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巴工業は調整一巡、22年10月期減益予想だが上振れの可能性
- 2021/12/27 08:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東1)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、および合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。21年10月期は化学工業製品販売事業の需要回復が牽引して大幅増収増益だった。22年10月期は需要堅調だが、売上構成差や経費増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。上振れの可能性がありそうだ。なお12月24日には会社ホームページに「サステナビリティ」ページを開設した。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。
21年10月期のセグメント別売上構成比は、機械製造販売事業が27%(機械が8%、装置・工事が3%、部品・修理が16%)で、化学工業製品販売事業が73%(合成樹脂関連が19%、工業材料関連が21%、化成品関連が16%、機能材料関連が8%、電子材料関連が9%、その他が1%)だった。営業利益構成比は機械製造販売事業が31%、化学工業製品販売事業が69%だった。なお22年10月期より化学工業製品事業の工業材料関連から新たに鉱産関連を分離して表示する。
機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い特性がある。
■22年10月期営業利益26億円目標
中期経営計画(第12回中期経営計画Change For The Future)では目標値として、22年10月期の売上高490億円(機械140億円、化学品350億円)、営業利益26億円(機械9億円、化学品17億円)、経常利益26億円、EBITDA30億円、純利益17億円、ROE(純資産利益率)5.7%を掲げている。
重点施策として、海外事業拡大の継続、さらなる収益性向上、環境負荷軽減、資本効率改善、成長に向けた積極投資、働き甲斐のある職場環境の構築と人材育成、SDGsへの取り組み強化を推進する方針だ。
21年7月には、AIが自律的に遠心分離機の運転制御を行う新しいデカンタ自動運転制御システム「セントニオ(CentNIO)」の販売を開始した。また10月7日にはHP上で「セントニオ」のプロモーション映像を公開している。
■21年10月期大幅増収増益、22年10月期減益予想だが保守的
21年10月期の連結業績は、売上高が20年10月期比15.1%増の451億32百万円、営業利益が25.8%増の28億43百万円、経常利益が26.6%増の29億05百万円、親会社株主帰属当期純利益が37.6%増の21億08百万円だった。配当は2円増配の50円(第2四半期末25円、期末25円)とした。
概ね計画水準(21年9月10日に2回目の上方修正)で着地した。化学工業製品販売事業における需要回復が牽引して大幅増収増益だった。なお特別利益に投資有価証券売却益23百万円、関係会社清算益62百万円を計上した。
機械製造販売は売上高が6.7%増の123億22百万円、営業利益が4.3%減の8億86百万円だった。売上面は国内民需が伸び悩んだが、国内官需装置・工事および部品・修理、海外部品・修理が伸長して増収だった。利益面は、収益性の低下や販管費の増加などで減益だった。化学工業製品販売は売上高が18.6%増の328億09百万円、営業利益が46.7%増の19億57百万円だった。自動車分野を中心に需要が回復し、樹脂原料・製品、自動車・建材用途向け材料、紫外線硬化樹脂、塗料・インキ用途向け材料・添加剤など、全分野で販売が増加した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が106億06百万円で営業利益が6億49百万円、第2四半期は売上高が124億42百万円で営業利益が12億85百万円、第3四半期は売上高が103億68百万円で営業利益が2億56百万円、第4四半期は売上高が117億16百万円で営業利益が6億53百万円だった。
22年10月期連結業績予想(収益認識基準適用のため売上高の増減率は非掲載)は、売上高が396億50百万円で、営業利益が16.0%減の23億90百万円、経常利益が17.4%減の24億円、親会社株主帰属当期純利益が7.0%減の19億60百万円としている。配当予想は21年10月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
機械製造販売事業は、売上高が128億円(機械が45億40百万円、装置・工事が14億70百万円、部品・修理が67億90百万円)で、営業利益が収益性の良い部品修理販売の減少と販管費の増加で12.1%減の7億80百万円の計画としている。
化学工業製品販売は、売上高が265億80百万円(22年10月期より工業材料関連から新たに鉱産関連を分離して表示、合成樹脂関連が38億52百万円、工業材料関連が46億50百万円、鉱産関連が40億59百万円、化成品関連が60億35百万円、機能材料関連が37億88百万円、電子材料関連が41億84百万円、その他が2億82百万円)で、営業利益が営業開発関係の販管費の増加で17.7%減の16億10百万円としている。
第12回中期経営計画の最終年度にあたり、計画達成に向けた重点施策として、SDGsへの取り組みを強化するとともに、機械製造販売では海外ビジネス(北南米、アジア・その他地域)の拡大、将来の成長に資するAI制御システムやバイナリー発電装置などの研究開発、コストダウンのための生産改革、化学工業製品販売では耐火物・建材・接着剤向けの販売拡大、建材・樹脂向けフィラーの販売シェア拡大、高機能商材の拡販や新規商材の拡充などを推進する。なお特別利益に社員寮売却益の計上を見込んでいる。
22年10月期は需要堅調だが、売上構成差や経費増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。上振れの可能性がありそうだ。
■株主優待制度は10月末の株主対象
株主優待制度は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、ワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
■株価は調整一巡
22年4月4日移行予定の新市場区分への移行については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認している。この結果に基づいて21年10月22日付で、東京証券取引所に対してプライム市場選択・申請を行った。
株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。12月24日の終値は2208円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS196円43銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3191円07銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約233億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)