アスカネットは22年4月期上振れ余地、自己株式取得も発表

 アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、空中結像ASKA3Dプレートの量産化も推進している。12月16日にはASKA3Dプレートがマクセルの空間映像マンマシンインターフェイスAFMIに採用されたと発表している。22年2月から量産開始となる。22年4月期はコロナ禍の影響が和らいで増収・営業増益予想としている。第2四半期累計が順調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。収益回復基調を期待したい。なお12月17日に「事業計画及び成長可能性に関する事項」をHP上で開示している。また12月23日には自己株式取得を発表している。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中結像AIも推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力として、非接触ニーズでも注目される空中結像ASKA3Dプレートの量産化・拡販を推進している。

 セグメント区分(22年3月期から名称変更)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業(従来のメモリアルデザインサービス事業)、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業(同パーソナルパブリッシングサービス事業)、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業(同エアリアルイメージング事業)としている。

 21年4月期のセグメント別構成比は、売上高がフューネラル事業43.2%、フォトブック事業54.7%、空中ディスプレイ事業2.1%、営業利益(調整前)がフューネラル事業75.7%、フォトブック事業57.8%、空中ディスプレイ事業▲33.4%だった。

 フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 フューネラル事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。92年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。21年4月期末のハード設置件数は2578ヶ所、21年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約36.7万枚、電照焼増枚数が約12.3万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約30%(1位)である。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加、20年11月には故人を偲ぶ「inori」の提供を開始した。21年1月には「tsunagoo」による訃報作成数が累計5万件を突破した。

 21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破した。全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透したことになる。

 21年8月には、コロナ禍の影響で報告が遅くなりがちな葬儀の報告をスムーズに行えるサービス「tsunagoo AFTER」をリリースした。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力として、NTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。

 21年1月には、スマートフォンやパソコンから簡単に出産報告や出産お祝い金の受け渡しができるWebサービスの「e-tayori(いい・たより)」(特許出願中)を開始した。コロナ禍でウエディング関連が厳しい環境のため、スタジオ写真向けや建築写真向け商品の拡販にも注力している。

 なお21年4月期末時点で、約4720社の写真館向けなどに年間約40万冊(OEM除く)を提供している。マイブック会員数は約28.1万人となった。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレートの本格量産目指す

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。21年7月には、ENEOSが実施する非接触セルフ給油機の実証実験にASKA3Dプレートが採用された。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として、開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートの従来よりも大きい250mm角サイズを開発し、21年4月からサンプル販売を開始した。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。

 生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。

 営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。ドバイの代理店Easy Way社は、21年10月にドバイで開催された「GITEX Global2021」に出展した。

 12月16日にはASKA3Dプレートがマクセルの空間映像マンマシンインターフェイスAFMIに採用されたと発表している。従来の空間映像表示装置よりも高輝度かつ高精細な空中映像を可能にした。22年2月から量産開始となる。

■22年4月期増収・営業増益予想、さらに上振れ余地

 22年4月期業績(非連結、収益認識基準適用だが損益への影響なし)予想は、売上高が21年4月期比8.6%増の62億70百万円、営業利益が2.7%増の2億85百万円、経常利益が13.9%減の2億85百万円、当期純利益が11.3%減の2億円としている。配当予想は21年4月期と同額の7円(期末一括)である。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比比13.4%増の29億30百万円、営業利益が1億13百万円の黒字(前年同期は56百万円の赤字)、経常利益が1億17百万円の黒字(同7百万円の赤字)、四半期純利益が80百万円の黒字(同10百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響が和らいで2桁増収となり、各利益とも黒字転換した。概ね計画水準で着地と順調だった。

 セグメント別(22年4月期から名称変更、内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は売上高が11.1%増の12億79百万円で営業利益が19.7%増の2億99百万円だった。遺影写真加工収入や動画等葬儀演出サービスなどの売上が増加した。葬儀の小型化が継続しているが、葬儀施行件数が徐々に正常化し、新規契約件数も順調に増加した。ITサービス「tsunagoo」も評価されて農協・互助会の大型契約を獲得した。

 写真集関連のフォトブック事業は売上高が15.6%増の15億94百万円で営業利益が3.1倍の2億47百万円だった。旅行やイベントの自粛による撮影機会減少で一般消費者向けは厳しい状況が続いているが、プロ写真家向けのウエディング関連においてコロナ禍の影響が緩やかに和らいで売上が想定以上に回復した。売上回復に伴って売上原価率が改善した。

 空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業は、売上高が5.3%増の57百万円で営業利益が1億70百万円の赤字(前年同期は1億23百万円の赤字)だった。コロナ禍で営業活動が制約を受けたため売上の伸びが小幅にとどまり、技術開発センター本格稼働に伴って研究開発費が増加したため赤字が拡大した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が14億66百万円で営業利益が42百万円、第2四半期は売上高が14億64百万円で営業利益が71百万円だった。

 通期予想は据え置いている。事業環境としてコロナ禍の影響が期末に向けて徐々に和らぐことを想定し、増収・営業増益予想としている。費用面では減価償却費や研究開発費などが増加するが、増収効果で吸収する見込みだ。なお経常利益と当期純利益は前期計上した保険解約益の剥落で減益予想としている。
 セグメント別の売上高の計画は、フューネラル事業が8.6%増の62億70百万円、フォトブック事業が7.7%増の34億円、空中ディスプレイ事業が2.4倍の3億円としている。

 フューネラル事業では、クロスメディアによる「tsunagoo」のプロモーション強化や、AIによる新たな画像処理の研究開発などを推進する。フォトブック事業では、ウエディング業界の変化に対応した小型ウエディング・フォトウエディング向けサービスの開発、新規領域としての建築ルートの開拓、Webサービス「e-tayori」の機能強化やプロモーション強化、OEM生産ライン効率化などを推進する。空中ディスプレイ事業では、国内外での営業強化よって樹脂製中ロット量産案件の獲得を推進する。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が46.7%、営業利益が39.6%、経常利益が41.1%、当期純利益が40.0%である。低水準の形だが、下期の構成比が高い収益特性に加えて、コロナ禍の影響が期末に向けて徐々に和らぐ想定であることを考慮すれば、概ね順調と言えるだろう。後半に向けて需要が回復ペースを速めることも予想され、会社予想に上振れ余地がありそうだ。収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。21年2月には、利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。

■株価は売り一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でグロース市場適合を確認し、21年11月19日開催の取締役会においてグロース市場選択・申請を決議している。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 12月23日に自己株式取得を発表した。上限14万5000株・1億円、取得期間21年12月24日~22年4月28日としている。

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。12月24日の終値は719円、今期予想PER(会社予想のEPS11円87銭で算出)は約61倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約1.0%、前期実績PBR(前期実績のBPS345円75銭で算出)は約2.1倍、時価総額は約126億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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