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エイトレッドは煮詰まり感、22年3月期2桁増益・連続増配予想
- 2022/1/17 08:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エイトレッド<3969>(東1)はワークフローシステムの開発・販売を展開している。社内文書電子化のリーディングカンパニーである。22年3月期は導入企業数の増加やストック売上の拡大などで2桁増益・連続増配予想としている。DXの流れも背景にクラウドサービスが牽引して収益拡大基調だろう。株価は小幅レンジでモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。なお1月20日に22年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■ワークフローシステムの開発・販売
ソフトクリエイトホールディングス<3371>の連結子会社で、ワークフローシステム(ソフトウェア)の開発・販売を展開している。
ワークフローシステムとは、企業における稟議書、経費精算申請書、各種届け出書など、稟議・申請から承認・決裁に至る事務工程(ワークフロー)を電子化(システム化)するソフトウェア製品である。
多くの企業が紙(申請書類・帳票)を使用して稟議・申請から承認・決裁に至る事務を行っているが、ワークフローシステムを導入することによって、業務プロセスの効率化(作業工数削減や時間短縮)、ペーパーレス化によるコスト削減(用紙・印刷・郵送・保管に係るコストの削減)、内部統制の強化(意思決定プロセスや承認日時のデータ化・可視化)などのメリットが得られる。
主力製品は、大手・中堅企業向けパッケージ型のAgileWorks、小規模企業向けクラウド型のX-point Cloudである。21年4月にはX-point Cloudのメジャーバージョンアップ版をリリースした。なおクラウド型のX-point Cloudへの移行により、以前の主力製品であった小・中規模企業向けパッケージ型のX-pointは、22年3月新規ライセンス販売終了、25年3月通常サポート終了、27年3月延長サポート・追加ライセンス販売終了予定である。
21年3月期の製品別売上高は、パッケージソフトが20年3月期比13.7%増の13億23百万円(X-pointが3.2%減の4億30百万円、AgileWorksが24.1%増の8億93百万円)、クラウドサービスが30.9%増の6億円だった。パッケージ型のX-pointはクラウドサービスへの移行で減少だが、AgileWorksとX-point Cloudが導入企業数の増加で大幅伸長している。導入企業数は累計3500社以上に達している。
■社内文書電子化のリーディングカンパニー
社内文書(申請書・稟議書)電子化のリーディングカンパニーである。複数の市場調査レポートで、X-point Cloudがワークフロー市場における出荷金額・売上金額実績シェア1位を獲得している。
アイ・ティ・アールの「ITR Market View:RPA/OCR/BPM市場2021」では、AgileWorksの伸長も寄与してワークフロー市場における20年度ベンダー別売上金額シェア1位、X-point CloudがSaaS型ワークフロー市場ベンダー別売上金額で16年度から6年連続シェア1位を獲得した。
富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」においては、X-point CloudがSaaSワークフロー市場占有率推移(金額)で2015年度から6年連続シェア1位(2020年度実績シェア21.7%)を獲得した。
アイティクラウドの「ITreview Grid Award 2021 FALL」ワークフロー部門では、X-pointがLeader(9期連続)、X-point CloudがHigh Performer(6期連続)、AgileWorksがHigh Performer(5期連続)を受賞している。
デロイト トーマツ ミック経済研究所の「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2021年度版」では、X-point CloudがSaaS・ASP型ワークフロー市場シェア(出荷金額)で10年連続トップシェアとなった。この結果、X-point Cloudは複数の市場調査レポートにおいて、2020年度の出荷金額/売上金額の実績でSaaS型ワークフロー市場シェアNO.1を獲得したことになる。
■開発特化型企業
事業戦略の基本は、日本型業務プロセスに適した製品によって他社製品との差別化を図る、導入企業ごとの個別カスタマイズを行わずに開発コストを抑制する、開発に特化して販売パートナー企業(販売代理店)を活用するとしている。販売パートナーは大手SIerなどで構成され、全国に営業網を構築している。
■ワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」市場は拡大基調
同社の調査(21年12月公表、中小企業経営者185名を対象とした東京都の中小企業におけるDX実態調査)によると、57.3%の企業が「DXを推進できていない」と回答したが、このうちの44.4%が「今後DXを推進したい」と回答している。なお現在導入しているツールはオンライン会議・テレワークが42.7%、グループウェアが38.9%、チャットツールなどが31.9%だった。
電子文書を導入せずに、依然として紙・手書きベースで事務処理を行っている企業が多いが、今後は中堅・中小企業においても、業務効率化を実現するワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」の導入が加速し、市場は拡大基調が予想される。
こうした事業環境に対応し、AgileWorksとX-point Cloudを2本柱として、カバレッジ拡張や他社サービスとの連携を強化しながら売上拡大を推進する方針だ。
20年9月にはインフォマート<2492>と企業間取引文書と社内文書のペーパーレス化事業で協業開始した。21年6月には官民連携で東海地域における中小企業のデジタルワークシフト促進を目指す「デジタルワークシフトコンソーシアム浜松」に参画した。21年7月にはフィリップ証券とTOKYO PRO Marketへの上場を目指す新興企業に対する内部統制支援DXで業務提携した。21年10月には人材領域ビジネス大手マイナビグループのマイナビM&Aと業務提携した。
■22年3月期2桁増益予想、さらに上振れの可能性で収益拡大基調
22年3月期の業績(非連結、収益認識基準適用だが損益への影響なし)予想は、売上高が21年3月期比9.1%増の21億円、営業利益が12.4%増の8億80百万円、経常利益が11.3%増の8億80百万円、当期純利益が13.9%増の6億10百万円としている。配当予想は2円増配の22円(第2四半期末11円、期末11円)としている。増収・2桁増益・連続増配予想である。
製品別売上高の計画は、X-pointがクラウドサービスへの移行で26.8%減の3億15百万円だが、導入企業数の増加でAgileWorksが17.6%増の10億50百万円、X-point Cloudが22.3%増の7億35百万円と大幅伸長する見込みとしている。
X-pointは22年3月に新規ライセンス販売終了(25年3月に通常サポート終了、27年3月に延長サポート・追加ライセンス販売終了)予定のため、AgileWorksへのアップセルまたはX-point Cloudへの移行を促進する。21年4月のX-point Cloudのメジャーバージョンアップの効果も見込んでいる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比17.7%増の10億29百万円、営業利益が41.6%増の4億68百万円、経常利益が38.7%増の4億68百万円、四半期純利益が39.4%増の3億14百万円だった。導入企業数の増加やストック売上の拡大などで大幅増収増益だった。ストック売上は第1四半期が3億73百万円(前年同期は2億95百万円)で、第2四半期が3億83百万円(同3億09百万円)と拡大基調である。
製品別売上高は、2本柱の大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksが20.0%増の4億76百万円、クラウドサービスのX-point Cloudが27.1%増の3億55百万円と大幅伸長した。パッケージ型のX-pointは0.1%減の1億97百万円だった。クラウドサービスへの移行に伴って27年3月に製品サポートを終了するため新規ライセンス販売が減少しているが、追加ライセンス増加などで横ばいだった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高4億89百万円で営業利益2億04百万円、第2四半期は売上高5億40百万円で営業利益2億64百万円だった。
通期予想は据え置いたが、第2四半期累計の進捗率は売上高が49.0%、営業利益が53.2%、経常利益が53.2%、純利益が51.6%と順調である。さらなるストック売上の拡大で通期予想は上振れの可能性が高く、DXの流れも背景にクラウドサービスが牽引して収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は9月末と3月末の年2回
株主優待制度は年2回、毎年9月末および3月末時点の株主を対象として、保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は煮詰まり感
22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場適合を確認し、取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議している。
株価は小幅レンジでモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。1月14日の終値は2263円、今期予想PER(会社予想のEPS81円64銭で算出)は約28倍、今期予想配当利回り(会社予想の22円で算出)は約1.0%、前期実績PBR(前期実績のBPS412円08銭で算出)は約5.5倍、時価総額は約169億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)