【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三社電機製作所は自律調整一巡、16年3月期増収増益予想と増額含みを評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 三社電機製作所<6882>(東2)は電源機器事業と半導体事業を展開している。株価は6月高値後の自律調整が一巡して反発のタイミングのようだ。指標面の割安感が強く6月高値を試す展開だろう。16年3月期の増収増益予想と増額含みを評価して07年3月の上場来高値1350円も視野に入る。

■電源機器事業と半導体事業

 産業機器向けが主力の電源機器事業と半導体事業を展開している。パナソニック<6752>の持分法適用関連会社だが売上依存度は低い。生産は国内の滋賀工場、岡山工場、および中国で、海外生産比率は約20~30%である。

 電源機器事業では、太陽光発電用パワーコンディショナ、電力貯蔵システム用パワーコンディショナ、燃料電池シミュレータ電源、UPS(無停電電源装置)などのインバータを主力として、産業機器用の一般電源、メッキや自動車電着塗装などに強みを持つ金属表面処理用電源、アルミ溶接関連に強みを持つ溶接機器、映写機関連に強みを持つ光源用電源、および充電装置なども展開している。昭和8年に映写機用アーク電源を開発した歴史を持ち、メッキ関連の国内市場シェアは5割強である。

 半導体事業では、パワーエレクトロニクス関連の一般モジュールを主力として、ディスクリート、ウェハ・チップなども展開している。15年3月にはパナソニックと共同で、複数のSiC(炭化ケイ素)トランジスタを組み込んだ業界最小のSiCパワーモジュールを開発した。SiCパワーデバイスは、従来のSi(シリコン)パワーデバイスを超える低損失動作を実現できるため、大電流・高電圧用途における省エネルギー化のキーデバイスとして注目されている。

■16年3月期は大型案件も寄与して増収増益予想、さらに増額含み

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)45億94百万円、第2四半期(7月~9月)53億67百万円、第3四半期(10月~12月)55億34百万円、第4四半期(1月~3月)66億18百万円、営業利益は第1四半期2億93百万円、第2四半期4億61百万円、第3四半期7億53百万円、第4四半期7億94百万円だった。

 滋賀工場新棟の稼働遅延の影響が一巡したことも寄与して、期後半に営業損益改善が鮮明になった。また15年3月期の配当性向は16.9%、ROEは14年3月期比2.2ポイント低下して8.5%、自己資本比率は同5.9ポイント上昇して66.6%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.8%増の245億円、営業利益が同21.7%増の28億円、経常利益が同22.3%増の28億円、そして純利益が同19.5%増の18億円としている。配当予想は同6円増配の年間23円(第2四半期末10円、期末13円)としている。2期連続の増配で予想配当性向は19.1%となる。

 電源機器事業における再生可能エネルギー関連の大型案件(独立行政法人産業技術総合研究所向けの太陽光シミュレーション電源装置)も寄与して増収増益予想だ。前期減益の一因となった滋賀工場新棟の稼働遅延の影響が一巡して稼働率が上昇することも寄与する。想定為替レートは1米ドル=115円で、1円変動による為替感応度は営業利益段階で約15百万円としている。

 セグメント別の計画を見ると、電源機器事業は大型案件も寄与して売上高が同16.1%増の175億円、営業利益が同47.8%増の20億円、半導体事業は価格面でやや弱含みを想定して売上高が同0.6%減の70億円、営業利益が同15.5%減の8億円としている。

 主力製品の売上高は電源機器事業のインバータが同3.1%減の55億円、一般電源が同98.3%増の47億円、金属表面処理用電源が同9.6%増の28億50百万円、半導体事業の一般モジュールが同2.8%増の54億40百万円の計画だ。

 生産性改善が一段と進展する効果に加えて、為替が想定よりドル高・円安水準で推移していることも考慮すれば、16年3月期会社予想は保守的な印象が強く増額含みだろう。

■電力・再生可能エネルギー関連の市場拡大も追い風に収益拡大基調

 今後の事業展開としては、半導体事業では需要が拡大基調のパワーエレクトロニクス関連の市場環境変化にも対応しながら、組立工程完全自動化や設備稼働率適正化などにより収益力向上を目指す。新製品では15年3月に開発した超小型SiCパワーモジュールの拡販も期待される。

 電源機器事業では、創エネ・蓄エネ関連のインフラ系事業と各種生産設備用電源機器事業のバランスを意識しながら、中規模発電用太陽光パワーコンディショナ、系統安定化関連の無効電力補償装置や蓄電池内臓インバータ、UPS(無停電電源装置)など、国内市場向けインフラ系電源システムで主力製品・新製品の拡販を推進する。生産設備用電源では、金属表面処理用電源や溶接機のニッチ分野での新製品拡販、さらに銅箔・アルミ箔加工用など大型直流電源の海外展開も推進する。

 長年培った高度な技術力をベースに、電力系統安定化や電力小売全面自由化など電力・再生可能エネルギー関連分野の市場拡大も追い風として、中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は自律調整一巡して6月高値試す

 株価の動きを見ると、年初の安値圏500円台でのモミ合いから上放れて6月15日の1101円まで上伸した。08年8月以来の高値水準だ。その後は利益確定売りで一旦反落し、7月6日はギリシア問題による全般地合い悪化も影響して911円まで調整する場面があった。ただし自律調整一巡のタイミングのようだ。

 7月6日の終値920円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円46銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間23円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1249円11銭で算出)は0.7倍近辺である。割安感の強い水準だ。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を割り込んで調整局面の形だが、週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して反発のタイミングだろう。

 16年3月期は増収増益予想で増額含みである。予想PER10倍割れ、そして実績PBR1倍割れと指標面の割安感が強い。自律調整が一巡して6月高値を試す展開だろう。16年3月期の増収増益予想と増額含みを評価して07年3月の上場来高値1350円も視野に入る。

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