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クリナップは反発の動き、22年3月期は再上振れの可能性
- 2022/1/4 08:47
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。22年3月期は大幅増益予想としている。原材料高の影響などを考慮して下期を慎重な見込みとしているが、需要が回復傾向であり、原価低減効果も寄与して再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は21年9月の昨年来高値から反落し、地合い悪化も影響して水準を切り下げる場面があったが、その後は下値を切り上げて反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。21年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門が79%、浴槽・洗面部門が14%、その他が7%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%だった。
中高級品に強みを持ち、厨房部門はステンレスキャビネットキッチンのセントロ、ステディア、システムキッチンのラクエラ、コンパクトキッチンのコルティ、浴槽・洗面部門はバスルームのアクリアバス、ユアシス、洗面化粧台のティアリスなどを主力製品としている。
中高級品市場での更なる競争力強化に向けて、20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。21年10月には福井ショールーム(福井県福井市)を移転オープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。21年3月期の販売ルート別売上構成比(単体ベース)は、一般ルート(工務店・リフォーム)が80%、ハウスメーカーが15%、直需(マンション)が5%だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」
中期経営計画(21~23年度)では、目標数値に最終年度24年3月期の売上高1200億円、営業利益50億円、営業利益率4.2%を掲げている。さらにサステナブルビジョンとして「人と暮らしの未来を拓く」を掲げている。さらに長期ビジョンの目標は30年度に、20年度比で売上高30%増、販管費比率30%以下、営業利益3.5倍としている。
重点施策としては、既存事業の需要開拓と低収益からの脱却、新規事業による新たな顧客の創造、ESG・SDGs視点での経営基盤の強化を推進する。
既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。
システムキッチンの新製品では、21年10月にニューノーマル時代の新生活提案キッチン「HIROMA」の本格販売を開始した。キッチンの要素を極力シンプルにしてダイニングテーブルと融合することで、新しいLDKの在り方や暮らしを提案するキッチンテーブルである。さらに22年2月には新「STEDIA」の投入を計画している。
なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。21年7月には21年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、9年間で累計奨学生360名となった。
■22年3月期大幅増益予想、さらに再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用、11月5日に上方修正)は、売上高が21年3月期比8.0%増の1125億円、営業利益が22.4%増の32億円、経常利益が32.6%増の36億円、親会社株主帰属当期純利益が31.7%増の23億円としている。配当予想は21年3月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)である。
第2四半期累計は売上高が前年同期比15.2%増の549億37百万円、営業利益が21億66百万円(前年同期は85百万円)、経常利益が24億10百万円(同1億71百万円)、親会社株主帰属四半期純利益が15億52百万円(同1億42百万円の赤字)だった。
なお収益認識基準適用で、売上高が3億70百万円増加、売上原価が5億97百万円増加、売上総利益が2億26百万円減少、販管費が45百万円増加、営業利益が1億81百万円減少、営業外費用が2億07百万円減少、経常利益が26百万円増加している。
売上面ではリフォーム需要を取り込んで計画を上回る増収となり、原価低減や経費抑制なども寄与して各利益も計画を上回る大幅増益だった。部門売上高は厨房部門が17.5%増の437億48百万円、浴槽・洗面部門が8.5%増の77億66百万円だった。売上総利益率は0.8ポイント上昇し、販管費比率は3.0ポイント低下した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が269億01百万円で営業利益が10億90百万円、第2四半期は売上高280億36百万円で営業利益10億76百万円だった。
第2四半期累計が計画を上回ったため通期連結業績予想を上方修正したが、第2四半期累計の上振れ幅(売上高14億37百万円、営業利益8億66百万円、経常利益10億60百万円、親会社株主帰属四半期純利益7億22百万円)と、通期上方修正幅(売上高25億円、営業利益4億円、経常利益7億円、親会社株主帰属当期純利益5億円)を比較すると、下期の利益を下方修正した形になる。
原材料高の影響などを考慮して下期を慎重な見込みとしているが、積極的な営業活動、生産設備の整備、ショールームの改装、情報基盤整備への投資、原価低減、全社的なコスト削減を推進するとしている。修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.8%、営業利益が67.7%、経常利益が66.9%、親会社株主帰属当期純利益が67.5%と高水準である。需要が回復傾向であり、原価低減効果も寄与して通期会社予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株価は反発の動き
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分の上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場適合を確認し、21年12月6日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。
株価は21年9月の昨年来高値から反落し、地合い悪化も影響して水準を切り下げる場面があったが、その後は下値を切り上げて反発の動きを強めている。低PBRも見直し材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月30日の終値は547円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS62円35銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1430円20銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約205億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)