【アナリスト水田雅展の銘柄分析】コラボスは底打ち確認して下値切り上げ、中期成長期待でIPO時の高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 コラボス<3908>(東マ)はクラウド型コールセンター・ソリューションのNO.1企業である。株価は底打ちを確認して下値を切り上げる動きだ。16年3月期増収増益基調であり、クラウド化の流れを背景として中期成長期待も高い。15年3月IPO時の高値を目指す展開だろう。

■クラウド型コールセンター・ソリューションのNO.1企業

 01年10月ITXの子会社として設立、10年7月親会社がITXからオリンパスビジネスクリエイツに異動、11年6月株式公開に向けてMBOを実施、15年3月東証マザーズに新規上場した。

 VOIP技術(IPネットワーク上で音声を送受信する通信技術の総称)を利用したクラウド型コールセンター・ソリューションのパイオニアで、シェアNO.1企業である。企業が保有するお客様相談室や製品問い合わせセンターなどのコールセンター向けに、IP電話交換機システムや顧客情報管理(CRM)システムをワンストップクラウドサービスで提供している。

 従来の自社内に設備を持って運用するオンプレミス型コールセンターの場合は、システム・機器の導入に関する高額な設備投資やシステム運用費用が必要だったが、クラウド型コールセンターでは少ない初期費用と月額料金で運用でき、導入に要する期間短縮や短納期での移転・席数増減にも対応できるというメリットがある。このためコールセンターシステムの自社内オンプレミス型からクラウドサービス利用へとシフトする企業が増加している。

 そして当社のワンストップクラウド型サービスの経済性と高機能性の両立が評価されて顧客数は増加基調だ。200席超の大規模コールセンターから5席前後の小規模コールセンターまで、大手テレマーケティング会社を含めて規模を問わず豊富な導入実績(約300社4000席の稼働実績)を持ち、クラウド型コールセンターサービス(音声系プラットフォーム)の市場シェア1位である。

■月額利用料金課金のストック型ビジネスモデル

 サービスラインナップはクラウド型で提供される電話交換機システムおよび顧客情報管理(CRM)システムで構成され、顧客情報自動検索や自動発信・自動登録などの機能で連携している。コールセンターの規模、インバウンド(受信)やアウトバウンド(発信)などの顧客ニーズに合わせて、最適な組み合わせのサービスを提案し、ワンストップでサービスを提供できることが強みだ。

 主力サービスは02年5月サービス開始した「@nyplace(エニプレイス)」である。米AVAYA社製のIP電話交換機システムをクラウドで提供するインバウンド向けサービスだ。12年2月サービス開始した「COLLABOS PHONE」は、小規模コールセンター向けに当社オリジナルのソフトフォン型電話交換機能をクラウドで提供している。低価格・短納期で、統計管理に必要なレポート機能や録音機能なども実装している。

 07年4月サービス開始した「COLLABOS CRM」は、コールセンターに特化した機能構成でインバウンド業務に適した顧客情報管理システム(アプリケーション)である。また10年11月サービス開始した「COLLABOS CRM Outbound Edition」は、発信リスト作成や自動架電・クリック架電機能などを備えて、アウトバウンド業務に適した顧客情報管理システム(アプリケーション)である。いずれもクラウドでサービスを提供する。

 収益は月額利用料金課金型であり、契約数の増加で収益が積み上がるストック型のビジネスモデルである。そして3年以上の長期利用顧客が全体の約5割を占めている。なお利用コールセンター席数・利用チャネル数(同時回線接続数)・利用ID数、オプション機能追加などによって月額利用料が変動する。

■16年3月期も増収増益基調

 なお15年3月期の電話交換機システム「@nyplace」コールセンター席数は14年3月期比728席増加の4703席、ソフトフォン型「COLLABOS PHONE」チャネル数は同166チャネル増加の591チャネル、インバウンド業務の顧客情報管理システム「COLLABOS CRM」利用ID数は同149ID増加の2342ID、アウトバウンド業務の顧客情報管理システム「COLLABOS CRM Outbound Edition」利用ID数は同188ID増加の539IDだった。

 各サービスとも利用企業数が増加基調で席数、チャネル数、ID数とも過去最高だった。業種別売上構成比はサービス54%、製造14%、流通10%、情報・通信16%、金融5%などとなっている。

 15年3月期の売上総利益率は同1.0ポイント上昇して40.4%、営業利益率は同3.1ポイント上昇して13.8%だった。ストック型ビジネスモデルで利益率も上昇傾向だ。ROEは同4.3ポイント低下して15.6%、自己資本比率は同11.8ポイント上昇して74.9%となった。

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.0%増の16億30百万円、営業利益が同6.9%増の2億20百万円、経常利益が同22.4%増の2億15百万円、純利益が同28.0%増の1億37百万円としている。配当予想は未定としている。各サービスとも前期と同程度の席数・チャネル数・利用ID数の増加を見込んでいる。増収増益基調に変化はないだろう。

■中期成長に向けて顧客基盤拡大や新サービス創出を推進

 中期成長戦略としては、顧客基盤拡大に向けた販売力強化・販路拡大、新たな付加価値の提供に向けた新サービス・商品の創出加速、安定事業創出に向けた経営基盤強化を掲げている。M&A・アライアンス戦略や東南アジア地域を中心とする海外展開も推進する方針だ。

 アライアンス戦略による新サービス創出では、クラウド形式でのデータマイニング・データ解析サービスを専門とするアイズファクトリーと共同で、アウトバウンド市場をターゲットにした新サービスの開発を開始した。また既存パートナーとの協力体制強化と海外展開では、アウトソーシングビジネス大手のトランス・コスモス<9715>のフィリピン拠点に新規導入した。

 マーケティング手法の多様化やコスト低減のニーズも背景として、自社内オンプレミス型コールセンターから、低コストで拡張性や柔軟性も高いクラウド型コールセンターへのシフトが加速すると予想されている。サービス提案力やワンストップサービスの強み、さらに市場シェアNO.1の実績も武器として契約数の増加が期待され、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は底打ちして下値切り上げ

 株価の動きを見ると、直近IPO銘柄を見直す動きで5月19日の上場来安値4420円から反発して6月5日の戻り高値8170円まで急伸した。その後は利益確定売りが優勢になったが、5月安値圏まで反落することなく下値切り上げの動きを強めている。

 7月7日の終値6230円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS197円29銭で算出)は31~32倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1297円95銭で算出)は4.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。5月安値で底打ちを確認したようだ。16年3月期増収増益基調であり、クラウド化の流れを背景として中期成長期待も高い。下値を切り上げてIPO時の高値(15年3月8750円)を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る