アイリッジはDXソリューションカンパニーへの進化を目指す、株価は下値固め完了感強める

アイリッジ<3917>(東マ)は、企業のO2O・OMOを支援するデジタル・フィジカルマーケティングソリューションをベースに、デジタル地域通貨など新規事業領域も拡大してDXソリューションカンパニーへの進化を目指している。1月5日にはLINE上でリピート購入とマーケティングDXを実現する「購入スタンプミニアプリforメーカー」の提供を開始した。22年3月期はデジタルマーケティング領域が牽引して大幅営業増益予想(レンジ予想)としている。収益改善基調だろう。株価は上値が重くモミ合い展開だが一方では下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお2月10日に22年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大

企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するデジタル・フィジカルマーケティング領域(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)のソリューションをベースとして、デジタル地域通貨など新規事業領域も拡大している。

21年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が23%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が77%だった。

デジタルガレージ<4819>との資本業務提携を21年2月に解消した。デジタルガレージから株式80%を取得したセールスプロモーションの連結子会社DGマーケティングデザイン(DGMD)については両社の株式保有を継続し、21年4月1日付でQoil(コイル)に社名変更した。

なおwithコロナ対応として、オフィスを約5割削減・再編して、出社勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型働き方に最適な環境と勤務体制「iRidge Hybrid Working Style」を構築した。

■デジタル・フィジカルマーケティング領域はFANSHIPが主力

デジタル・フィジカルマーケティング領域は、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPを主力としている。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月にブランドリニューアルした。さらにFANSHIPを活用し、LINEサービスに組み込んで使えるLINEミニアプリに対応するアプリ開発プラットフォーム「FANSHIP for ミニアプリ」も展開している。

22年3月期第2四半期時点のFANSHIP導入アプリの合計MAU数(四半期平均)は、21年3月期第2四半期比1256万ユーザー増加(26.6%増加)の5977万ユーザーとなった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。21年12月には、FANSHIPが福井県民生活協同組合の「ハーツアプリ」に導入された。また、キュービーネットのLINEミニアプリ「QB HOUSE」の開発を支援した。

■DXソリューションカンパニーへの進化を目指す

今後はリアルチャネル保有企業向けのDXソリューションカンパニーへの進化を目指し、デジタル・フィジカルマーケティング領域におけるFANSHIPを中心としたクラウド型プロダクトおよびソリューションの強化・拡充、顧客ニーズに合わせたプロフェッショナルサービスによるDX支援の強化を両輪として、新規事業の立ち上げ・収益化も推進する方針だ。

中期的な目標値としては、26年3月期の売上高133億円+αを目指すとしている。利益面については、当面は採用費用や新規事業への先行投資費用の増加が見込まれるが、販管費を適切にコントロールして、営業利益は毎期着実な増益を目指すとしている。

1月5日には子会社のQoilが一般消費財メーカー等に向けて、LINE上でリピート購入とマーケティングDXを実現する「購入スタンプミニアプリforメーカー」の提供を開始すると発表した。デジタルスタンプカード機能で特典が受けられる仕組みを通じて長期的な顧客接点を形成し、LINEを通じたOne to Oneマーケティングによるファン育成(顧客定着化)を実現する。

■デジタル地域通貨プラットフォームの展開を加速

フィンテック領域(デジタル地域通貨)は子会社フィノバレーが、決済システムを中心としたデジタル地域通貨プラットフォームMoneyEasyを展開している。ファン育成プラットフォームFANSHIPと組み合わせて、マーケティング機能を融合した決済基盤構築も可能となる。地域経済活性化施策として自治体におけるデジタル地域通貨需要が高まっていることも背景に事業展開を加速している。

システム提供実績として岐阜県飛騨・高山地域の「さるぼぼコイン」、千葉県木更津市の「アクアコイン」、長崎県南島原市の「MINAコイン」、東京都世田谷区の「せたがやPay」、東京都江東区の「カケハシコイン」、大分銀行の「デジタル商品券発行スキーム」などがある。なお岡山県真庭市では「公金キャッシュレス・市民ポイント調査研究業務」の優先交渉権を獲得(20年12月)している。

21年6月には「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」の第2期プロジェクトのインバウンド・観光再生に関するコーディネーター企業に選出された。21年10月には岐阜県観光連盟の電子観光クーポン事業「ぎふ旅コイン」に採用された。岐阜県飛騨・高山地域「さるぼぼコイン」とも連携して約1100店舗で利用可能である。

21年11月には長野県松本市の電子クーポン「まつもとコイン」に採用された。また、神戸市「大学発アーバンイノベーション神戸」選定事業として採択された通期通貨アプリ実証実験「すいすいコイン」のプラットフォームとして採用された。水道筋商店街周辺の加盟店で2ヶ月間の実証実験を行う。21年12月には熊本県人吉市のデジタル地域通貨「きじうまコイン」に採用された。

■新規事業領域も育成

新規事業領域の育成も強化している。18年9月にはAIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDを提供開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。

20年11月にはソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONETが設立したMONETコンソーシアムに参画した。MaaS事業への取り組みを強化する。また欧州系最大の戦略コンサルティングファームの日本法人ローランド・ベルガーの価値共創ネットワーク(VCN)に参画した。

21年2月には、小売業界向けSaaS型オンラインプラットフォームを提供するFlow Solutionsと資本業務提携した。またオンライン・モンスターと提携し、接客・相談・学習指導など対面サービスを提供する企業向けに、対面サービスのオンライン化を実現するビデオ通話機能付マッチングプラットフォームの提供を開始した。さらに、メディカルネット(20年5月に歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携)と共同で、マッチングプラットフォームを利用したオンライン歯科相談サロン「デンタルオンラインサロン」と、業界初の歯科用口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診察サービス「デンタルオンライン」の提供を開始した。

21年5月には、DXプロジェクトに必要な人材調達・稼働管理などの業務効率を改善し、外部企業とのコラボレーションを促進するリソース最適化支援プラットフォーム「Co―Assign」の提供開始を発表した。プロジェクト成功の確度を高める体制づくりを支援するクラウドサービスとして、24年度中の500社導入を目指すとしている。

21年8月にはワイヤ・アンド・ワイヤレス、データセクション、Flow Solutionsおよび子会社Qoilと、リテールDXプラットフォームの共同展開に関して業務提携した。小売企業のDXを支援する。

21年12月にはFlow Solutions、三菱商事UBSリアリティと、21年11月にオープンしたサステナブル&OMO体験ポップアップストア「mozo SUSTAINABLE PARK」の実証実験プロジェクトに参画した。

■22年3月期大幅営業増益予想

22年3月期連結業績予想(経常利益と親会社株主帰属当期純利益は非開示)は、売上高が48億円~55億円(21年3月期比10.0%増~26.1%増)、営業利益が1億50百万円~2億円(同32.7%増~76.9%増)としている。

第2四半期累計は、売上高が前年同期比15.9%増の24億17百万円、営業利益が80百万円の黒字(前年同期は15百万円の赤字)、経常利益が79百万円の黒字(同13百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が43百万円の黒字(同11百万円の赤字)だった。デジタルマーケティング領域が牽引して大幅増収となり、事業拡大に向けた採用強化に伴う採用費・人件費の増加を吸収して各利益とも黒字転換した。収益認識基準適用の影響額として、売上高が1億34百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ35百万円増加した。

単体ベースの売上高は15.3%増の14億73百万円だった。アプリ開発やアプリマーケティング関連が好調に推移し、第2四半期累計として過去最高の売上高となった。連結子会社Qoil他の売上高は17.0%増の9億44百万円だった。コロナ禍の影響が和らいでオフラインプロモーション領域の売上が回復傾向となった。増収効果に加えて、重点的に取り組んでいる開発内製化の進展などで全体の売上総利益率が2.8ポイント改善し、販管費の増加を吸収した。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が11億35百万円、売上総利益率が32.9%、営業利益が3百万円、第2四半期は売上高が12億81百万円、売上総利益率が36.8%、営業利益が77百万円だった。ストック型収益の売上高は第1四半期が4億02百万円(売上構成比35.5%)、第2四半期が4億12百万円(同32.2%)だった。FANSHIP導入アプリ合計MAU(四半期平均)は、第1四半期が前年同期比22.6%増の5788万ユーザー、第2四半期が26.6%増の5977万ユーザーだった。

通期予想は据え置いている。オフラインプロモーション領域へのコロナ禍の影響を考慮してレンジ予想だが、成長に向けた投資を継続しながらもデジタルマーケティング領域が牽引して大幅増収・営業増益予想としている。通期予想の上限値に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.0%、営業利益が40.1%だった。下期偏重の収益特性があることを考慮すれば順調な進捗率と言えるだろう。

さらに下期は緊急事態宣言解除・経済活動再開に伴って、オフラインプロモーション領域におけるコロナ禍の影響が和らぐことも予想される。通期ベースでも収益改善基調だろう。

■株価は下値固め完了

22年4月4日に移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でグロース市場適合を確認し、21年11月26日開催の取締役会においてグロース市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。

株価は上値が重くモミ合い展開だが一方では下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。1月5日の終値は723円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円72銭で算出)は約1.9倍、時価総額は約51億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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