- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- KeyHolderはコロナ禍の影響緩和で22年12月期収益改善期待
KeyHolderはコロナ禍の影響緩和で22年12月期収益改善期待
- 2021/12/28 08:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
KeyHolder<4712>(JQ)は総合エンターテインメント事業を展開し、映像コンテンツ業界におけるコンテンツサプライヤーおよびコンテンツホルダーとしての成長を目指している。21年12月期は成長加速に向けた先行投資で減益予想だが、コロナ禍の影響緩和や先行投資の効果も寄与して22年12月期の収益改善を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが、調整一巡して出直りを期待したい。
■事業ポートフォリオ再編して総合エンターテインメント事業が主力
17年10月に旧アドアーズが持株会社に移行して商号をKeyHolderに変更し、M&Aも活用して事業ポートフォリオを再編した。
従来の主力だったアミューズメント施設運営事業と不動産事業・商業施設建築事業をグループアウトした一方で、20年8月に映像コンテンツやライブコンサートなどのトータルプロデュース事業を行うノース・リバーを連結子会社化、アイドルグループ「乃木坂46」を運営する芸能プロダクションの乃木坂46合同会社(ノース・リバーが持分50%保有)を持分法適用関連会社化した。
現在は、アイドルグループ「SKE48」や「乃木坂46」などの管理・運営を行う総合エンターテインメント事業(ライブ・エンタメ部門、スポーツ部門、スクール部門、デジタル・コンテンツ部門)を主力として、バラエティ番組・テレビドラマ・映画製作などを行う映像制作事業、大手CVSチェーンにおける販促企画を提供する広告代理店事業を展開している。
20年12月期末時点の事業体制・主要グループ会社は、アイドルグループ「SKE48」マネジメント等のゼスト、トータルプロデュース事業のノース・リバー、アイドルグループ「乃木坂46」運営の乃木坂46合同会社(持分法適用関連会社)、イベント企画・運営やモデルマネジメント等のホールワールドメディア(角川春樹事務所と合弁)、広告代理店事業やデジタル・コンテンツ事業のallfuz、デジタル広告事業やカラーコンタクトレンズ販売のFA Project、テレビ番組など映像制作事業のUNITED PRODUCTIONS、映像制作関連クリエイター・スタッフ派遣のワイゼンラージなどである。
12月8日には、ワイゼンラージが22年1月11日付でUNITED PRODUCTIONSの映像制作事業を承継するとともに、ワイゼンラージの商号を新UNITED PRODUCTIONSに変更、旧UNITED PRODUCTIONSの商号をTechCarryに変更すると発表した。再編後の事業内容は新UNITED PRODUCTIONSがテレビ番組制作事業、メディ事業、職業紹介・労働者派遣事業等、TechCarryが撮影機材管理・レンタル事業等となる。
なお20年12月には、親会社のJトラスト<8508>が保有する当社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡して、Jトラストの持分法適用関連会社となった。また21年3月には本社を移転するとともに、グループ各社の本社を集約してコストや業務の効率化を図っている。
■エージェント構想&ファンクラブプラットフォーム
総合エンターテインメント事業では、中期展望として「エージェント構想&ファンクラブプラットフォーム」を掲げている。
20年12月には、第一興商<7458>と資本業務提携(第一興商を割当先とする新株式発行、コンテンツ・マネジメント・ライツ・出版・新サービス関連での業務提携)、および韓国大手芸能事務所エスエム・エンタテインメントの日本法人SMEJの子会社SMEJ Plusと資本業務提携(SMEJ Plusを割当先とする新株式発行、ファンクラブ関連・新規ファンビジネス関連での業務提携)した。
コンテンツ開発から総合的なマネタイズまでをカバーする体制となり、映像コンテンツ業界におけるコンテンツサプライヤーおよびコンテンツホルダーとして、コンテンツ(アーティスト、タレント、プロスポーツ選手など)の拡充、グループリソースを活用した展開をサポートするためのエージェント機能の強化、媒体・モデルを活用した情報発信などを推進し、グループシナジーによって成長を目指す方針だ。
21年2月には子会社のallfuzが、フォーサイド<2330>の子会社であるフォーサイドメディアから映像制作事業を譲り受けて事業開始した。
12月17日には、20年12月に締結したSMEJ Plusとの資本業務提携の進捗状況をリリースした。SMEJ Plusが有するファンクラブの企画・運営ノウハウに対して、アプリ開発およびコンテンツ企画・制作から情報発信、リアルイベントなども含むプロモーション全般に係るリソースを提供することで、韓国からの新規アーティストおよび既存アーティストのファンクラブに向けた付加価値、ならびにリアルコンテンツの開発に係る協議を開始し、新たな展望を見出すこととした。
■21年12月期減益予想、コロナ禍影響緩和で22年12月期収益改善期待
21年12月期の連結業績予想(IFRS、8月12日に上方修正、従来予想に対して減益幅が縮小見込み)は、売上収益が20年12月期比49.5%増の160億円、営業利益が12.8%減の14億円、親会社株主帰属当期純利益が22.4%減の10億円としている。配当予想は20年12月期と同額の10円(期末一括)としている。
第3四半期累計は、売上収益が前年同期比84.7%増の115億92百万円、営業利益が59.6%減の4億98百万円、親会社株主帰属四半期純利益が64百万円の赤字(前年同期は11億91百万円の黒字)だった。
総合エンターテインメント事業が牽引して大幅増収となり、売上総利益も大幅増加(12億94百万円増加の25億85百万円)したが、販管費の増加(5億04百万円増加の29億78百万円)や、持分法投資利益の減少(17億24百万円減少の7億30百万円)で営業減益だった。また金融費用に計上した投資有価証券評価損2億90百万円も影響して最終赤字だった。
総合エンターテインメント事業は売上収益が145.8%増の73億23百万円で営業利益が55.8%減の8億55百万円、映像制作事業は売上収益が5.5%増の28億57百万円で営業利益が8.4%減の1億21百万円、広告代理店事業は売上収益が279.5%増の11億27百万円で営業利益が1億10百万円の黒字(前年同期は3億06百万円の赤字)、その他事業は売上収益が3.3%減の2億83百万円で営業利益が1百万円の赤字(前年同期は21百万円の赤字)だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上収益37億06百万円で営業利益6億97百万円の黒字、第2四半期は売上収益41億36百万円で営業利益1億62百万円の赤字、第3四半期は売上収益37億50百万円で営業利益37百万円の赤字だった。
通期予想は据え置いている。成長加速に向けた先行投資などを考慮して減益予想だが、売上面はコロナ禍で厳しい状況ながらも、総合エンターテインメント事業において子会社ノース・リバーおよび持分法適用関連会社の乃木坂46合同会社の事業運営が好調に推移する見込みだ。また映像制作事業では番組制作やドラマ案件の撮影・ロケが順調に推移し、広告代理店事業では新たにデジタル広告を開始したことも寄与する。
なお12月24日には、NLHD(Jトラストの代表取締役社長最高執行役員である藤澤信義氏が100%保有する投資会社)が保有する株式を対価とする株式譲渡契約を締結し、これに伴う譲渡益7億49百万円を第4四半期に計上すると発表している。
総合エンターテインメント事業が順調であり、コロナ禍の影響緩和や先行投資の効果も寄与して22年12月期の収益改善を期待したい。
■株主優待制度は休止
株主優待制度については、事業環境の変化で対面を含む企画が当初想定と異なる形での提供となるため、21年12月末基準日対象から休止(詳細は会社HP参照)することとした。
■株価は調整一巡
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場適合を確認し、21年11月12日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが、調整一巡して出直りを期待したい。12月27日の終値は613円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円71銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS830円38銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約106億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)