【どう見るこの相場】バリュー株ローテーションは倉庫株、放送株に一時的に緊急避難して一巡目を形成

どう見るこの相場

 ロケット打ち上げの雲行きが、何だか怪しくなってきた。新年相場は、いきなり大発会で日経平均株価が、510円高と急反発して昨年11月25日以来の高値水準に躍り出るロケット・スタートとなり、大方の今年の高値予想の3万2000円を松の内にもクリアするような勢いであった。ところが、6日には844円安と急反落し、下げ幅は昨年6月21日以来の大きさとなり、3連休前の7日も、一時は325円と急反発したのに引けてみれば9円安と値動きが荒く不完全燃焼気味である。ロケットの角度が、なお上向きか、それとも下に向いたのか判断がつき兼ねる。

 続く米国市場でも、雇用市場の引き締まりから長期金利が一時、1.80%と2年ぶりの高水準となったことで続落した。同市場では、「サンタクロース・ラリー」が続いて年明け4日にダウ工業株30種平均(NYダウ)が史上最高値を更新したものの、5日には392ドル安と急落し、東京市場の3連休最終日の前日10日も、長期金利が高値水準でもみ合いとなってナスダック総合株価指数は小反発したものの、NYダウは162ドル安と4日続落した。

 このままではサンタクロースの背中を直ぐ2頭の熊(ベア)が追い越すことになるとも懸念もされる。1頭の熊は、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策正常化で、もう1頭は新変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大である。とくにFRBは、7日の米国市場でも今年の政策金利引き上げを4回実施し、資産圧縮も急ぐと観測されており、今週12日に発表予定の12月の消費者物価指数次第では、インフレ抑制策に拍車が掛かる可能性もある。米国市場が、ブル(強気)相場からベア(弱気)相場に一変するか分岐点となりそうだ。

 このなかで投資家心理的にダメージが大きいのは、長期金利の上昇とともに高PER(割高)のグロース株が売られ、なかでも半導体株の突然の失速である。半導体株は、長期金利が上昇する逆風下でも高成長が続くとしてフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は、昨年末に4039ポイントの史上最高値まで買い進まれたのに上値が重くなり、前日10日は0.29%高と反発したが、水準自体は3805ポイントにとどまった。東京市場でも、半導体関連株は今年2022年相場の本命株の有力候補に位置付けられてきた。

 半導体は、「産業のコメ」どころか経済安全保障上の「戦略物資」に格上げされ、このサプライチェーン(供給網)を保全するために国内に半導体工場の新増設を補助する支援法案を成立させ、補正予算、新年度予算でも積極策を盛り込んだ。株式市場では、「国策に売りなし」と声高にセールストークされた。

 東京市場は、米国市場のミラー相場といわれており、このところその通りの展開が強まっているが、足元の米国市場を闊歩するのがベアかブルかはなお不透明である。こうした相場環境下では、ポートフォリオの工夫が不可欠となる。仮に投資セオリー取りに低金利環境下ではグロース株、金利上昇環境下ではバリュー株の相場展開が続くとするなら、よりバリュー株への一時的な緊急避難を強め、ウエートをアップさせることも一考余地がある。

 バリュー株は昨年以来、FRBの金融政策や長期金利の動向に従ってその時々にグロース株と交互物色されてきた。バリュー株自体も、銘柄ローテーションが続き、昨年9月に上場来高値を更新した海運株を筆頭に非鉄株、商社株、鉄鋼株、銀行・保険株などと買われ水準を訂正してきた。このローテーションが、二巡目を迎えるか三巡目に差し掛かるのかはともかく、今週の当特集では、新たなバリュー株に注目することとした。サプライチェーンの末端で景気循環的にも相場サイクル的にも最終局面で動意付く特性を業界自体が自認している倉庫株と、「ウイズ・コロナ」にも「アフター・コロナ」にも関連して活躍場面が見込まれる放送株である。いずれも業績は揃って上方修正と好調であり、にもかかわらず株価は低PER・PBR水準に据え置かれていることで共通しており、バリュー株ローテーションの一巡目を形成しつつ、先行グループのバリュー株への追随高を期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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