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加賀電子は上値試す、22年3月期は需要回復基調で再上振れの可能性
- 2021/12/27 08:16
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東1)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。中期経営計画2024では、基本方針にさらなる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。22年3月期は電子部品やEMSの需要が回復基調で大幅営業・経常増益予想としている。さらに再上振れの可能性もありそうだ。商社ビジネスとEMSビジネスのシナジー効果で収益拡大基調を期待したい。株価は11月の年初来高値圏から反落したが、利益確定売り一巡して切り返しの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。
■独立系の大手エレクトロニクス総合商社
独立系の大手エレクトロニクス総合商社で、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
富士通エレクトロニクスを19年1月に子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得、20年12月28日付で社名を加賀FEIに変更)した。なお株式を段階的に追加取得して22年1月に完全子会社化予定としていたが、スキームを一部変更し、簡易株式交換の方法によって22年1月1日付で完全子会社化する。
また19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気(20年4月民事再生法適用申請)から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。
21年3月期のセグメント別売上高構成比は、電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)84%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)11%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)4%、営業利益(調整前)構成比は電子部品事業72%、情報機器事業22%、ソフトウェア事業2%、その他事業4%だった。
中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他事業)とする。21年3月期売上構成比は電子部品事業が62%、EMS事業が24%、CSI事業が11%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が26%、EMS事業が48%、CSI事業が22%、その他事業が3%だった。
■収益力強化や新規事業創出を推進
21年11月発表した中期経営計画2024では、基本方針にさらなる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進、経営目標値に25年3月期の売上高7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益200億円、ROE8.5%以上(安定的に)を掲げている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。
重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。
M&Aでは、21年10月に加賀EFIが太陽誘電<6976>からBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継した。22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入する。
また21年7月には、ソフトバンクが設立したソフトバンク5Gコンソーシアムの5G関連パートナーとして参画した。5G関連通信設備・機器の提供などを通じて、5G普及促進とともに、事業を通じた社会貢献を追求するとしている。
12月13日には、大和インベスター・リレーションズが選定する2021年インターネットIR表彰において最優秀賞を受賞したとリリースしている。
■ベンチャー投資でイノベーション創出を支援
創立50周年を記念して設立した「50億円ファンド」を通じてベンチャー投資を行い、イノベーション創出を支援している。
出資実績としては、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンク、動画CM配信プラットフォーム事業やデジタルサイネージ事業CMerTVを展開するSun Asterisk、アジア圏を中心にライブ配信アプリ「17Live」などソーシャルメディアを展開する台湾のM17、医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズ、シェアリングプラットフォーム「Akice.style」を運営するレンタルサービスベンチャーのピーステックラボなどがある。
20年10月には、独自開発の光触媒技術を活用して各種環境製品を展開するカルテック(子会社化したエクセルがスタートアップ資金を出資)と、光触媒除菌脱臭機「TURNED K」の販売および製造に関わる部品調達で協業した。20年12月には、オンライン診療システム「D―CUBE」などオンライン健康支援事業を展開するリンケージに出資した。
21年5月には株式投資型クラウドファンディング事業者の日本クラウドキャピタルに出資、21年6月にはAI関連技術を開発するカタリナに出資した。21年10月にはドローン等無人航空機の企画・製造・販売を行うVFR(PCメーカーのVAIOの子会社)に出資、21年11月には堆肥化装置や脱臭装置等を開発・販売するミライエに出資した。12月8日には独自AI技術でエナジーインフォマティックス事業を展開するインフォマティックスに出資した。
■22年3月期は再上振れの可能性
22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用だが利益への影響は軽微、11月4日に利益を上方修正)は、売上高が21年3月期比11.3%増の4700億円、営業利益が30.8%増の150億円、経常利益が29.0%増の145億円、親会社株主帰属当期純利益が21.1%減の90億円としている。従来予想に対して営業利益を20億円、経常利益を25億円、親会社株主帰属当期純利益を10億円、それぞれ上方修正した。
配当予想(11月4日に第2四半期末5円、期末5円、合計10円上方修正)は、21年3月期比10円増配の90円(第2四半期末45円、期末45円、特別配当10円含む)とした。
親会社株主帰属当期純利益は前期計上の負ののれん発生益が剥落して減益だが、電子部品やEMSの需要が回復して大幅営業・経常増益予想としている。修正後のセグメント別の利益(調整前営業利益)計画は、電子部品事業が50.9%増の123億円、情報機器事業が19.4%減の20億円、ソフトウェア事業が24.0%減の2億円、その他事業が5.5%増の5億円としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比18.1%増の2230億09百万円、営業利益が87.2%増の83億円、経常利益が94.8%増の84億52百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の負ののれん発生益が剥落して47.8%減の56億24百万円だった。なお収益認識基準適用の影響で売上高が23億58百万円減少したが、利益への影響は軽微である。
電子部品事業は、売上高が23.9%増の1944億06百万円で、営業利益(調整前)が131.1%増の71億23百万円だった。半導体や電子部品の需給逼迫が続くなか、独立系商社としての強みを活かし、広範な業界からの旺盛な需要に対応した。EMSビジネスも車載関連や産業機械関連などが好調だった。M&Aで子会社化した加賀EFIとエクセルも大幅営業黒字に転換した。
情報機器事業は、パソコン販売におけるリモートワーク需要の一巡、電子部品不足による製品供給難、設備設置ビジネスにおける工程延伸などで、売上高が19.3%減の187億13百万円、営業利益が21.6%減の9億10百万円だった。ソフトウェア事業は売上高が2.9%減の12億37百万円で、営業利益が1億09百万円の赤字(前年同期は86百万円の黒字)だった。開発費が増加した。その他事業は売上高が15.3%増の86億51百万円で、営業利益が3億20百万円(同36百万円)だった。パソコンリサイクルビジネスが好調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1059億49百万円で営業利益が44億52百万円、第2四半期は売上高が1170億60百万円で営業利益が38億48百万円だった。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.4%、営業利益が55.3%、経常利益が58.3%、親会社株主帰属当期純利益が62.5%と順調である。第3四半期以降に、電子部品需給逼迫による機会損失リスクや、物流費高騰の影響などを見込んでいるが、さらに再上振れの可能性もありそうだ。商社ビジネスとEMSビジネスのシナジー効果で収益拡大基調を期待したい。
なおユーロテックジャパンが8月31日付で大阪地方裁判所に民事再生手続開始の申し立てを行ったことに伴い、9月1日に債権取立不能のおそれが生じたとリリースしている。8月30日現在の債権の種類および金額は貸付金等約19億円、棚卸資産約39億円(今後同社への販売により売掛債権が約42億円発生する予定)としている。今後、支援の条件やスキームについて同社と折衝を進め、所定の手続を経ることを条件に支援検討を進める方針としている。業績への影響は精査中(貸付金等に関しては21年3月期および22年3月期第1四半期に引当計上済み)としている。
■株価は上値試す
22年4月移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準に関する一次判定結果としてプライム市場適合を確認し、21年8月26日開催の取締役会においてプライム市場選択を決議した。東京証券取引所の定めるスケジュールに基づいて新市場区分選択申請に係る所定の手続きを進める。
株価は11月の年初来高値圏から反落したが、利益確定売り一巡して切り返しの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。12月24日の終値は3140円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS336円84銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の90円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3311円24銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約901億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)