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WOW WORLDは反発の動き、22年3月期大幅増収増益予想
- 2021/12/29 08:52
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
WOW WORLD<2352>(東1)はメール配信システムの大手である。自社開発e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズをベースとして、企業のCRM運用支援を展開している。22年3月期はクラウドサービスの成長やM&A効果で大幅増収増益予想としている。収益拡大基調を期待したい。なお12月10日に自己株式取得、12月15日に新市場区分であるプライム市場の上場維持基準の適合に向けた計画書を発表している。株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新する場面があったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力
旧エイジアが21年7月1日付で商号をWOW WORLD(ワオワールド)に変更した。さらにM&Aを加速させるため22年7月には持株会社(仮称:WOW WORLD GROUP)へ移行予定である。
自社開発e-CRMシステムの「WEBCAS」シリーズをベースとして、企業のCRM運用支援を行うアプリケーション事業、コンサルティング事業、システム受託開発事業、EC事業(子会社ままちゅのベビー服ECサイト「べびちゅ」運営)を展開している。20年10月には国産クラウドCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のトップベンダーであるコネクティをグループ化した。
eメールを活用したマーケティングソリューションを強みとしている。メール配信システム「WEBCAS e-mail」は、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。「WEBCAS」シリーズはメール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心とするe-CRMアプリケーションシリーズで、導入企業数は21年9月30日時点で7500社を突破した。国内メール配信パッケージ市場シェア1位(ITR発行の市場調査レポート、2019年度ベンダー別売上金額)である。
なお21年10月に、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびISMSクラウドセキュリティ(ISMS―CS)の認証を更新した。
■セグメント区分を変更
21年3月期のセグメント別売上高構成比はアプリケーション事業71%、コンサルティング事業21%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業7%、営業利益構成比(調整前)はアプリケーション事業96%、コンサルティング事業6%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業▲2%だった。
22年3月期からセグメント区分を、エンタープライズ・ソフトウェア事業(従来のアプリケーション事業、デジタル・マーケティング運用支援事業(従来のコンサルティング事業)、EC事業、その他(従来のオーダーメイド開発事業)に変更した。
エンタープライズ・ソフトウェア事業はマーケティングプラットフォーム「WEBCAS」シリーズの開発・販売、およびコネクティのエンタプライズCMS「Connecty CMS onDemand」の開発・販売、デジタル・マーケティング運用支援事業は「WEBCAS」シリーズを活用するためのコンサルティング、Webサイト制作支援・コンサルティング、およびコネクティのCMSの運用である。
EC事業は、製品開発を強化するため、ECのマーケティングノウハウを吸収して製品開発のヒントを得る研究的位置付けとして展開している。オーダーメイド開発事業は、新規受注を積極的に展開せず、既存の利益率の高い案件のみを継続している。
収益面では下期の構成比が高い特性があり、クラウドサービスの拡大によってストック型構造の特性を強めている。また特定の大型案件の影響を薄めて売上高の平準化を進めている。
■クラウドサービスやM&Aで中期成長目指す
中期経営計画の目標値(21年5月11日に上方修正)は、最終年度23年3月期売上高38億円、EBITDA11億円としている。なお23年3月期からIFRS(国際会計基準)適用予定である。コネクティの連結に加えて、デジタル化需要の拡大でクラウドサービスが想定以上に伸長しているため、初年度の21年3月期が計画に対して上振れた。このため2年度目以降の計画を上方修正した。
顧客のマーケティング活動に対する横断的なソリューションの提供を目指し、M&Aを積極活用して、クラウドサービスを中心とする既存事業の飛躍的成長、グループシナジーの創出、財務戦略の最適化などを推進する。
なお19年11月には、インタートレード<3747>の子会社で暗号資産関連事業を展開するデジタルアセットマーケッツに出資している。また20年5月には、日本成長投資アライアンス(J―GJA)と業務提携し、J-GIA1号投資事業有限責任組合に対して第7回新株予約権を発行している。
21年7月にはベビー服ECサイト「べびちゅ」において、世界125ヶ国に向けて多言語対応の越境ECを開始した。21年10月には、子会社コネクティが新開発したCDP(Customer Date Platform)サービス「Connecty CDP」の販売開始を発表した。
■22年3月期大幅増収増益予想
22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比33.7%増の31億50百万円、EBITDAが50.3%増の8億50百万円、営業利益が45.8%増の6億円、経常利益が41.1%増の6億円、親会社株主帰属当期純利益が52.3%増の3億39百万円としている。配当予想は5円増配の30円(期末一括)としている。連続増配予想である。
重点施策として、既存顧客のロイヤリティ向上に特化するカスタマーサクセスチームを営業組織内に新設し、SaaSスタンダード解約率低下やSaaSプレミアム顧客単価向上などを推進する。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比50.7%増の13億88百万円で、EBITDAが62.1%増の3億17百万円、営業利益が40.6%増の2億16百万円、経常利益が38.6%増の2億14百万円、そして親会社株主帰属四半期純利益が20.0%増の1億17百万円だった。収益認識基準適用の影響額として、売上高は66百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益はそれぞれ58百万円増加した。
クラウドサービスの伸長やコネクティの連結(21年3月期第3四半期から連結)などで大幅増収増益だった。コネクティの連結に伴って人件費、仕入・外注費、減価償却費、のれん償却費などが増加し、ストックオプション発行に伴う株式報酬費やIFRS準備対応コストが発生したが、増収効果で吸収した。EBITDAマージンは22.9%で1.6ポイント上昇した。
エンタープライズ・ソフトウェア事業の売上高は32.6%増の9億44百万円だった。売上総利益率は前年同期との変わらず68.1%だった。コネクティの連結も寄与して、サブスクリプション型クラウドサービスが33.8%増の7億68百万円(CRMが6億57百万円、CMSが1億10百万円)と大幅伸長した。期末時点のCRMクラウドサービス継続契約数は、SaaSプレミアム版が21年3月期末比2社増加の234社、スタンダード版が111社増加の1237社、CMSクラウドサービス継続契約数は4社増加の34社となった。
デジタル・マーケティング運用支援事業の売上高は3.3倍の3億80百万円(CRMが1億26百万円、CMSが2億54百万円)だった。売上総利益率は2.3ポイント上昇して24.8%となった。コネクティの連結が寄与した。
EC事業の売上高は33.4%減の61百万円だった。売上総利益率は0.2ポイント上昇して41.8%となった。緊急事態宣言の長期化でターゲット層である「お出掛け需要」が減少した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が6億77百万円、EBITDAが1億47百万円、営業利益が1億円、第2四半期は売上高が7億11百万円、EBITDAが1億70百万円、営業利益が1億16百万円だった。
通期予想は据え置いた。クラウドサービスの伸長(31.0%増の17億31百万円)や、コネクティの通期連結(21年3月期は6ヶ月分)などで大幅増収増益予想としている。
セグメント別売上高の計画は、エンタープライズ・ソフトウェア事業が22.3%増の20億54百万円(クラウドCRMが24.9%増の15億20百万円、クラウドCMSが2.0倍の2億10百万円、オンプレミスが10.0%減の3億23百万円)、デジタル・マーケティング運用支援事業が80.3%増の9億07百万円(CRMが8.4%増の2億75百万円、CMSが2.5倍の6億32百万円)、EC事業が11.4%増の1億84百万円、その他が4百万円としている。
第2四半期累計の進捗率は売上高が44.1%、EBITDAが37.3%、営業利益が36.0%、経常利益が35.7%、親会社株主帰属当期純利益が34.5%である。やや低水準の形だが、下期の構成比が高い収益特性があり、クラウドサービスの伸長でストック型収益構造の特性を強めていることも勘案すれば、通期予想の達成は可能だろう。通期ベースでも収益拡大基調を期待したい。
■株主優待制度は3月末と9月末の2単元以上保有株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日および9月30日時点の2単元(200株)以上保有株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて株主優待ポイントを進呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は反発の動き
22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果で流通株式時価総額がプライム市場の基準を充たしていなかったため、21年12月15日にプライム市場選択申請書を提出するとともに、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を作成・開示した。中期経営計画に基づき、経営目標の達成に向けて各種施策を着実に推進するとともに、情報開示、コーポレートガバナンス充実、株主還元等の取り組みによって企業価値の向上を図り、23年3月期までにプライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。
21年12月10日には自己株式取得を発表した。上限7万株・1億円で取得期間は21年12月13日~22年1月31日としている。取得した自己株式は全て消却予定としている。
株価は地合い悪化の影響で年初来安値を更新する場面があったが、調整一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。12月28日の終値は1502円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS85円34銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS438円87銭で算出)は約3.4倍、時価総額は約61億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)