販売代理店網の整備が進展して順次収益化が期待される。
第1四半期(1月~3月)は売上高10億83百万円、営業利益1億45百万円、経常利益1億45百万円、純利益88百万円で、売上高、利益とも四半期ベースで過去最高となった。IPO前の14年12月期第1四半期との比較では35.1%増収、2.0倍営業増益、2.0倍経常増益、2.0倍最終増益だった。
スマートフォンアプリCMS/ASP事業は営業費用が先行したが、スマートフォンアフィリエイトASP事業は3月期決算企業の年度末の広告予算取り込みなどで想定以上に好調だった。そしてPC・モバイル集客支援事業も順調だった。
通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が32.8%、営業利益が42.6%、経常利益が42.6%、純利益が43.1%と高水準である。スマートフォンアフィリエイトASP事業の売上変動などを考慮して通期会社予想を据え置いているが、15年12月期業績予想の増額は濃厚だろう。
さらに来期(16年12月期)にはスマートフォンアプリCMS/ASP事業の収益寄与も期待される。時代のニーズにいち早く対応できる技術力・開発力が強みであり、スマートフォンアフィリエイトASP事業、PC・モバイル集客支援事業、スマートフォンアプリCMS/ASP事業のシナジー効果も高まり、中期的に収益拡大基調が予想される。
■株価は下値を切り上げて戻り歩調に変化なし
株価の動きを見ると、6月10日の戻り高値8750円から利益確定売りで一旦反落したが、6月29日の6820円から切り返しの動きを強めている。7月3日には7620円まで戻した。15年2月の上場来安値5500円をボトムとして、下値を切り上げて戻り歩調に変化はないだろう。
7月6日の終値7410円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS185円45銭で算出)は40倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間62円で算出)は0.8%近辺、そして前期実績PBR(前期実績のBPS773円90銭で算出)は9.6倍近辺である。中期成長力を評価すれば割高な水準とは考えられない。
日足チャートで見ると25日移動平均線を一旦割り込んだが、素早く回復の動きを強めている。また週足チャートで見ると右肩上がりの13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。15年12月期業績予想は増額が濃厚であり、中期的にも高成長が期待される。下値を切り上げて戻り歩調に変化はないだろう。